REPORT【報道】

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 ヘレスの朝は遅い。

 午前8時を過ぎてようやく、東の地平線がオレンジ色に染まり始める。

 広大なヨーロッパ大陸の最西端に位置するこの南国風情豊かな街には、最も遅れて太陽が顔を見せる。昼間は真っ青な空に高く煌々と輝く太陽も、夜の闇には手を出すことができない。

 まだ薄暗い早朝のピットレーンは、朝露に濡れて芯まで冷え切っていた。まばらな人影が吐く息は、白く、重みを持って、今にも凍り付きそうにそこに漂い続ける。

「こんなの全然たいしたことないよ。オーストリアはマイナス15度だったんだからね!」

 可夢偉のトレーナーとして合宿に帯同していたヨーゼフ・レーベラーは、そう言って両腕でガッツポーズを作りながら笑った。曰く、昨日より20度も気温が高いんだからね、と。

「ゲレンデでは女の子がマジで可愛く見えるよね。日本だけかと思ってたけど、意外と外国でもそうやった(笑)」

 雪の中で行なったトレーニング合宿をそんな風におもしろおかしく可夢偉が語ったのは、実は1週間後のバルセロナになってからだった。

 ヘレスでの可夢偉は、そんな冗談を投げかけるのも憚られるほど表情は暗く、口数も少なかった。

 2月6日、翌日からの公式合同テスト解禁を前に、ザウバーはヘレスで新車C31の発表会を行なった。メインストレートにマシンを置いてのフォトセッション、記者会見に続いて、午後にはエンジンに火を入れてコースへと飛び出す。フィルミング(広報用撮影)用として認められている走行枠を使っての、実質的なシェイクダウン作業だ。デモ用に用意されたタイヤを履いているとは言え、新車のシステム作動は確かめることができる。

 その走行は上手くいった。しかし翌日からのテストはトラブル続きだった。

 C31のサスペンションは、硬く固められたまま、メカニックたちの手が付けられることはなかった。

 まずはクルマがチームの想定通りの性能を発揮しているか否かの確認のため、空力データの収集を行ないたい。その正確性を期すために、なるべくマシンの姿勢変化を抑えたかったからだ。

 当然、ドライバーとしては心地の良いものではない。

「もう、言われるがままロボットみたいに走ってました」

 初日はまだそうやってチームに対する皮肉を言う余裕もあった。しかし最終日を終えた可夢偉からは口数も減り、目に見えて疲れた表情をしていた。

 それは76周という決して多くない周回数のせいではなく、テストプログラムが思うように進められない不満によるところが大きかったのではないだろうか。

「パフォーマンス追究よりもデータ確認を優先したけど、実際にはそんなに悪いところにはいないと思う」

 そうは言っても、ヘレスの4日間が不完全燃焼の日々であったことは疑いようのない事実だった。

 

 快晴のバルセロナで、カムイ・コバヤシの名前がリーダーボードのトップに表示された。

 2月24日午後0時16分、雲ひとつない真っ青な空の下で、漆黒のアスファルトは34度を超えている。

 

 

ヘレス合同テスト(2月7日〜10日)

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 ザウバーはテスト解禁前日の2月6日に新車C31を発表。フィルミング走行で実質的なシェイクダウンを行なった。同日に発表会を行なったロータスとのシェアによる走行だったが、特に大きな問題はなく、粛々とマシンのシステムチェックと基本的な確認作動作業を行なった。

 2月7日からの公式テストでは、可夢偉は初日と最終日に走行を担当。初日は排気管周りのカウリングパーツが僅か5周で失われ、その後は本来の性能が出ない代替パーツを装着しての走行となったため、有益なテストはできず。ただマイレージを稼ぐだけの走行になってしまった。

 発表時には「そんなに醜いとは思わない」と語っていた今季のマシンだが、実際に走ってみるとカラーリングの鈍重さに気付いた様子。「一緒に走っていてシャイになる」と可夢偉らしい表現をしてみせた。

