RACE【レース】

20141202-01

 

 2014年を無勝利で終えたフェラーリの浜島裕英エンジニアに話を聞いた。今季のフェラーリは空力的にもパワーユニットの面でも後れを取り、それゆえにタイヤの面でも遅れを取ることになったと浜島エンジニアは悔しがる。

 浜島エンジニアから見たフェルナンド・アロンソも、ここ数年は諦めたようなムードが漂っていたという。その背景にはマネージメント能力に長けたトップ不在とチーム組織の弱体化があったという。

 

ーー2014年シーズンが終わりました。

「1993年以来の無勝利になっちゃいましたね……。ここから3年続くのかな!? 前回も1991年からそうだったもんね」

 

ーーブリヂストン時代から含めてフェラーリとは長い付き合いだと思いますが、浜島さんがフェラーリと一緒に仕事をするようになってから一番良くないシーズンでしたか?

「僕がF1を始めてから一番悪いシーズンでしたね……(苦笑)。2005年と2009年だって1勝はしたでしょ? ジャッキが壊れたとかつまらないミスも多かったですしね」

 

ーー浜島さん自身の仕事は悪くなかった?

「僕の仕事的にはヒマでしたよ。(チームの注力が)タイヤにまで至らなかった、残念ながら。ダウンフォースも足りないし、パワーも足りないし、ソフトウェアも悪くて空転してしまうし、全部足りなかったんです。フェリペ(・マッサ)なんてスタートから12周もスーパーソフトを保たせたでしょ? でもウチはザクザクになってとても無理でしたから。特にリアのグレイニングですね、トラクションが落っこちちゃってザクザクになってしまうんです」

 

ーータイヤが上手く使えないというのは、パワーユニットのマネージメントが上手くできていないことも原因のひとつだった?

「そう、ダウンフォース不足というのもあるけど、それ(PU)もひとつありますよね。僕からも随分言ったんだけど、『そう簡単にできるもんじゃない』って言われてお終いでしたから(苦笑)。ウチはソフトウェアの開発も遅れていたんです」

 

ーー逆にメルセデスAMGは速くてなおかつタイヤにも優しかったですよね。

「一瞬ツラそうにみえるんだけど、そんなことないんだよね。特にリアタイヤに優しい。メルセデスAMGはソフトウェアの点でもシーズンを通して進歩していたように見えましたよね」

 

ーールイス・ハミルトンもニコ・ロズベルグも、序盤からあまりプッシュしていなかった印象でしたが?

「タイヤ(のデグラデーション)が恐かったんでしょうね。FP-2でみんなひどいグレイニングで急にペースが落っこちていましたからね。あれを避けたかったんでしょうね。フェリペもトラフィックの中で走っていたからこそ、スーパーソフトがあれだけ保ったとも言えます。重いときに本当の速さで走って負荷を掛けてしまったら、あのスーパーソフトはすぐにグレイニングを起こすから。最終スティントみたいに軽くなってからは大丈夫なんだけど、(燃料を)重くした途端にガクン!と来るから」

 

20141202-02

 

ーー今年限りでフェルナンド・アロンソがチームを去ることになりますが、浜島さんから見たアロンソというのはどんなドライバーでしたか?

「常にモチベーションに満ちているし、やはりスゴいドライバーですよ。ただ、マイケル(ミハエル・シューマッハ)やセバスチャン(・フェッテル)に比べるとポリティカルな行動が多いかな、ちょっとね(苦笑)。マイケルだってあったんでしょうけど、彼の方がより技術面に即したドライバーでしたよね。もちろん当時はジャン・トッドがいて、今とは組織の形も違っていたし、フェルナンドはそういうところまで自分でやらなきゃいけなかったことに疲れちゃったんでしょうね、きっと」

 

ーーあまりに勝利から遠ざかりすぎてしまったし……。

「ミーティングで声を荒げるようなこともありましたからね。以前はそんなことなかったんだけど、去年くらいからかな。僕がチームに入った頃は、ステファノ(・ドメニカリ)に対して『良くするっていうのは分かるけど、じゃあ具体的にどういうふうに良くするんだ?』とよく尋ねていました。でもそれが変わってきて、最後の方は声を荒げるどころか、『なんでもないよ』って大人しくなっちゃってた。もう諦めの気持ちもあったんですかね」

 

ーー来年はセバスチャン・フェッテルが加入しますが、フェラーリの復活は?

「まだまだ先は遠いと思います。セバスチャンに期待するところは大きいけど、その前にクルマを良くしないとどうしようもないですから。そのためには組織ももっと変わらないと。クルマを良くするところにエネルギーを注ぐようにしないとね。もちろん力は入れているけど、レース戦略を良くするとかにおカネをかけるよりももっとクルマを良くする方にかけないとね。

 みんな苦しんではいるけど、開発の効率性というのが重要ですよね。例えば、空力のメニューばかりやって得るものが少ないのに、そこに固執してタイヤの評価を充分にやらないとかね。逆に去年のロータスは(テストすべき)新しいパーツがないからタイヤのテストメニューばっかりやっていて、そうするとたくさん勉強できるわけです。それがシーズン中に役立ったんです。でもウチはおカネがあるから空力の開発にばかり走っちゃって、タイヤの評価は後回しになっていた。そういう優先順位をもうちょっと考えた方が良いかなと思いますよね。

 僕もブリヂストンにいたときにそれを勉強したけど、それって組織の上の方にいる人間が状況をよく見ていないとダメなんです。フェラーリもジャン(・トッド)がいた時代はそうじゃなかったんだけど、ハッキリ言うと今は先が見えないんですよ……」

 

20141202-03

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

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Comment

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  • コメント (1)
    • mitsunishira
    • 2014年 12月 02日

    面白い!! この月額料金払うだけの価値は十分にあると思う記事でした。
    これからも期待してます!!

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