REPORT【報道】

20140926-01

 

 ホンダのF1プロジェクト総責任者を務める新井康久氏に、2015年のF1参戦に向けてホンダのパワーユニット開発がどのくらい進んでいるのか、その最新状況を聞いた。新井氏によると、9月に入っていよいよバージョン3のテストエンジンが完成し、ターボやERSなど全てのコンポーネントをパッケージングしてのベンチテストが始まったばかりだという。

 

ーー現在の開発状況というのはどうなんでしょうか?

「つい最近、まさにパワーユニット全体の全コンポーネントをフルパッケージしてみてベンチ上で回し始めたところです。それは当初から秋口にと決めていましたから、スケジュール通り進んでいるわけです。ただし、まだ様子を見ながら回して、問題を洗い出しているところです。それこそボルトは大丈夫かとかモーターはきちんと回っているかとか振動はどうだとか、そういう段階です。

 これまでエンジン本体やハイブリッドシステムなど各ユニットは別々にテストしてきましたが、それをひとつにつなぐときっといろんな問題が出て来るはずなんです。問題が出てこないはずがないと思っています。それに対してここはこうしようと手直しをしていくわけです。今はまだその手前の段階ですし、ここから一通りテストをしていきます」

 

ーー4月にお話を伺った時にはバージョン2のテスト用エンジンをベンチで回しているということでしたが、今回のものがバージョン3ということですか?

「去年の秋に最初のエンジンに火が入って、その後に作ったのが(4月の時点でテストしていた)バージョン2で、今回し始めたのが3つめのエンジンですね」

 

ーー全コンポーネントをパッケージした状態ということですが、我々が目にしているようなマシンに搭載された状態に近いものを想像して良いんですか?

「う〜ん、まぁ近いですね。それなりの格好はしていますよ。ただ、まだまだ『こんなんじゃレースできないだろ』っていうような状態です。たとえばMGU-KとMGU-Hをエンジンにマウントしますよね。そこの取り付け点が『こんな華奢なのでは壊れちゃうんじゃないか?』とか『こんな分厚いんじゃダメなんじゃない?』とか、いろいろ作って計算しているような状態なんです。最終的には『こんなに格好いいのができました!』と言ってお見せしたいですけどね(苦笑)」

 

20140926-02

 

ーー排気管も?

「それは、今見せたら面白くないじゃないですか?(苦笑) フタを開けてみてからのお楽しみですよ。排気管はチームによって考え方は様々ですよね、上に上げてみたり下に回してみたり、小さくしてみたり。メリットとデメリットは色々ありますし、我々も技術者ですから他チームの排気管を見て『ふぅ〜ん、そういうことか!』『なるほどね!』とかいろいろ思いますけど、それぞれ何らかの意図があってやっていますよね。出力を大きく出したいのか、それを多少犠牲にしても空力パッケージを小さくするのかとか。いろんなことを考えた上で決めているんだなということは分かります。見ているとエンジン屋が負けたのかな、空力屋が負けたんだな、とかいろいろ思いますよ(笑)」

 

ーーマクラーレン側からはそのあたり要求はかなりきている?

「どういうサイズにするか、どのくらいの目標にするかというやりとりは常にしています。ただ、今のマシンでさえ突き詰めて作ってあるわけですから、そんなに簡単に答えが出たりはしないですよね」

 

ーー以前、モノを作ってしまうとそこでアイディアが制限されてしまうから、ギリギリまであらゆる方法をシミュレーションするとおっしゃっていましたが、その段階からモノでテストをする段階に一歩進んだと言って良いのでしょうか?

「昔のようにとっかえひっかえはしていませんけど、もうシミュレーションではなく作ったものでテストをしています。考えに考えた上で作った3ステップ目のエンジンでテストしているわけです。ただし、今のエンジンに付けているものを開発してそのまま実戦で使うというわけではなく、それでデータを取りながら最終的にどうするかを決めるというプロセスです」

 

 

20140926-03

ーーメルセデスAMGのようなターボのコンプレッサーとタービンを前後別々にレイアウトするという方式も検討しているということでしたが?

「あれは性能にはあまり関係ないと思います。パワーユニットそのものの性能ではなくて、パッケージの問題、もっといえば熱の問題だと思いますね。どちらのレイアウトであろうと、出力的にはあまり変わりませんから。それよりもリアカウルをどのように絞り込みたいかといったようなことから選ばれたんだと思います。

 我々もパートナー(マクラーレン)と一緒に開発していますから、その要求によってはもちろんメルセデスAMG方式のレイアウトも考慮に入れています。結局はガワ(ボディフォルム)が勝負ですから。まずはガワを決めて、それで充分に冷えるかどうかを考えると。そこでパワーユニットの(各コンポーネントの)レイアウトが問題になってくるんです」

 

ーーメルセデスAMG方式のレイアウトにすればコンプレッサーがタービンの影響を受けにくくなりインタークーラーが小さくなるというようなことは?

「いやいや、ならないですよ。たとえば吸気を2バールに圧縮すれば、温度はめちゃくちゃ上がります。その空気がタービンを通過する時間というのはあっという間ですから、その間に壁から熱をもらうなんていうわけがないんです」

 

ーーどういうレイアウトにするかはまだ決まっていない?

「そろそろ決める時期に来ていますね。そうしないと最終的なレース仕様をどれで行くというのが決められませんからね」

 

ーーターボユニットなどサプライヤーのメーカーは決まりましたか?

「パートナーも決めなければいけない時期に来ていますが、まだいろいろやっていますね。性能や大きさなど、やはり一通りテストしなければ分かりませんから。(全体でのテストが始まって)それがやれるようになったという感じですね。おそらく最後までバタバタするとは思いますけどね」

 

ーー燃料については?

「いろんなものを試しているところです。チームとしてはモービルがスポンサーとしていますが、一番良いものを一緒に作ってくれるパートナーと組みたいということです」

 

ーー無線規制が強化される可能性がありますが、パワーユニットのトラブルなどの不安は大きくなる?

「それはないでしょう。燃料が足りなくなるとかいうことはあるかもしれませんが、それもドライバーが表示される燃料ターゲット数値を見ながら走れば良いだけのことですし。そんなことで壊してしまうようなヘボなドライバーだったら、F1なんて走っていられないですよ(笑)、はっきり言ってクビですよ。シフトミスしてレブリミットを超えちゃいました、なんていうドライバーはいないでしょう。ですから無線が規制されても我々が開発の内容を変えることはないでしょうね」

 

(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, Wri2)

 

 

 

Related Articles

Comment

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. コメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

Recent Post【最新の記事】

Calendar【日付で記事検索】

2022年1月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun
« Dec    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31