REPORT【報道】

20141021-01

 

 フォースインディアの実質的なマシン設計責任者である羽下晃夫プロジェクトリーダーは、基本的にファクトリーで設計作業に専念しておりグランプリの現場に来ることはほとんどない。今季は開幕前のテストとファクトリーの目と鼻の先であるイギリスGPでのみその姿を見かけたが、先日の日本GPでは自身の母国とあって鈴鹿に姿を見せており、久々に話を聞くことができた。メルセデスAMGのパワーユニットを巡る非常に興味深い話が聞けたので、ご紹介しよう。

 

ーー他チームのピット練習中に各マシンをじっくりご覧になっていましたが、設計をしている人だからこそ見るだけで分かることもあるんですか?

「そうですね、おおよその狙いは分かりますし、それがきっかけで何かを思いつくこともあります。ウチの場合は他チームのアイディアを見てそれで触発されて作ることが多いんです。ウチが同じように作ってマシンに付けても上手く機能させられなかったものが、他のチームはどうして上手く使えているのかなどもチェックしているうちに気付いたり。空力はマシン全体で考えなければなりませんから、ある部分だけを真似してもダメなんです。当然、マシンの他の部分がチームによって違いますから、同じアイディアでも上手く使えたり使えなかったりするわけです」

 

ーーメルセデスAMGのパワーユニットはターボのタービンとコンプレッサーを前後別々にレイアウトするという独自の手法を使っていますが、それは車体設計上の要求によるものだと言えますか?

「メルセデスAMG独自のターボレイアウトというのは、パワー面でも冷却面でもメリットはあると思いますが、ワークスチームが何のためにパワーユニットをそうしたかったのかは、我々カスタマーユーザーには教えてくれません。

 メルセデスAMGはICE(内燃機関=エンジン本体)やターボチャージャー、ERSなどパワーユニット全体をユニットごとカスタマーチームに供給しています。ワークスチームが積んでいる各コンポーネントをワークスチームと全く同じようにレイアウトしたものがドンと我々に与えられるわけです。配管なども全く変更できません。

 ですから我々としては、パワーユニットの狙いを理解した上で車体を設計しなければならないんですが、今年は情報の少ない中での設計ですからどうしてもそこが攻めきれなかったわけです。ですが来年はそこをある程度分かった上でどうクルマを作るかということが考えられますから、ある意味ではカスタマーチームの方が大きく伸びる余地はあるのかもしれませんね」

 

20141021-03

 

ーー来年はルノーやフェラーリのパワーユニットも改善されてメルセデスAMGのアドバンテージはさらに小さくなると考えて良いのでしょうか?

「確かにアドバンテージは小さくなるとは思います。とはいえ基本的な設計思想の問題ですから、あと2〜3年はメルセデスAMGがトップであり続けると思いますよ。ところで、ホンダさんはどうなんですか?」

 

ーーパワーユニットの最終テスト仕様で全コンポーネントを接続してベンチテストを開始したということですが、パフォーマンス的にはマクラーレン側がかなり懸念を示しているようです。

「マクラーレンは今季搭載しているメルセデスAMGのデータを流用できないとはいえ、運用している中である程度の性能ターゲットは分かるわけです。それに対してホンダのパワーユニットが大きく劣っているからこそ焦りがあるのかもしれませんね。実はマクラーレンは2009年に開発・運用していたKERSの技術が優れていて、メルセデスAMGのパワーユニットのERSもこれを応用したものなんです。ホンダもその技術を応用してはいると思うんですけどね……」

 

ーーホンダは年間4基という規定の中で、信頼性確保のための重量増と、性能面のトレードオフで苦労しているようです。最終的には性能面を犠牲にしてでも年間4基で走り切れる信頼性を優先する方針だそうですから、性能はあまり期待できないかもしれません。

「そうなんですか。個人的には、先に信頼性を確保して性能を上げていくよりも、先にパフォーマンスありきでデザインして信頼性を上げていく方が良いとは思いますけどね……」

 

20141021-04

 

ーーそういえば最近のF1マシンはかなりホイールベースが長いですが、これはどうしてなんですか? 一般的にはホイールベースが短い方が回頭性が高く、F1マシン向きだと思うのですが。

「確かにホイールベースが短い方が回頭性が高まりますが、ホイールベースを長くすればスタビリティが高められます。ヒールベースが長い分だけフロアの面積が大きく、フロアで生じる負圧(グラウンドエフェクト)が大きくなりますからね。パワーユニットなどのパッケージングの点で(空間に余裕が生まれるので)メリットもある。車体が長ければその分だけ重量も増してしまううんですが、これはカネで解決できます(高価な素材を使うなどで軽量化できる)。

 ドライバーに速く走るために最も必要なものは何かと聞くと、回頭性よりもスタビリティだと言うんです。スタビリティさえあってマシンが安定していれば、彼らは腕でなんとかしてしまう。ロングホイールベースで回頭性が低く曲がりにくいというデメリットは、基本的にメカニカルグリップにしか頼れない市販車とは全く違って、F1ではそれほど大きな意味をなさないんです。やはりF1ドライバーというのはすごいんですよ」

 

(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, Wri2)

 

 

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