REPORT【報道】

20140411-03

 

 開幕戦オーストラリアGPではパワーユニットのトラブルでリタイアを余儀なくされたものの、その後は2連勝。バーレーンではチームメイトのニコ・ロズベルグと激しい優勝争いバトルを繰り広げるなど、今季のチャンピオン争い最右翼と目されているルイス・ハミルトンは、今自分が置かれた状況をどう見ているのだろうか。そして、大改革の年2014年のF1にどう感じているのだろうか。

 

 純粋な速さではF1界でも一二を争うと評されるハミルトンだが、珍しくリラックスした様子で、目の前のレースのことだけでなく、チームメイトとの関係、今季のF1の魅力、今のF1に要求される体力など、様々なことを語ってくれた。

 

 我々の目には容易に映る独走劇の中で、彼が何を感じているのかをぜひ知って頂きたい。

 

ーーメルセデスAMGはシーズン序盤戦を圧倒的にリードしていますが、今の心境は?

「心は平穏そのものだよ。僕は周りのいろんな雑音を断ち切って、目の前のことだけに集中している。

 今の勢力図なんて、レースごとにリセットされるからね。サーキットの特性やコンディションが違えば、勢力図は大きく変わりうる。マレーシアでの雨の予選であれだけ差が縮まったことを見れば、それは明らかだ。アップグレードを持ち込んだチームが大きく進歩することだってある。誰がアップグレードを投入して車体面やパワーユニット面で進歩を果たしたか、それはレース週末が始まってみるまで分からない。僕らだってこの差が縮まらないように努力し続けなければならないんだ。

 ひとつの風が永遠に吹き続けることはない。コーナーの先がどうなっているかなんて、誰にも分からない。だから目の前の1日1日を全力で駆け抜けていくしかないんだ」

 

ーー開幕戦でリタイアした時には、こうして挽回してこられると思っていた?

「オーストラリアでさえ僕はポジティブな気持ちで後にしたよ。なぜなら、僕はやれるだけのことはやったし、『あれをこうしていれば良かった、ああしておけば良かった』なんていう気持ちは一切なかったからね。リザルトに関わらず、週末全体を通してそうだったんだ。それが最も大切なことだ。さっきも言った通り、常に全力で目の前のコーナーを駆け抜けるしかないんだからね」

 

ーーレースの戦い方は去年までとはどのくらい違う?

「正直言って、全然変わってないよ。もちろん去年の僕らはトップランナーではなかったから、トラフィックの中から戦うのとそうでないのとではアプローチの仕方が違うけど、レースそのものは同じだよ。

 たとえばリフト&コーストだって別に今年になって始まってことではなく、2007年だって2008年だって、リフト&コーストをしていたレースはあった。確かに多少は増えてはいるけど、そのパーセンテージはみんなが思っているほど大きなものではないよ。

 もちろんクルマはダウンフォースが少なくなって運転の仕方が多少は変わったけど、それでもF1が速いクルマであることに違いはないしね」

 

ーー今年のピレリタイヤは?

「少し硬いからウォームアップにもこれまでよりも少し時間がかかるけど、挙動や反応は去年のタイヤと完全に同じだよ」

 

ーーオーバーテイクは難しくなった?

「今年はまだオーバーテイクをしていないから教えられないよ(笑)。バックマーカー以外はまだ1回もしていないんだ。バックマーカーの追い抜きは去年までと変わらないね」

 

20140411-02

 

ーー今年のレースは体力的に厳しくないと言われていますが、貴方にとってはどうですか?

「僕がデビューした2007年だって、2006年と比べれば体力的には楽になっていたと思う。でも2007年の頃は、レース後は僕はもう死にそうになっていたよ(苦笑)。そういう意味では、今のレースはかなり体力的には楽になった。でも(普通の人にとっては)ハードだよ、単純に僕らがものすごく身体を鍛えているから楽に戦えるというだけだ。特に僕らみたいにタフだった時代にF1にやって来た人間は、それに耐えるために身体の筋肉を鍛えてきたし、今もそれを一定のウインドウの中にキープし続けているんだ。だからクルマが年々遅くなっていくと楽に感じる。だけどF1に慣れていないドライバーがポンと乗ったら死んじゃうくらいキツいと思うよ(苦笑)。今も変わらずF1はハードだけど、僕らにとっては限界ギリギリというわけじゃない。それだけ身体を鍛えているからね」

 

ーータイトル争いが進めば、ニコ・ロズベルグとの関係悪化を懸念する声もありますが?

「みんなそのことを聞きたがるけど、とてもシンプルだよ。僕らは昔から友達だし、お互いのことはよく分かっている。でも僕らにはそれ以上に親しい友人が何人もいるし、例えばお互いの最も親しい5人の親友に入るかと言えば、お互いにそれは違うだろう。だけど僕らは子供の頃からチームメイトとしてレースをし、他のどのドライバーよりも長く一緒にレースをしているし、同じチームで互いにリスペストして一緒に良い関係を築いてきて。そんな中でカートの時代から3つのカテゴリーでチャンピオン争いを繰り広げてきたんだ。今だって何も変わりはないよ」

 

ーーもうすぐアイルトン・セナの没後20年ですが、彼は貴方にとって憧れのドライバーでしたよね?

「セナは僕にとって常に特別なドライバーであり続けているよ。僕は彼をきっかけにF1を見るようになって、当然のように彼に憧れてきた。彼のドライビング、レースに対する態度を見て、僕も同じように頑張ろうと励まされてきたんだ。彼のレースはキャリア初期から後期までビデオで全て見たよ。僕もこれから彼のようにやっていければと思っているけど、まだまだ先は長いね」

 

ーーF1の魅力が減退したという批判についてはどう感じていますか?

「見るならカートが一番だよ。素晴らしい才能を持ったドライバーたちが、全員がほぼ同じクルマ、ほぼ同じエンジンで、ドライバーの才能がハッキリと出るし、コーナーごとにオーバーテイクの腕が磨かれる。MotoGPもそうかもしれないね。

 でもF1は違う。全く違うテクノロジーの世界だ。もちろんその違いはダウンフォースのだけではなくて、セットアップも含めた様々な要素の組み合わせによるものだ。エンジニアやメカニックたちの仕事もほれぼれするほどだ。そんな中で今年はメルセデスAMGは他よりも素晴らしい技術革新を達成したというだけのことだ。

 もちろんF1だってオーバーテイクを増やすために努力はしているし、今年はそのために空力をさらに規制して、リアのダウンフォースを減らされた状態で走っている。それが上手く機能しているかどうか、それを判断するのにはもう少し時間が必要だと思うよ」

 

ーー今年のF1はパワーユニットに支配されすぎてはいませんか?

「部屋の中にいて見ているだけでは分からないよ。風向きが変わればクルマのスタビリティは変わるし、路面温度が下がればオーバーステアになったりアンダーステアに変わったりする。クルマの置かれた状況は刻々と変化しているし、目標も変わる。それはモニターを眺めているだけでは予測なんてできないんだ。目標が刻々と変化する中でも、僕らは目標をピンポイントで設定してセッティングを仕上げている。ドライバーやエンジニアにとってはこれはものすごいチャレンジだよ。きっとみんなには分からないだろうけどね」

 

20140411-01

 

(text by 米家 峰起 / photo by MercedesAMG)

 

 

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