 チームは失われたパーツを急きょファクトリーで製造して持ち込み、その後の2日間でセルジオ・ペレスを走らせた。しかし空力データ収集を優先するため、サスペンションは硬く設定したままセッティング作業を進めることなく淡々とした走行を続けた。

 最終日の可夢偉はまずそのパーツを試し、当初の予定通りアップデート仕様の排気管とカウルに交換して比較データを収集。午後2時41分にはハイドロ漏れでコース上ストップする場面もあったが、この日のトップタイムを記録している。

 しかし全体としてみれば、トラブルに翻弄され思うようにプログラムが進められない初テストとなってしまった。

 

2月6日(新車C31発表会・フィルミング走行)

ーーテスト前日にフィルミング走行で新車に乗ってみた印象は?

「タイヤが2011年のコンストラクションにGP2みたいなコンパウンドを履かせたタイヤなので、クルマのフィーリングがどうこう言えるレベルではなかったですね。でもまぁ、基本的にはシステムがきちんと動いてクルマとしても問題なかったということで、滑り出しとしては良かったかなと思いますね。テスト初日からすぐに細かい本格的なテストができますからね」

ーー今年のタイヤはザウバーにとっては?

「全体的にコンパウンドが柔らかくなるのは、僕らにとって良いことだと思います。元々レースペースが良いから、その上でピット回数を減らすことができれば、アドバンテージになりますからね」

ーーブロウンディフューザー禁止は追い風になる?

「去年はブロウンディフューザーが最大の問題で、その開発を止めてしまったせいでシーズン中盤から苦しみましたけど、今年はどこを開発すべきかしっかりと分析していけば、シーズンを通してパフォーマンスが向上できると思います。間違いなく今年の方がチャンスがあるでしょう。去年からほとんど使っていなかったから、なくなっても僕らとしてはクルマのフィーリングも変わりませんしね」

ーーノーズの醜さが言われているけど?

「醜いと思いますか? カッコ良くはないけど、それほどダサくもないでしょう。マクラーレンだけは全く違いますけどね。確かに最初はちょっと醜いと思ったけど、2009年に前後ウイングが変わった時も最初はそうだったし、最初はクールに思えなくても、数カ月もすれば慣れるでしょ? レギュレーションが変わって、その中で最大限にダウンフォースを得るためにこうしなきゃならないのなら、仕方ないんじゃないですか。見た目よりも速さの方が大切ですからね」

ーー走ってて気にはならない?

「走っててもノーズは見えないです。先端もステップもね。フォーミュラ・ルノーの時代から、フォーミュラカーに乗ってて見えたことは1回もないですから」

ーー今シーズンの目標としては?

「できるだけたくさんポイントを獲りたいですね」

 

2月7日(ヘレス合同テスト1日目)

ーーリリースには“生産的な1日だった”ということになっているけど?

「みたいですね、チームがそう言うならそういうことにしときましょう(笑)。いや、予定してたことはできてないです。全然違う方向に行ってます。パーツがくっついてないから(苦笑)」

ーーどういうこと?

「朝一番に潰れて、しばらくガレージから出てこられなかったでしょ? スペアパーツがなかったんです。後ろの方の空力とクーリングの両方を兼ねているパーツ(排気管周辺のカウル)。飛んでいったんです。で、行方不明。熱の当たる部分なんでカーボン製じゃなきゃいけなかったんですけど、(別素材の)暫定パーツみたいなかたちできてたんで、多分、走っているうちに溶けてプラプラしちゃったんですね。それで、飛んでいったんじゃないかと。結構大きいパーツなんですけどね。これでいいや、みたいな感じで付けてきたら、エラいことになってるっていう。結構大事なパーツやから。

 全然違うパーツで走ったんですけど、(他の空力パーツのダウンフォース設定と)コンフィギュレーションが合ってないから、クソほどひどいっていう状態。だから、ずっと本来のダウンフォース量が全然出てない状態で走ってたんです。元々、明後日か最終日にはそれに対するアップデートの違うパッケージが届く予定やったんで、(代替パーツが)何にもない状態で。

 まぁ、今日は走ってシステムチェックをすることが大事やったから、そんなに大きな影響はなかったんですけど」

ーーということは、クルマの本来のフィーリングは確認できていない?

