REPORT【報道】

 

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「テストで実力は見えない」は真っ赤なウソ?

 2012年の開幕間を前に3回の公式合同テストが行なわれ、最も気になるのは当然、どのチームのニューマシンが最も速いのかということだ。

「テストはしょせんテストでしかない」

 ドライバーやチーム関係者はそう口にし、テストでのタイム比較には意味がないという。実際、燃料搭載量にはフルタンクからガス欠寸前で150kgもの開きがあり、これはラップタイムにして約4.5秒にもなる。タイヤもピレリからは4スペックが供給されており、各スペック間には0.4〜0.5秒差があり、つまりスーパーソフトとハードでは1発アタックのピークパフォーマンスに1.2〜1.5秒の差が存在することになる。コンディションの違いもある。

 確かに純粋なパフォーマンス比較を正確に行なうことは難しいが、それでもラップタイムを見れば各マシンのパフォーマンス傾向が見えてくるのは事実だ。

 特に注目すべきは、実際の決勝状況を想定して行なわれるレースシミュレーション。バルセロナは実際にグランプリが開催されている場所であり、各チームはスペインGPと同様に66周のレース距離連続走行を、実際のピットストップとタイヤ交換まで含めて、決勝スタート時刻と同じ午後に行なう。午前のセッションでは予選のシミュレーションも行ない、そこで使用したタイヤを使ってスタートするという本格的なものだ。

 ここでどのようなデータを収集しレース本番に役立てようとしているかといえば、最大の要素はレース状況でのタイヤ傾向だ。つまり、どのようなセッティングとどのようなドライビングをすれば、どのようにタイヤがタレていくのか。逆に言えば、タイヤを保たせつつ最大限の速さを発揮するためにはどのようなマシンと走り方に仕上げれば良いのか。

 それをここまでのテストで得たデータを元にシミュレーションし、弾き出した“回答”を実際に試している。それがレースシミュレーションだ。

 つまり、このレースシミュレーションのラップタイム推移を見れば、各チームのマシンとセットアップの仕上がりが如実に見えてくることになるというわけだ。

 もちろん、実力を隠すために三味線を弾くこともある。DRSやKERSの使用・不使用によって、実際よりも速く見せることもできる。しかし、使えないデータを収集しても意味はないのだから、どのチームもかなり真剣に取り組んでいることもまた事実なのだ。

 

今季の各チームのテストプログラム

 年間の公式テストは19日間と決まっている。これまではそれをフルに使って開幕前に4回の合同テストが行なわれていたが、今年は5月のヨーロッパラウンド開幕前に合同テストを行なうため、開幕前はヘレス(2月7日〜10日)、バルセロナ(2月21日〜24日)、そしてバルセロナ(3月1日〜4日)の3回のみに削られた。

 今年の上位チームのテストプログラムの主流は、ヘレスで新車の動作確認とデータ収集を行ない、シミュレーションで弾き出したセットアップを次のバルセロナで微調整した上で早々にレースシミュレーションを開始するというパターンになった。開幕戦向けの新パーツの投入は最後のテストまで持ち越し、まずは基礎的なデータ収集をしっかりとやるというわけだ。

 ここで仕上がりの良さを見せたのはレッドブルとマクラーレン。順調にマシンを煮詰めて2日目にはレースシミュレーションを敢行してトラブルなく走破してしまった。それも、なかなかのハイペースだ。

 ヘレスでは細かなトラブルの頻発でプログラムに遅れの出たザウバーだったが、バルセロナの最終日にはなんとか帳尻を合わせてレースシミュレーションまでたどり着いた。

 昨年とマシンコンセプトがやや異なっていることもあり、ヘレスでのザウバーはサスペンションを堅めのまま維持して走り続け、空力や各種データ収集の正確性を優先してきた。セットアップ作業は二の次にしていたわけだ。そのため、まだセットアップは完全に似詰め切れたとは言えないところがザウバーの悩みだ。

 具体的に言えば、予選と決勝のパフォーマンスを両立させるためのセッティング妥協点を模索している段階だと言える。バルセロナの1週目では予選パフォーマンスを重視したセットアップを進め、最後のバルセロナでは決勝を重視したセットアップ。前者では1発のタイムは出るが、タイヤが長保ちしないという状態で、逆に後者では特にフロントタイヤのウォームアップに難を抱えて1周目からフルアタックはできなかった。その妥協点を探る作業を、最後まで続けた格好だ。

