RACE【レース】

20141124-10 

 

 非力なマシンで臨む最終戦に、小林可夢偉はスーパーソフトを2セット使ったアグレッシブな戦略で妥当ザウバーを目指した。最後はブレーキトラブルでリタイアを余儀なくされたが、それがなければザウバーを喰うことも可能だったかもしれないという走りに、可夢偉は満足げな晴れ晴れとした表情を見せた。これが最後のレースになるかもしれないという、コクピットに乗り込む直前の複雑な思いも合わせて、シーズンを終えた直後の可夢偉に聞いた。

 

ーー今日のレースは思いっきりできた?

「うん、バッチリです!」

 

ーーシーズンが終わった今の気分は?

「とりあえずビール飲みたいなぁ、と(笑)」

 

ーー前半戦最後のハンガリーの時は『ここまでで2年分の経験をした』と言っていたけど?

「シーズンが終わって4年分ですね(苦笑)」

 

ーーリタイアになってしまったのは?

「左リアのブレーキダクトにタイヤカスが入ったらしくて、そこだけ異常に熱くなってて。踏んでも片側だけ利かなくてステアリングが勝手変なとこ向いて右に行こうとするんですよ。最後はバイブレーションまで出てきたからちょっと危険すぎるかなと思って」

 

ーーそれはいつくらいから?

「3周目くらいから出てましたね。『リアブレーキが熱いからブレーキバランスを前に持っていけ』って言われてて。そしたらフロントがロックするし、なんとか試行錯誤しつつそれを調整しながら走ってた感じですね」

 

ーー無線でも『ブレーキバランスじゃ調整しきれない!』って言ってたよね。

「走れないっていうか、ブレーキを踏まんかったらええだけなんやけど、踏まないわけにはいかへんし、踏むと(フロントが)ロックするし、ロックするからタイヤが保たへんし、それでブレーキバランスを後ろに持っていったら温度が上がるし」

 

ーーバイブレーションというのは?

「ブレーキングでウ〜ッ!って右を向いて、コーナーに入っていったらブルブルブル〜ッ!って。これはおかしいやろ、って」

 

ーーそれでピットインしろと言われて、そのままガレージへ押し戻された?

「新人エンジニアなんで何も言ってくれなくて、そのまままた(コースに)行くんかなと思ったら、気が付いたらメカニックが(プロテクターなどを)全部取ってくれて、『あ、俺降りるんや?』みたいな。気分としては最後までレースがしたかったですけどね。でもクルマがどんどん酷くなってたから、しょうがないから。最後はコーナリングしたらブルブルブル〜ッ!ってブラジル人がケツ振ったみたいになってたから(笑)。まさにあんな感じやったんで、これはちょっとヤバいなって」

 

ーースタート直後にエイドリアン・スーティルを抜いて前に出たのは?

「1周目のセクター2ですね。バックストレートの終わりのシケインでゴチャゴチャしてる間に抜きました。まぁ、そんな楽しいバトルでもなかったんで(苦笑)」

 

ーーそれでも第1スティントはスーパーソフトで15周も走ったよね。そこからミディアムにつないで、その次のスーパーソフトで最後まで走り切る予定だった?

「だったはずです。もうちょっとブレーキがちゃんとしてたらタイヤももっと保ったと思うし、全体的に良いレースができたと思いますよ」

 

ーーということは、最終的にはザウバーとの争いで結構良いところに行ったかもしれない?

「かもしれないですね。前半もそんなに離れなかったしね」

 

ーーそれって結構チャレンジングな戦略だよね?

「僕らの場合は失うものがないからね。ちょっとでも前と戦ってるところを見せたいなっていうのもあったし。その方が見た目が良いかなっていうだけです、中身がグチャグチャやから外見だけ良くしてみようっていう感じで、申し訳ないです(苦笑)。結局、ブレーキがあの状態やったからパフォーマンス面では結構抑えながら走ってたけど、それでもあれだけ走れたんやから上出来やと思います」

 

20141124-11

 

ーーグリッドでコクピットに乗り込む直前には少し感傷的になっているようにも見えたんだけど、どういう気持ちだった?

「いやぁ、なんか……なかなかね。『もしかしたらF1でバラクラバ被るのもこれで最後なんかなぁ』とかいろいろ考えて、人間ってなかなか面白いなぁって思いました。もし自分が20歳に戻れるなら戻りたいなぁって、初めて思いましたよ」

 

ーー20歳に戻りたい?

「20歳に戻れたら、もうちょっとチャンスあるかなぁって思うんですよね。もうちょっと違うキャリアの進め方ができたんじゃないかなぁって。もしかしたらこれが本当に最後になるかもしれないっていうのは、初めてですからね」

 

ーー2012年の最終戦はそういう感覚ではなかった?

「あの時はそんなふうには思わなかったですね」

 

ーー最終戦の集合写真にも写れて良かったと言っていたけど?

「冗談ですけどね(笑)。そんなこと真に受けないでくださいよ、そんなのどうでも良いんです」

 

ーー最終戦、やり切った感はある?

「この状況の中ではよくやれたと思います。チームもバタバタの中でやって来て、決勝までトラブルなく走ったっていうのは、チームのみんなが頑張ったって思うし。僕自身も、(クルマが問題を抱えた)あの状況であれ以上やれって言われても限界やったと思うし。やり切った感って何かっていうたら、結果じゃなくて自己満足でもあったしね。ロシアのまま終わってたらモヤモヤしたまま自分の一生を終えたんかなって思うし、とりあえず最終戦に出られてスッキリして良かったっていうのと、F1のシーズンを締めくくってこれから来年に向けてどうしようかなっていうところですね。とにかく満足はできたし、1年間ありがとうございました」

 

20141124-12

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

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  • コメント (2)
  1. senju1027
    • senju1027
    • 2014年 11月 24日

    予選でマシンを降りた後の可夢偉選手が国際映像でも映っていましたが、ピットで話す時の表情が笑顔だったので、全力で楽しんでいるんだろうなぁ…と思っていました。まぁ、「笑わんとしゃーない」ということもあったのかもしれませんが。

    どこでもいいので、走っている姿が来年も見たいですね!もちろん第一希望はF1ですが!

    • youchann7
    • 2014年 11月 24日

    まずは一年間本当にお疲れ様でしたと伝えたいです。
    なかなかレースに専念できない環境のなか、超強靭なメンタルで戦い抜く姿が心に響きました。
    とても厳しいのは承知ですがなんとか来年F1村に残ってほしいです!逆転ホームラン…欲しいですねぇ。

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