「え〜、はい、できてません。まだなんのこっちゃわかってません(苦笑)。今日は完全に残飯整理ですよね(笑)。別にタイムを見なくて良いようなことしかしてないっていう。あとは言われるがままロボットみたいに走ってただけですね。セッティングも変えてないですからね(笑)。今日は収穫はないですね。

 そのパーツが5周目で壊れちゃったんで、(本当なら)どのくらいグリップするか分からない状態で走ってたんで。今まで乗った中で、第一印象としては一番分からないですね(笑)。でもまぁ、いろいろやることはありそうなんで、それは問題じゃないですよ。

 あとは、僕らカラーリングがダサいなっていうことくらいですかね(笑)。他のクルマと一緒に走ってたら、ものごっついダサくないですか? 尋常じゃないですよね? ちょっとシャイになりますよ、僕(笑)。『走っててゴメンネ、こんなダサくて』って言いたくなります(笑)。他のクルマが横に来たら、『お、カッコええやん』って思うけど、自分のクルマは写真で見てももっとダサいし。ヤバいですよね、あのダサさは。変えてほしいわ、色付けてほしいな。まぁ、速ければいいんですけどね、速ければねぇ……」

ーー今年のタイヤの印象は?

「悪くないですよ。去年よりグリップする……グリップするというか、熱が入りやすくて、スイッチが入りやすくて使いやすいと思います。ハードなんか去年はほとんどのチームが使えてなかったけど、今年は使えそうな気がするし。そのへんはタイヤの使い方が楽になるんじゃないですかね? 1回冷やしたらダメやけど、ウォーマーで温めてそのまま走れば意外と大丈夫ですね」

ーー使ったのは?

「ハードとミディアムですね。他のチームはソフトも使ってましたよね? 『なんや、このタイヤ!』って思って。僕は硬いタイヤばかっりで、なんかイジメみたいでしたよ(笑)。ダウンフォースが(本来の想定よりも)足りてないからパフォーマンス確認もできないし、(チームが)『とりあえずこれで走っとけ!』みたいな感じで。(摩耗量確認用の)穴の(摩耗しきって)ないタイヤで走ってましたからね。最後にコース上に止まった時に初めてタイヤを見て、『穴ないやんけ!』って思って(笑)。聞いたら『全部こんなふうになってるよ』って言われて、新しいタイヤはもうなかったみたいで」

ーー最後にコース上に止まったのは?

「よくわかんないです。最初は『ギアを変えるな!』って言われて、『帰ってこい、帰ってこい!』って言われたんですけど、そのまます〜っと止まっちゃった感じです」

 

2月10日(ヘレス合同テスト4日目)

ーー今日も初日に続いてトラブルがありましたね。

「そうですね、ハイドロとクラッチかな。まぁしょうがないですけど。内容的にはそれなりに走れたし、まだ今はパフォーマンスを追究するよりも、どこでどれだけダウンフォースが出ているかみたいな(収集したデータの)エアロの数字を見たりだとかそういう作業をやってるんで、実際にはそんなに悪いところにはいないかなと思うんですけど」

ーーセッティング作業はしていない?

「エアロ(のデータ)を見たいから、車高が変わらないようにわざと脚回りは硬くしたりしていて、セッティングは全然してないんです。僕としてはできればセッティングをしたいけどね。チームとしても『やろう』とは言ってたけど、やることがいっぱいあったからセッティングまでは行けなくて。まぁ1回目のテストやからこんなもんかな」

ーー初日になくなったパーツのその後は?

「今日の朝一番は、潰れたパーツの作り直したもので走って、数字を調べて。で、それから新しいのに換えて走って」

ーー新車の感覚は確かめられた?