 他チームと全く異なる動きを見せたのが、フェラーリとメルセデスAMG。

 フェラーリは新車F2012で前後ともにサスペンションにプルロッド式を採用するというかなり大きな冒険に出たため、その仕上げとなるテストにもこれまでとは全く違った手法で臨んだ。ザウバーと同様にセッティングはまったく変更することなく、徹底的にデータ収集のための試験走行に徹した。そのためマシンの挙動は不安定なままで、ラップタイムも目立ったものは出ない。これをヘレスだけでなくバルセロナ初週でも続け、大いに周囲をヤキモキさせた。

 マシンがパラメータ変更にたいしてどのような反応を見せるかという、マシンへの理解を深めるためのデータ収集だというのが、チーム技術陣の説明だった。ただし実際には理由はそれだけではなく、昨年大いに問題になった風洞での実験数値と実走状態の差が正確に把握できていないという点に、まだ不安が残っていたようだ。

 どのチームも風洞実験値には誤差があり、ある係数をかけることで補正して実走状態での数値を予測するのだが、このいわゆる「コラレーション」が昨年のフェラーリのつまずきの最大の理由だった。今年の開幕前テストでもフェラーリは前後ウイングに蛍光色オイルペイントを付けて気流を見るフロービズを繰り返しており、このコラレーション問題が完全に解決しきれていないことをうかがわせる。

 ヘレスでは20%、バルセロナでは50%程度の進み具合というのがドライバーたちのインプレッションだったが、2回のテストで収集したデータによりシミュレーションしたセットアップを最後のバルセロナに持ち込み、2日目にはいよいよレースシミュレーションを敢行した。しかし同日の同時刻に走ったロータス(ロマン・グロージャン)と比べてもペースは思わしくはなく、さらに不安が募る結果となってしまった。

 テクニカルディレクターのパット・フライも、現状の苦しさは認めている。

「現時点では、表彰台争いは考えていないと言える。私はいつも少し悲観的な人間だからね。この段階では自分たちのパフォーマンスに落胆しているのは事実だ。まだまだやるべきことはたくさんある。メルボルンにも新たなテストパーツを持ち込まなければならない」

 しかし昨年のマクラーレンがそうであったように、開幕前テストで絶不調であったとしても、開幕戦にぶっつけ本番で投入したパーツが大当たりして全てが解決することもある。もちろん、そこには今のフェラーリが最も苦手としているであろう、シミュレーション技術の正確性が求められるのだが……。

 特殊なプロセスを採用しながらもフェラーリとは対照的に順調なのが、メルセデスAMGだった。彼らは初回テストに新車を投入せず、つまり2週間余分に新車開発に時間を割き、2週目のバルセロナで新車を登場させた。実際には2月17日にシェイクダウンを行なっているため10日ほどの差だが、合同テストに突入する前に単独テストを行なうなど、用意周到に準備を進めたため、新車のテストが1回減っても大きな影響はなかったようだ。実際、初回のテストからレースシミュレーションを行なっているほどだ。

 フロントウイングにF1ダクトのような仕組みを装備しているといい、実際にチームはマシンがピットインするごとにフロントウイングにカバーをかけて必死に隠している。ノーズ先端の穴から取り込んだ気流が、直進時はフロントウイングの裏側に排出されてフラップをストールさせ、空気抵抗を減らすという。また、コーナリング時には気流の向きによって自然に左右フラップ前方に気流が導かれ、ダウフォース発生量を増やすともいう。他チームはその効果について懐疑的な見方をしており、実際に導入するとしてもさほど難しい仕組みではないため、対応を急いではいないようだ。

 しかしメルセデスAMGはヘレスで旧型車に2012年タイヤを履かせて走行したことで、タイヤの違いを正確にデータ取りできたはずだという見方もある。特性の違いを正確に把握し分析できていれば、マシン開発だけでなくシーズン中のレース本番にも、その知識が生かされてくることが考えられるのだ。

 フェラーリが失速を喫しているだけに、今季のメルセデスAMGは侮れない、というのがパドック全体の共通認識となっている、と言っても過言ではない。

 中団は「上位7チームによる混戦になるだろう」(ロス・ブラウン)というほどのタイトな争いになるものと見られている。

 フロントサスペンションマウント周辺の強度不足でモノコック補修に迫られたロータスだが、ヘレスの初テストから好走を見せ、2週目のバルセロナでも好ペースを見せるなど、今季は浮上の予感が漂っている。ウイリアムズもマシンが昨年より安定感がありロングランのペース安定性も高いとドラバーが高く評価しており、侮れない。いずれにせよ、上位にワンミスがあればすぐにそのポジションを奪い取るような位置に複数のチームがつけていることは間違いないのだ。

