REPORT【報道】

20140225-11

 

 テストが続く日中の時間帯だというのに、ルノー製パワーユニットを搭載するマシンはピットガレージに収まったまま出てこない。何よりも異様なのは、ロータスにしてもケータハムにしても、1秒でも早くコースに復帰したいはずなのに、メカニックたちが作業に取りかかるでもなくマシンを取り囲んで手持ち無沙汰な様子で立っているだけという光景が繰り広げられていることだ。慌ただしいのはルノーのエンジニアとデータエンジニアのみで、それ以外のクルーは何をすることもできない。バッテリーがトラブルを抱えている時などは、マシンの周囲がテンサバリアで囲われて近付くことすらできなくなる。

 

 シャッターが閉じられて中の様子をうかがうことができないレッドブルやトロロッソにしても、おそらくは同じような状態だったはずだ。

 

 ルノーが抱えている問題は、大まかに言ってエネルギー回生システム(ERS)を司るソフトウェアにあった。

 

20140225-12

 

 ヘレスで発生したバッテリー本体や熱容量の問題はすでに対策が施されている。初日のロータスや4日目のケータハムのように、昨年までのKERSと同じようにバッテリー周りにトラブルが発生することもまだあるが、それはヘレスで起きたような根本的な対策が必要とされるようなものではなく、交換してしまえば済むような問題だったようだ(もちろん信頼性の向上を図る必要はあるが)。

 

 依然として抱えているのは、リアブレーキから発電するMGU-Kのエネルギーと、ターボ熱から発電するMGU-Hのエネルギーを、バッテリーに蓄電するのとそのままブーストに使うのとに制御するソフトウェアの問題だ。

 

 ヘレスではERSは実質的に使用せずに走行していたが、バッテリーの改善によってバーレーン合同テストではまず60kWの回生から使用し始め、ソフトウェアの改善によってバーレーンの2日目になってようやくトロロッソがフルパワーの120kWをチャージするモードで走行を始めた。最終日にはロータスとケータハムもこれに加わった。

 

 しかし前述のソフトウェアの問題を抱えたままの状態であるため、MGU-Kのチャージが行なわれるブレーキング時には異常な挙動を示し、通常の走行をすることはできない。この状態では、マシンのセットアップやデータ収集はほとんど進められない。ルノー側の制御ソフトウェアの改善が急務となっているのだ。

 

 そのERS制御によって失うラップタイムは約2秒だと言われている。

 

20140225-13

 

 トロロッソのあるチーム関係者は、現状を次のように明かしてくれた。

 

「ERSから自動的に回生するブーストと、エンジン本体のパワーとのバランスを取るマネージメントができていないせいでトラブルが出ているんです。そのマネージメントさえきちんとできれば2秒は縮まります」

 

 しかし、ライバルメーカーに対して明らかに開発が遅れていることに対する戸惑いと憤りは隠せない。

 

「メルセデスは昨年の夏頃がこんな状態だったと聞いています。つまり、ルノーは6カ月も後れを取っているわけです。このような状態で戦えるわけがない。2月末に予定されていたホモロゲーションの期限も、緩和を依頼したと聞いています」

 

 熱性能の面でライバルに対して劣っているとは思わないと、ルノーのレミ・タファンは語っていた。しかしチーム側からすると、ルノーから指示された数値目標はかなり厳しいものだったとそのトロロッソ関係者は明かす。

 

「外気温が30度の時にバッテリーを60度以下に抑えろという数値目標です。しかし30度差なんていうのはかなり厳しい。他メーカーの数値は把握していませんが、マシンを見る限りでは他メーカーとはかなり差がありそうです。それも、ルノーからその熱容量情報がもたらされたのがかなり遅いタイミングだった。テスト開始の2〜3週間前になってようやく来たくらいです」

 

「これじゃ、フェラーリのままでいった方が良かったかもしれない……」

 

 ちなみに、日本のスーパーGTを戦っているGT300のあるハイブリッド車両では、F1のKERSと同じようにドライバーがボタンを押してブーストを得る仕組みになっているが、そこでもバッテリー温度は65度程度まで許容されている。それなのに、ルノーのバッテリーは60度以下で運用しなければならないのだ。

 

(2/2に続く) 

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

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