「ちょっとホイールベースが長くなってるはずやから、そのぶんなんかリムジンに乗ってるような感じかな(笑)。曲がりにくいっていうか、ダル〜い感じがする。ミニからハイエースに乗り換えた時のステアリングの応答性が悪い感じかな」

ーー路面のコンディションはあまり良くなかった?

「午後は路面が良くなくて、全然タイムが出ないんです。マーブルが積もってどんどんラインが狭くなっていくし、たぶん温度の問題もあるんやと思う。だからみんなベストタイムは午前中に出てるでしょ? 狙ってやってるわけじゃなくて、自然とそうなるんです。多分、午前と午後でコンマ5くらいは違ってくるから」

ーータイヤの感触は?

「3種類使ったけどソフトは1回使っただけで、それも出ていってすぐに『前が効かへん』って言うたら(データを見て)『ダウンフォースが抜けてる』って言われて帰ってきましたから、それで終わっちゃった。自己ベストはハードタイヤかな。ミディアムは途中までコンマ3くらい速かったんですけど、最終コーナーでミスしたんで」

 

 

バルセロナ合同テスト(2月21日〜24日)

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 ヘレスでのデータを元に分析した、パフォーマンスランとロングランのそれぞれを最適化したセットアップを施しての走行。可夢偉は3日目と4日目の走行を担当した。

 マシンにかかる負荷の大きなバルセロナに来て、マシン構造の強度問題が判明し、これは現場で対応。リアのアンチロールバーが破損する症状も起きたが、こちらは単純な理由だとはいえギアボックス内に収納されているため交換に時間を要する面倒な事態に。

 ペレスは2日間でロングランによるデータ収集、タイヤ全4種のフル比較など行ない「ジョブリストの最重要項目は完了できた」と語るが、最後には排気管にもトラブルが発生している。

 可夢偉は3日目にセットアップ作業を行ない、タイヤのウォームアップ改善方法を模索。新型リアウイングの比較作業も行なった。

 最終日は予選シミュレーションとレースシミュレーションを敢行。午前中のアタックで今季のバルセロナ最速となるトップタイムを記録した。しかし予選優先のセットアップであったためタイヤの保ちは悪く、次に向けての課題が残った。排気管トラブルでレースシミュレーションは完走できなかったが、最後にコース復帰を果たして今季刷新した燃料ポンプの性能を確認すべくフューエルランアウトのテストも行なっている。

 

2月23日(バルセロナ合同テスト3日目)

ーーバルセロナで走ってみて、感触は?

「午前中はタイヤがいまいち温まらなくて苦しかったんですけど、1時間半くらいしたら温度が上がってきて、それでタイヤが温まりやすくなってからはパッとタイムが出ましたね、午後は路面がボロボロで誰もタイムが出ないっていう不思議な現象に陥ってますね(苦笑)」

ーーヘレスではセットアップ作業ができなかったけど?

「今回もセットアップはまだやらないで、パーツ(の比較とデータ収集)ばっかりやってました。今日は基本的にパフォーマンス(が目的)じゃないんで。前半2日間であまり走れてなかったみたいなんで、その残ってる宿題をやらされてる感じですね(苦笑)」

ーーリアウイングを2種類試した?

「僕も何が変わったのかはよく分かってないんですけど(笑)、結局は変えた方で最後まで走ったみたいですね。まぁ、どっちの方が良いのか、これからデータを見ないといけないみたいですけどね」

ーータイヤの比較テストはまだしていない?

「タイヤの比較は全然してませんね。それよりはデータ取りで、とりあえず要らないタイヤばっかり使って走って、っていう感じで。ロングランもやりたかったんですけど、赤旗があったりでロングもそんなにできなくて。まぁ、全体的にはこんなもんかなってと思いますけど、明日の方がもうちょっと(パフォーマンスをチェックする)チャンスがあるんかなっていう感じですね」

ーーベストタイムは狙って出したわけではなく?

「普通。何もしてなくて、ただソフトタイヤを履いたら出たタイムですね。他と比べてどうとかっていうのは、あんまり意識してないですね」

ーーフロントが温まらないということだけど?