 

レースシミュレーション分析、レッドブルVSマクラーレン

 では、実際にバルセロナで行なわれたレースシミュレーションの全ラップタイムを見ていこう。

 まず、2月21日〜24日の1週目テストで早々にシミュレーションを行なったのは、レッドブル、マクラーレン、ザウバー、そしてなんと新車を発表したばかりのメルセデスAMG。

 それぞれタイヤが異なり、コンディションにも差があり、なおかつ最終アップデート前のマシン状況ではあるため、ピーク性能の比較はあまり意味がないが、タイヤのデグラデーション(を抑えるセットアップの仕上がり)と平均的なペースは見ることができる。最後のアップデートによる伸びしろに差はあるにせよ、大まかな相対的位置関係も見えてくるというわけだ。

 テスト2日目の2月22日には、レッドブルとマクラーレンがほぼ同じタイミングでレースシミュレーションを行なった。絶好の比較対象だと言えるだろう。

 レッドブルのセバスチャン・フェッテルは、ソフト→ミディアム→ミディアム→ハード→ハード→ソフトと5階のピットストップを行なっているが、実際には最後のソフトは必要のない交換だったはずで、4ストップ戦略の想定だ。部分的にセーフティカーモードの走行やトラフィックによるペース低下があるものの、全体的なペースは非常に速い。

 想定44〜47周目に引っかかったトラフィックというのが、ルイス・ハミルトンのマクラーレンだった。ハミルトンの方は33〜36周目で、燃料搭載量とタイヤ交換シークエンスの違いはあるにせよ、ペースとしては1.5〜2秒近い差があった。実際に後方にフェッテルを従えて走ったハミルトンは「彼が僕の後ろに付いて走っていた時、彼のクルマのハンドリングはとても良かった。彼らはものすごくコンペティティブなようだし、おそらく僕らより少し速いのも事実だろうね」と証言している。

 レッドブルとマクラーレンのペースを比較すると、第1スティントの走り始めは0.3〜0.5の差があり、逆に4周目からは逆転している。そして第2スティント以降の平均ペースは、レッドブルが上回っている。タイヤが柔らかくデグラデーションが酷くなったと言われる今季の中では、ペースの低下も緩やかでスムーズな印象だ。とりわけ、1分24秒台連発という最終スティントのペースの速さは、実戦ではあまり発揮される機会はないかもしれないが、純粋なパフォーマンスの高さを物語っていると読むべきだろう。しかし当のフェッテルは慎重だった。

「去年に比べてダウンフォースが失われているのは事実だし、現時点ではそれを一気に取り戻すようなツールはないけど、僕らは正しい方向に向かっていると思う。最初のテストからマシンは期待通りの挙動を示してくれているしね」

 また、レッドブルはライブピットストップを含めたノンストップの完全レースシミュレーションだったのに対し(つまり三味線は弾いていない)、マクラーレンはスティントごとにガレージに戻して次のスティントに準備する方式。つまり、燃料搭載量を実際よりも多くしていた可能性は否定できない。

 

タイヤの扱いに苦しむザウバー

 テスト3日目の2月23日には、レッドブルとマクラーレンが前日とはドライバーを代えて、さらにはメルセデスAMGとザウバーもレースシミュレーションを行なっている。

 レッドブルはデータ上にトラブル警告が発見されたため早期終了してしまったが、前日に気になった第1スティント後半のペース低下は改善されており、タイヤに優しいジェンソン・バトンよりもハイペースを維持している。重い状態の時にタイヤを保たせるための何らかの方策、セットアップ方向性を見つけ出したのかもしれない。マクラーレンはミディアムやハードを中心とした走行で、本格的なレースシミュレーションというよりも、セッティング方向性を模索している段階のようだ。実際、前述の通りこの日もタイヤ交換の度にピットガレージへとマシンを戻している。

 メルセデスAMGのミハエル・シューマッハは、走り出しは2強チームに並ぶほど良いものの、スティント後半のペース低下は大きい。その傾向は第2スティント、第3スティントでも見られ、平均的なペースでもレッドブルに1秒以上の大きな差を付けられていることが分かる。対マクラーレンでも、0.3〜0.6秒ほどの差が見られる。ただし、これはまだ本格テスト3日目であり、セッティングの模索中であることが大いに影響しているはずだ。

