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REPORT【報道】
【2016年新車解説】ルノーR.S.16「2016年は準備期間。本番仕様もE23の改良型か?」

【2016年新車解説】ルノーR.S.16「2016年は準備期間。本番仕様もE23の改良型か?」

TECHNICAL FILE

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 2月3日、ルノーはパリで発表会を行ない、2016年にフルワークスチームとしてF1復帰を果たす体制発表と新車R.S.16の概要発表を行なった。

 

 カルロス・ゴーン社長が登壇し、F1参戦の意義を「マーケティングとモータースポーツの統合」とし、「レース技術をルノーの全製品に生かす」と強いメッセージ性を明らかにした。この背景には、パワーユニットサプライヤーとして参戦してもPR効果が薄くマーケティング価値が乏しいという同社が抱え続けてきた悩みがあった。

 

 ルノーはこれまでロータスとして活動してきたエンストンの組織をベースに、マネージングディレクターにルノースポールやケータハムを率いてきたシリル・アビテブール、そしてレーシングディレクターにARTのフレデリック・バスールを据え、さらにチーフテクニカルオフィサーには2000年代にルノーとして王座を獲得した際の技術責任者ボブ・ベルを起用して組織の強化を図ってきた。

 

 しかしゴーン社長は、参戦初年度から多くを期待してはいない。2016年の目標を次のように述べている。

 

「厳しい戦いになることは承知の上だ。参加するためだけにここにいるのではなく、高いレベルで戦い、行く行くは勝ちたい。まずは毎戦ポイントを獲得すること、それが我々の目標だ。しかし2016年にそれが可能だとは思っていない。それができれば奇跡だろう。しかしこのチームがマシンとパワーユニットを進化させ、出来るだけ早く上位に上がってくると信じている」

 

 ワークス活動を長い目で見て、参戦初年度は以降の大きな飛躍のための準備期間と捉えるのは、ルノーが過去に何度も採ってきた手法のひとつだ。

 

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 この発表会でお披露目されたマシンR.S.16はあくまで暫定型で、開幕までには大きく姿を変えるとされている。あくまでショーカーに過ぎず、2月22日からのバルセロナ合同テストには本物のR.S.16が登場すると言われているが、ルノー製パワーユニットへの変更が正式決定した時期を考えれば、イチから新車を設計・製造できたとは思えず、メルセデスAMG製PU106Bを搭載していた昨年型E23をベースにルノー製パワーユニットR.E.16を組み込む改修を施したマシンで“準備期間”に過ぎない今季を戦うという戦略を彼らが採ったとしても不思議ではない。

 

 発表会場に展示されたR.S.16を昨年型E23と見比べると、モノコックや前後ウイング、サスペンション、ポッドフィンやバージボードなど主要コンポーネントは同じように見えるが、異なる点がいくつかある。

 

 まずノーズ下面にはショートノーズの特徴であるバルジが確認できる。昨年ロータスはショートノーズ導入を計画しながら予算不足からくるクラッシュテスト不通過などの影響で結局最後までこれを実戦投入できなかった。しかし最終戦アブダビGPにはこのショートノーズが持ち込まれてデータ収集が行なわれていた(写真・上)。

 

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 R.S.16に装着されたノーズはこれともやや形状が異なっているが、R.S.16がE23の延長線上にあることは間違いないだろう。

 

 フロア後端のリアタイヤ前方部分も、金属製の箇所にやや手が加えられ、整流フィンがモディファイされている(E23は前後に長いスタイルだった)。リアカウル後端の絞り込みも、リアサスペンションのアッパーアームとツライチになり空力的に配慮されているのが分かる。

 

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 リアウイング本体はE23のままだが、下に伸びるセンターピラーは湾曲していたのが直線的になり、カウルの峰にあるシャークフィンとの微妙な空間はそのモディファイによって生じたものだ。これは空力的な理由というよりも、パワーユニットの排気管や補器類の取り回しが異なるためにピラー下端のマウント位置を変更せざるを得なかったためではないかと推測される。

 

 1月20日にはすでに全クラッシュテストを通過しているというR.S.16だが、こうした要素を見る限りでは、この発表会に展示されたのが確かにカラーリング披露のためのショーカーであったとしても、2月22日から始まるバルセロナ合同テストで走行を開始する本物のR.S.16もかなり前年型E23をベースにしたものとなっている可能性が高いと推測できる。下手に冒険的なマシンを作るのではなく、堅実なマシンで2017年に向けてしっかりと準備を進めようというのは、ルノーの方針に合致するのではないだろうか。

 

 マネージングディレクターのアビテブールはこう語っている。

 

「2016年に関しては現実的であるべきだ。まだまだ追い付かなければならない分野が残されていることに疑いの余地はない。新規定下でのパワーユニット開発には出遅れてしまったし、エンストンも少し立て直しが必要だ。今年はエンストンとビリ・シャチヨンの両面において相互関係を再構築し、活性化させる1年になる。今年を諦めているわけではないが、2017年に成功を収めるべく全てを整えることを目標としているんだ」

 

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(text by 米家 峰起 / photo by Renault, 米家 峰起)

 

 

 

 

 

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