「直線が長いんで、その間にフロントが冷えてしまって、ブレーキ踏んだ時に抜ける感じ。まぁ、バルセロナではたまにあるんですよね、寒い時には。午前中はそれをどうしようかっていう状態だったんですけど、セッティングというよりはウォームアップのさせ方とかで、(レース本番で同様の症状が出た場合の)いざというとき用にテストしてました」

ーーヘレスでは低速コーナーでの挙動が不安定だったけど?

「いや、解消はしてなくて、低速コーナーに関してはまだまだやらなきゃいけない感じですね。基本的にダランとしてるですよね」

ーー誰かが「コバヤシはあちこちで滑りまくってた」と言ってたよ。

「ホント? でもコースにずっと留まってますよ(笑)。いやそんな滑ってないし普通ですよ。誰が言ってんねん(笑)」

ーーテストとしてはそんなに悪くはない?

「レッドブルも意外とハマってるみたいやし、フェラーリはもっとハマってるし(笑)、なんとか上手くまとめておけば、もしかしたら……良い(ことが起きる)かもしれないし」

ーーヘレスの後はオーストリアでトレーニング?

「なんで知ってるんですか?(笑)」

ーー自分でTwitterでつぶやいていたでしょ?(笑)

「よく見てますねぇ!」

ーー焼けてるよね。

「そう、雪焼け。ゴーグル焼けするのが恥ずかしいから、着けずにやりましたけどね」

ーーどんなトレーニング?

「それは秘密です(笑)。一生懸命、雪の中をもがいてましたよ。めちゃめちゃ寒かったですよ。1回Tシャツでクロスカントリーをやったんですけど、めちゃくちゃ寒くて、『寒い寒い寒い!』って言いながらそのままホテルの前にある露天風呂に飛び込みましたよ(笑)。下がスノーウェアだから、なかなか風呂から出られなかったっていう、意外と(笑)」

ーーゲレンデでパーティしてた?

「いや、1日終わったから1杯飲んで帰ろうかと思ってBARを見たらパーティみたいになってて。それでちょっと参加しちゃったっていうね(笑)」

ーー「ゲレンデでは女の子が可愛く見える」って言ってた?

「いや、ゲレンデで(可愛く)見えない?(笑) 行ったことない? 日本でも、ゲレンデってマジで可愛く見えるから!(力説) 何割増しかって言われたら何割かはわからへんけど、ホンマに可愛く見えるからね(笑)。で、滑り終わって着替えて温泉から出て来たとことか見るとちょっとゲンナリするっていうね(笑)。それが日本だけなんかなと思ってたけど、意外と外国でもそうやったっていうサプライズを言いたかったんやけど(笑)」

ーートレーニングがテストに生かされている?

「それは全くないです(笑)。ただ、やるぞっていう意気込みだけで、気分的な問題です(笑)」

ーー日本GPのチケットがもうすぐ発売になりますが、どんなことが期待できますかね?

「ちょっとまだ早いかな(苦笑)。あと8カ月? 日本GPに向けてはいろいろやろうと思ってるし、話もしてるんですけど。去年はあんまりレースが良くなかったんで、まずは今年はしっかりと結果を残せるようなクルマを作りたいなと思いますけど、まぁ、そんなことを言う前に、まずは今が大事かな(笑)。そんな期待を持たせるようなことを言っておきながら、開幕戦からボロボロやったら困るんで(苦笑)、とにかく今を頑張って鈴鹿まで良い状態を引っ張っていきたいですね」

ーー3年目で、去年とは気持ちは違う?

「まぁそんなことないけど、なんだかんだで今年が一番厳しいでしょうね。だって、4年目もここにいられるかどうかわからないでしょ? 3年目の今年ちゃんとやって、他に行(けるような環境をつくってお)かないとダメやから。逆に、動くなら来年がチャンスやしね」

ーー逆に言えば、来年もここにいるようじゃ厳しいなっていうこと?