 ザウバーの小林可夢偉のレースペースは、メルセデスAMGとさほど変わらないペースでスティントの序盤を走り始めているが、スティント後半のタイヤのタレが速い。ザウバーは予選パフォーマンスを優先したセットアップをまず進め、そこから決勝ロングランでタイヤを保たせる妥協点を探っていったが、このバルセロナ1週目の時点ではまだそれが見つけ切れず、デグラデーションの大きさに苦しんでいた。小林可夢偉も「速い(タイムは出る)けど、タイヤが保たないっていう状態でした」と証言していた。

 

デグラデーション改善のメルセデスAMG

 4日目はマクラーレンとメルセデスAMGがランチブレイク前の時間からレースシミュレーションと思われる行動を開始した。この冬の時期では、路面コンディションが最も良いのが正午過ぎで、グランプリ本番時のコンディションに最も近いと考えられるからだ。

 ここではバトンがかなりの好ペースを発揮し、ソフトタイヤで14周をすべて1分28秒台で走破している。しかし第2スティント以降のペースはむしろかなり遅く、これは本格的なレースシミュレーションではないと見るべきだろう。

 逆に、赤旗中断を挟みはしたが、ソフト→ハード→ハード→ハードの3回ストップで走り切ったメルセデスAMGのペースは、第2スティントは1分27秒〜29秒台、レース中盤は1分27秒〜28秒台で推移し、最終スティントは1分24秒台〜27秒台と、なかなかのものだ。グラフで見れば、ライバルよりもペースレベルが高いことが分かる。ただし、午後よりコンディションの良い午前に開始しているため、そのぶんは差し引いて考える必要はある。よって他のシミュレーションタイムとの単純比較はできないが、今季の彼らが去年のような大きなデグラデーションに苦しむことはないと断言しても良いだろう。

 

フェラーリの不振、白日の下に。レッドブルに1秒以上の差

 3月1日〜4日に行なわれた2週目のバルセロナ合同テストでは、上位チームが後半2日間に続々と開幕戦向けのアップデートを投入してきた。前週のバルセロナと前半2日間で仕上げたセットアップをベースに、性能をアップデートしたパッケージでのロングラン性能確認が、最後の後半2日間で行なわれることになった。

 テストプログラムが他と異なり、ここまで本格的なロングランを行なってこなかったフェラーリは、ここでついにレースシミュレーションを敢行した。また、モノコック不備のため前週のバルセロナから撤退せざるを得なかったロータスも、2日目からレースシミュレーションに突入した。

 ここでロータスはフェラーリよりも速いペースでレース距離を走破している。ドライブしたのが実質的な新人ロマン・グロージャンで、レース終盤のペース低下はドライバー要因によるものと言えなくもない点を差し引いても、ロータスの方がまだ上回っている。

 第1スティントでは0.3〜0.7秒ほど差が存在し、タイヤの保ちもロータスの方が優れている。しかし第3スティントからはフェラーリのペースが良く、レース全体のタイムを計算すれば、両者の差は僅か数秒でしかない。この時点ではフェラーリが重いタンクではなくレース中盤以降にパフォーマンスを最適化すべくセットアップの照準を絞っていたと見るべきだろう。

 ただし、週が異なるとはいえ、前週最終日のメルセデスAMGと比較すれば、最終スティントのペースは0.3〜0.5秒遅い。第1スティントのペースも、前週のレッドブルに1〜1.3秒の差を付けられている。これが現時点のフェラーリの実力だ。

 

注目のタイトな中団争い、ザウバーはそこから一歩抜け出ている?

 バルセロナ2週目の3日目には、フェラーリだけでなくフォースインディア、ザウバー、トロロッソ、ウイリアムズと、注目の中団チームがこぞってレースシミュレーションに乗り出した。3時過ぎになって天候が悪化し雨が振ってきたため、レースシミュレーションを完走できたチームは少なかったが(トロロッソの最終スティントはインターミディエイトによる走行)、ここで中団グループのおおよその勢力図も見ることができた。

 この4チームの中で、ずばぬけて高いパフォーマンスを見せたのは、ザウバーのセルジオ・ペレスだ。

 第1スティントはレッドブルやマクラーレンに匹敵する1分29秒台フラットから入り、ソフトタイヤで14周を走行。フォースインディアに1秒近い、トロロッソとウイリアムズには1秒以上の差を付けている。

 最後にもう一度ミディアムに履き替える4回ストップ作戦の予定だったというが、ペレスはミディアム中心ながら好ペースでデグラデーションも少なめの走行を見せている。ただし、がくんとペースが落ちて寿命が尽きるタイミングがやや早く、このあたりがザウバーのいう最適なセッティングが見つけ切れていないという悩みの部分なのだろう。

