RACE【レース】

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「燃料マネージメントは順調だ。今がプッシュする時だ。先はもう長くないぞ」

 その指示が飛んだ14周目には2位ロズベルグ、そして15周目には首位ハミルトンがピットインし、ポジションを守った。

「このスティントもさっきと同じような長さだぞ」

 つまり、同じようにタイヤをいたわらなければならないということだ。裏を返せば、今のメルセデスAMGにはそれだけの余裕があり、タイヤさえ酷使しなければ悠々と1-2で快走することができる。

 逆に、レッドブルも決してタイヤに優しいわけではない。ダウンフォースの豊富さゆえにトラクション性能に優れているはずのRB10だが、ルノーのパワーユニットはドライバビリティの熟成が進んでおらず、立ち上がりのスロットルコントロールには慎重さを要する。同時に、この暑さの中ではパワーユニットをいたわる必要もある。

「セバスチャン、ロズベルグを追いかけるな。まだタイヤをダメにする必要はない」

「ダニエル、ERS(エネルギー回生システム)のためにはこのセッティングが良い。K(MGU-K)クリッピングを少なく、4Kリリースをキープしてくれ」

 一方でロズベルグはレース後半に向けてレッドブルとの差を広げていく。

「ニコ、今フェッテルとの差は2.5秒だ。レース後半にもっと(燃料を)セービングするためにこのギャップを広げたい。最低でも5秒にしてくれ」

 その指示を受けてロズベルグは自己ベスト更新の走りを続け、差はじわじわと広がっていく。それでもフェッテルも徐々にペースを上げ、差は4秒までにしか広がらない。

 FOMのテレメトリーデータによれば、この時点で燃料の消費量が最も少ないのはハミルトンで、ウイリアムズもまた燃費が非常に優れている。逆に最も多いのはレッドブル勢だ。

 

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「ルイス、エンジンをいたわるために少しターンダウンしよう。P2にする。これは2台ともだよ」

 ハミルトンには、チームメイトにも同じようにエンジンマップ変更の指示が出されていることが伝えられた。

「エンジンをいたわるために他に何かやれることはある?」

「良い仕事をしているよ。今やっていることを続けてくれ。他に何かあれば伝えるから。ニコはさっきのラップで0.5秒速かったが、これはフェッテルに対してギャップを広げるためにプッシュしているだけだよ」

 レッドブルのチームオーダー騒動に揺れた去年のセパンだが、メルセデスAMG勢も3位のポジションを巡って2人のドライバーとチーム首脳の間で激しいやりとりが交わされていた。こちらは結局最後までロズベルグが仕掛けることなくポジションを守ったままフィニッシュしたが、今シーズンの開幕を前にチーム内では改めてチームオーダーについての議論を重ねたことをチームも認めている。

 それだけに、チームの側もハミルトンに対して細やかに配慮して情報を伝えていることが窺える。

 上位争いは首位ハミルトンが独走し、その約10秒後方でロズベルグ対フェッテルの2位争い、そしてリカルド対アロンソの4位争いが繰り広げられ、そこにフォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグも加わっている。彼は第1スティントを16周目まで引っ張り、上位勢では唯一の2回ストップ作戦を採ることで4強チームに挑もうとしている。

 

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 2回目のピットストップもやはり、アロンソをきっかけに始まった。

 27周目にアロンソがピットインすると、翌周にはリカルドがカバーに入る。ハードタイヤを履いたアロンソに対し、リカルドも同じくハードタイヤを履いて、アロンソの前でコースに戻った。

「すぐに降るというわけではないが、サーキットの近くで雨が降っているのがレーダー上で確認できる」

 ロズベルグにそんなメッセージが伝えられたのは、その頃だった。もしここで雨が降ってくれば、2回目のピットストップのタイミングに合わせてウエットタイヤに換えた者が大きなアドバンテージを手にすることになる。

「ルイス、サーキットの近くに雨雲ができてきている。レースの終わりまでに少しだけ降るかもしれないが、何かあれば追って伝えるよ」

 レース前には下がっていた雨の確率が、また増えつつあることは確かだった。

 しかし31周目にフェッテルがピットインすると、翌周にはロズベルグもカバーするためにピットインを余儀なくされる。

「ルイス、この周にピットインだ。プッシュ、プッシュ!」

 他車がピットインすればそれに合わせて入ればリスクはない。この日のメルセデスAMG勢には、その余裕があった。フルにプッシュするのではなく、後ろだけを見てライバルの動きに合わせて淡々とレースをこなしていけば良いのだ。33周目、ハミルトンは悠々と2度目のピットストップを終えて首位でコースに戻った。

「ダニエル、燃料は問題ない。ビープ音をヒットしてからリフトしろ」

 レッドブルはドライバーのイヤープラグにビープ音を鳴らし、スロットルコントロールの目安にしている。この時点では上位勢の中では最も燃料消費量が多かったリカルドだが、それでも燃料マネージメントはさほど必要としないようだ。

 そんな矢先にサーキットに雨雲がやって来たが、決して本格的な雨をもたらすものではなく、局地的に雨粒を降らせる程度でしかない。これならばレース展開に影響を及ぼすこともない。

「ターン9でバイザーに少しだけ雨粒が当たっているよ」

「ルイス、レーダー上の雨はすごく弱い。今のところは心配するほどじゃないよ」

 フェッテルはこの雨粒を前のロズベルグのマシンからの水漏れだと勘違いしたほどだ。

「ニコがオイルか水を失っているみたいだよ。この数ラップ、ずっとそうだ」

「セバスチャン、ターン9〜10で雨粒が落ちているんだ。もしかしたらそのせいじゃないか?」

 さらに重ねて、コーナーからの立ち上がりでリアタイヤをいたわるための指示がフェッテルには飛ぶ。

「ターン1、2、9では2速を使ってくれ」

 34周目にはヒュルケンベルグが2度目のピットストップを行なったが、エイドリアン・スーティルのザウバーが突然電力を失って最終コーナー立ち上がりのコース上にストップ。僚友エステバン・グティエレスも翌周ピットでエンジンが止まった。(3/3に続く)

 

(text by 米家 峰起 / photo by Wri2)

 

 

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