「そんなこと言ってないっす(笑)。それは米家くんが言ったんでしょ、それは米家くんダメですよ(笑)。そんなことピーター(・ザウバー代表)に言ったら『もう入ってくんな! 出ていけ!』って言われますよ(笑)」

 

2月24日(バルセロナ合同テスト4日目)

ーー今日は疲れるくらい走れた?

「まぁまぁですね。そんなにめちゃめちゃツラいってほどでもないけど」

ーー今季初の予選シミュレーションの手応えは?

「まぁ、そんなに悪くはないと思いますけどね。でも何も余裕を見る(マージンを残しておく)必要なんてないんで、開発としてはまだまだやることはたくさんありますよ。こういう結果はあんまり見ずに、自分たちがやることだけを考えてるんですけど」

ーーセットアップ作業はまだ?

「多少はやったんですけど、まだまだかな。でも、何をすればタイムに繋がるかっていう(進むべき)方向性は分かってるから、それだけこれからしっかり開発していけば、タイムは出せると思います。あとは安定して外すことがないようにね。データをしっかり見直しながらもっと良い方向に持っていかないと」

ーーこのくらいのタイムは出せるというのは把握できている?

「それはわかんない。それはこれからの開発次第やから」

ーー4日間で最速のタイムを記録したけど、これは事前の想定通りのタイム?

「あんま考えてなかった。他のチームのタイムがどうとかそんなこと考えるんじゃなくて、単純に自分たちにやれることをやっていっただけっていう感じ。そんな変な希望を持ったってしょうがないでしょ?」

ーー今日は全種類のタイヤを試した?

「スーパーソフトは去年と同じタイヤやけど、相変わらず難しいですね。まぁ、ソフトとミディアムは良い感じだと思いますね。この温度でもウォームアップには大きな問題もなかったし、(去年苦しんだ)その問題はなくなってると思いますね」

ーー午後のレースシミュレーションの感触は?

「う〜ん、まぁそんなに悪くはなかったと思うけど、全体的に使ってたタイヤもボロボロやったし、タイム的にはあんなもんかなと思いますね。周りがどのくらいのペースで走ってたのかは確認してないけどね」

ーー去年のザウバーの特徴だったタイヤへの優しさっているのは?

「わかんないですね、レースしてないですもん。周りがどこにいるかわかんないし、どんなタイヤを付けてるか、どんなプログラムをやってるかわかんないし、今年はタイヤも変わってるし、現時点では判断しようがないんです。みんなが予想外のタイヤのタレ方をしてたら、それは今年の普通っていうことですからね。周りと比べてみないと、自分たちが優れているかどうかはわからないんです」

ーー今回のテストはある程度やりたいことはできた?

「やりたいことはできたし、マイレージも稼げたし、(新パーツのデータ)確認もできたし、方向性も見えたし。あとはこれをどう生かすかが課題ですね。その見えた方向性にちゃんと進めるかどうか、しっかりと今後の開発に繋げられるかっていうところやと思いますね。ホンマにこれからしっかり開発できるかどうかっていうことが重要なんで。ほんと、その開発だけですね」

ーー次の最後のテストでやっておきたいことは?

「そうやな〜、フランチェスコ(・ネンチ。担当レースエンジニア)がアタックの最終コーナーで『ステアリングの設定を変えろ』とか言ってこないようにするっていうことかな(笑)。ブ〜ンって高速コーナーを走ってる時に言われて『えぇ〜っ!?』みたいな(笑)。帰ってきてすぐに(フランチェスコに)言いましたもん、『あんなとこで言うなや!』って。『あれがなかったらコンマ2は上がってたわ』ってね(笑)。ガレージで変えておけばいいヤツやったのに、それを伝え忘れてて、気付いたんがアタックの最終コーナーやったっていうね。バカでしょう?(笑) それもまた、変えるのが大変なパラメーターやし。項目をセレクトして、ババババって押して数値を変えなきゃいけなくて、70いくつっていう数値やから、『10』を7回押して、『1』を何回か押して、みたいな。いや〜、あれがなかったらあと5秒くらい速かったかな(笑)」