 もちろん、それぞれのチームが完全なレースシミュレーションを行なっているわけではないため、これがそのまま純粋な性能差だとは断言できないが、今季のザウバーが条件によってはかなり高いポテンシャルを秘めていることは間違いなさそうだ。

 グラフで見比べてみれば、中団チームがかなりの混戦状況になっていることが分かる。その中でやや抜け出ているのがロータスとザウバーで、逆にウイリアムズは一歩後れを取っている。

 なお、フェリペ・マッサがステアリングを握ったフェラーリは、第1スティントは前日のアロンソよりもややペースを持ち直し、走り始めのペースで0.3〜0.5秒程度の挽回は見せた。しかし第2スティント以降にミディアムタイヤを使ってもデグラデーションは大きく、ペース自体も振るわない。特にスティント後半のタイム低下割合が大きい点には注目すべきだ。

 今季はピークパフォーマンスとデグラデーションのバランスを取るセットアップの煮詰めが鍵となっているが、ドラスティックにマシンを変えたせいで昨年までのデータが流用しづらくなっているフェラーリは、まさにそこで大きな悩みを抱えているようだ。

 

1発アタックのピークパフォーマンス比較

 今年のテストの特徴のひとつが、ベストタイムの差が極めて小さいという点だ。だからこそ連日のようにトップタイムをマークするチームが入れ替わり、特に最後のバルセロナ合同テスト後半2日間では、8〜9台ものマシンが1秒以内にひしめく結果になった。それも、まともにタイムを出していないレッドブルやロータスが下位に沈んでいることを差し引けば、実際には全体の差はさらに小さいものになっているはずだ。

 今季の開幕前テストには、タイヤは4スペックともに使用が可能で、ベストタイムの多くはスーパーソフトを使用して、午前最後の最もコンディションの良い時間帯に、1周のみのタイムドラップによるアタックで出されたものだった。レッドブルとマクラーレンはこうしたプログラムを一切行なっておらず、彼らのピーク性能はまだ闇の中だ。もちろん彼ら自身はシミュレーションによってある程度の数値予測はできているだろうし、おそらく彼らの純粋な速さは、これらトップタイムを記録したチームを大きく凌駕するものになっているだろう、しかし、前述のレースシミュレーションを見ても分かる通り、ライバルたちとの間に昨年ほどの開きはないはずだ。

 

テスト分析総括、大激戦のシーズンに

 これらテストデータの分析から導き出されるのは、レッドブルの変わらない優位と、それ以下が昨年以上の混戦になっていることだ。

 仮にレッドブルがピークパフォーマンスでもライバルを凌駕し、予選でポールポジションを奪ってそこから決勝でも独走態勢を築けば、昨年同様の優勝パターンのレースが繰り広げられるはずだ。空力的に理想的な状態で走りたい彼らが目指しているのは、まさにそのかたちだろう。

 しかし逆に、前を押さえられ理想が崩れた時にどうなるか。2位以下との差は昨年とは比べものにならないほど縮まっている。レッドブルの常勝パターンは昨年以上に崩れやすくなることは間違いないだろう。

 マクラーレン、メルセデスAMGがレッドブルに迫るポジションに着けている。フェラーリは出だしで躓いているが、斬新なマシンが使いこなせるようになれば驚きの速さを見せる可能性もあると言われている。たとえ偶然でもセッティングがハマれば思わぬところでダークホース的存在になることも考えられる。

 その背後にはロータスやザウバーをはじめとしたセカンドグループが、上位進出を狙っている。上位勢にミスがあれば、すぐにでもそのポジションは奪い取られてしまうことになるだろう。フォースインディアやウイリアムズなど、侮れない存在が続く。技術体制強化によって浮上が予想されていたケータハムは、オーバーヒート対策に迫られて空力性能をロスしたこともあり、まだ本領発揮とはいっていないようだ。しかしシーズンが進むにつれて中団グループのライバルたちとの差を縮めてくるかもしれない。

 ある中団チームは「7チームがライバル」だと明言する。2強チームは簡単には手が届かない存在だとしても、それよりも下は大混戦。ワンチャンスで大きく浮上することもあれば、ワンミスで大きく脱落することもある。2012年は、そんな波瀾万丈のレースが繰り返されるエキサイティングなシーズンになるだろう。

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(text by Mineoki YONEYA  / photo by Wri2)

 

2012年3月10日発行

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