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バルセロナ合同テスト(3月1日〜4日)

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 開幕前最後のテストとなるバルセロナでは、可夢偉は2日目と4日目の担当。ザウバーもついにメカニカル面のセットアップに取り組み始め、ペレスが初日から作業を進める。新型空力パーツも持ち込まれている。

 快晴続きのスペインでは珍しく、2日目の朝は濃霧に包まれて開始が30分遅れる場面もあったが、終了時刻も30分延長されたため影響なし。可夢偉は前回とは逆にタイヤの保ちを優先させるセットアップを模索。燃料の重たい状態で様々なセットアップを試した。

 最終日はレースシミュレーションをトライしたものの、エンジントラブルで完走できず。一発のタイムとタイヤの保ちを両立させるセットアップの妥協点もまだ見つけ切れなかった。しかしデータは収集できたため、開幕までにこれを分析して最良の答を見つけることに自信を見せる。

「それが上手くできれば、悪くないポジションにいると思う」

 可夢偉とザウバーは、まずまずの形で開幕前のテストを終えた。

 

 

3月2日(バルセロナ合同テスト2日目)

ーーここまでのテスト状況を振り返っていかがですか?

「全体的に良い流れにはなってますね。ここまでテストを振り返ってみても、チーム全体としてそこそこ満足のいく結果になっていると思います。

 ただ、まだレースと予選の(妥協点を見つけるという)まとめができていないので、その間を残り2日間でどうやって見つけるかっていうのが次の課題ですね。レースを通して戦える方向性っていうのをもう少し見つけられると思うんで」

ーークルマのフィーリングに不満は?

「クルマのフィーリングがもうちょっとどうとかいうってのは、あんまりないかな。今はタイヤを上手く使う方向ばっかり考えるから。この前はタイヤが保たなかったから。速い(タイムは出る)けど、タイヤが保たないっていう。今回はクルマが重い状態でタイヤをいかに保たせるかっていうことを考えて走ってますね。今日はずっと重いのしかしてないから。重くないので走ったのは2回くらいしかなかったし、それでも普通より全然重かったと思うし」

ーー今年のタイヤはデグラデーションが大きくなっている?

「そうですね、今年はタイヤが柔らかくなってるんで、デグラデーションも早くなっていて、(決勝で)それに対応できてなおかつ予選できちんと戦えるセッティングっていうのがあまりにも違いすぎていて、まだ上手く見つけられてないんです。

 今年はタイヤの保ち方が去年以上にレースを左右することになるでしょうね。そういう意味では、レースのセッティングがすごく重要なんじゃないかなと見てるんですけどね。まぁ、タイヤが早く減るっていうことはピットストップ自体も増えるんで、そこを上手くいかせればいいなとは思うんですけど」

ーー今年のタイヤは、最初にプッシュするとタレが早くなる?

「クルマ自体が良ければ、最初からプッシュしても良いんです。悪いクルマだとダメだっていうだけで(笑)。

 最初にプッシュしすぎるとダメっていうのは、多分そこでリアを殺しちゃうんですよね。それはクルマの素質によるものやから、それがみんなに当てはまるとかいう問題ではないんです。クルマによっては(プッシュするのを)1周待って、前と後ろのタイヤの温まりかたとかグリップのさせかたを変えて、バランスを保つっていうのが、最初にプッシュしちゃダメっていうことの実際のところですね。それはタイヤの特性じゃなくて、クルマの特性なんです」

ーーザウバーのクルマは、その前後の温まりのバランスはどう?

「う〜ん、酷いね(笑)。フロントが不安定で1周目はブレーキ踏まれへんもん(苦笑)。ここはストレートが長いから、そのコース特性のせいやと思うけどね」

ーーリアのスタビリティは?

「悪くないですよ。タイヤのグリップが良い時はね。でも(グリップが)落ちてからは悪い。それと、クルマが重い時は良いけど、軽い時はヘニャヘニャ。前回はそれがもうちょっと良かったから一発は出たんやけど、重くなるとバランスが崩れるっていう状態で。これを(重い時に良いセットアップと)どう間を取ろうかなっていうところですね」

ーーここまでのテストの進み具合は予定通り?

「まぁ、テストとしては予定通り順調にいってますね。これで上下(ロング優先と一発優先)はいったから、あとはどこに真ん中をとるか。コースによって、ここは予選寄りとか、ここは決勝寄りとか。上下はもう分かったから、あとは真ん中をとるだけですからね。内容としては前回は予選で軽い時にどういう風にタイムを出しに行けるかっていうのを見ながらやったんですけど、今回は重い状態でどうやってタイヤを保たせるかっていうのをやったんで、その上下の幅が見えたのがいちばん大きいかな」

ーー信頼性の不安は?

「エキゾーストが良く壊れるから、ちょっと困りますけどね。ハイドロもね。でもまぁ、これだけ走ったらしょうがないよね。どっかはかならず潰れるから。昨日は丸々なにもトラブルがなかったから、そのツケが今日来たっていうくらいに考えてます」

ーーテストとはいえ、タイムを見る限りトップとの差は縮まっている?

「トップとのタイム差は確実に縮まっていると思いますね。そのぶんダンゴ状態になってるんで、シーズンとしてはすごく面白くなるでしょうね」

ーー開幕前の今の時点では、手応えは?

「去年と同じくらいかなとは思うんですけど、まぁみんな三味線弾いてると思うんで、あまり期待しすぎないようにしています(苦笑)。まだ課題もあるんで、まずは自分たちのやれることをきちんとやらないと」

 

 

3月4日(バルセロナ合同テスト4日目)

ーー今日も不完全燃焼?

「そうですね、エンジンが壊れて最後まで走れなかったんですけど(苦笑)、でも全体的には内容としては悪くなかったと思います。タイヤカスがウイングに挟まっただけでダウンフォースがすごく削れたりもして安定してデータがとれなかったり、そういうところで手こずったりはしましたけど」

ーー今日は予選と決勝のセッティングの妥協点を見つける作業ですか?

「今日はセッティング作業をして、一発のタイムが出る方向は分かりながらもいろいろやってみたんですけど、レースでタイヤを保たせるセッティングっていうのが見つけ切れなかったんで、これからもう1回データを見直して見ないといけないですね。

 メルボルンでは温度も上がると思うんですけど、どんな状況にも対応できると思うんで、上手く準備してまとめられれば充分にポテンシャルはあると思うんで、この2週間でしっかりと準備したいですね」

ーーセットアップがしやすいクルマではない?

「難しいですね。今まで(乗った中)で一番難しいです。セッティングを変えるためにいちいちギアボックスを外したりしなきゃいけないところとかあって、一度決めたらなかなか変えられなかったり、(セットアップ変更作業が)スムーズに行かないんです。ポテンシャルはありながらも、扱うのはまだ難しいかなという感じですね。

 問題点っていうのはクリアには分かっているんですけど、それには開発に時間が必要だったりもして、すぐには解決できないですね」

ーーポジションの手応えは?

「いつも通り真ん中よりちょっと後ろぐらいで(苦笑)。あんまり調子に乗らないようにして(ダメだった時の)被害を最小限にして、あとは全力で行ければいいかなと思います(笑)。まぁ準備は上手くできてるんで、あとは信頼性さえなんとかできれば問題ないかなと思いますね。全体的に良い感じに仕上がってると思うし。

 面白いのは、どのチームもギャップが縮まってると思うし、あのレッドブルでさえ結構苦労しているんじゃないかっていう印象もあるんで、そう言う意味ではチャンスがあればっていうところにいると思うし、しっかり戦って行きたいですね」

ーーノーミスで行くことが重要になりますね。

「僕は多分、大丈夫です。あとはチームですね(苦笑)。新しいメカニックが多くて面白いハプニングも結構あるんで、そういうところも踏まえながら。あと2週間でしっかり準備するしかないですね」

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(text by Mineoki YONEYA / photo by Wri2, Sauber)

 

2012年3月13日発行

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