04/04
【GP2・バーレーン木曜日】佐藤公哉・開幕直前インタビュー「煩悩を捨てて戦い、さっさと“次”に進みたい」
2014年のGP2シーズン開幕を目前に控え、佐藤公哉に今の心境を聞いた。開幕前にバーレーンとアブダビで3日間ずつのテストを行なった手応えとGP2マシンの印象、そこから開幕戦と今シーズンに向けた展望、そしてその先に向けたビジョンを語ってもらった。
ーーいよいよ開幕ラウンドですが、開幕に向けての6日間のテストはどうでしたか?
「僕らなりに順調にテストができたとは思うんですけど、初めてのピレリタイヤでまだニュー(新品タイヤ)の一発の出し方とかはまだ経験者に比べて詰め切れていませんね。問題は温め方です。2〜3年やっている人たちは一発で出せるところが、僕は2周かかっちゃったり。
レース距離に関しては、レースをやってみないと分からないですね。ロングランテストもやりましたけど、周りが同じことをやっているわけじゃないから比べることもできないし。『去年はこんなペースで走っていたよ』というのをチームから聞いてそれで走ったんですが、実際にレースをやってみないとタイヤの保ち具合も分かりませんからね。
でも、やれるだけのことはやってきたし、悪くないと思いますよ」
ーー自分としては100%やり切った?
「はい!」
ーーロングランはどういう感触だった?
「4〜5周に一度くらいの頻度で、『ちょっと速い』『ちょっと遅い』『リアタイヤの調子はどう?』って聞かれながら走るような感じでしたね。なるべく1周飛び抜けて速いタイムで走るんじゃなくて、速く走らないようにするっていう感じですね(苦笑)」
ーードライバーとしては何%くらいの走り?
「55%、60%くらいの力ですね。ホントに“ゆっくり”走ってる感じです。我慢比べみたいな」
ーーロングランではリアがタレた?
「リアはすごくタレますね。摩耗がすごいんです。アブダビのテストでレース距離をガッツリ走ったんですけど、スーパーソフトでスタートしてすぐにリアにかなり大きなブリスターができて、ミラーで見て分かるくらいの大きなブリスターで、その黒い筋が周回ごとにどんどん大きくなっていくんですよ(苦笑)。ちょっと恐いくらいでしたけどね。そんなタイヤも初めてだし、データを見ながらチームともリアタイヤをいたわって走ろうということは話し合いましたけど、そのあたりは実際にレースを走ってみないと分からないですね」
ーーこれまで乗ってきたクルマに比べて、GP2のクルマの印象はどう?
「F1もテストはしましたけど、僕は大きなフォーミュラカーってAUTO GPしか知らないので、GP2は近代的なクルマだなと思いましたね(笑)。まずハンドルが持ちやすい! AUTO GPは重いし細いし。でもこっちは太いし軽いし、モニターも見やすいし。シフトのアップダウンの感触もレスポンスが良くて、AUTO GPみたいに変速ショックがないし、カチカチとスイッチみたいに気持ち良くギアが入っていきますね」
ーーF1をテストドライブした時はダウンフォースを使った走り方に苦労したよね。
「そうですね、でもGP2はF1ほどダウンフォースがあるわけじゃないし車重も重いんで、ダウンフォースで走るというよりタイヤのグリップで無理矢理走っているような感じですね。だからクルマに慣れるというよりもピレリタイヤといかに仲良くなれるかが勝負の鍵だと思います。特に予選はそうなんじゃないかという気がします」
ーータイヤの特性上、最初の美味しい部分が短いから予選アタックも難しいよね?
「ウォームアップと、アタックを1周に凝縮することですね。全てを1周にまとめられればすごいタイムが出せると思うんですけど、それはドライバーの集中力によるところも大きいですね。いかに煩悩を捨てて走るかですね。煩悩だらけのドライバーなんで大変ですけど、今日は座禅してから寝ます(笑)。クルマのセットアップも、(レースも予選も両方に)完璧なクルマにすることはできないんで、いかに集中しやすく1周をまとめやすいクルマに仕上げるかですね」
ーー全26台のタイム差も小さいし。
「タイム差が近すぎて、大変なカテゴリーに来ちゃったなと思いましたね(苦笑)。テストでも2日目は11番手だったんですけど、3日目は17番手になってしまって。その差というのが0.5秒くらい遅くなっただけで、しかもデータで見ても昨日と同じことをやっていて、1箇所の出口でちょっと滑っただけでそうなるというような状況で。本当に熾烈なカテゴリーですね」
ーー開幕戦はどのあたりまでいけそう?
「現実的に考えて、予選はトップ10に入れれば良いなぁって思ってますね。みんな本番はバッチリ合わせてくるでしょうし、テストの時ほど甘くはないでしょうからね。それで、レース1では(8位以内に入って)リバースグリッドでレース2の上位グリッドをゲットしたいなと思ってます。レース1はまず空気を読みにいって(笑)、レース2で表彰台なんか乗れちゃったら最高ですね。そんなに甘くはないと思うんで、頑張ります」
ーーGP2のレースは激しいけど、ぶつけてでも抜いていくキミヤ選手だから大丈夫?
「空力パーツが多いんで、今年はちょっと大人しめにいかないと(笑)。(参戦費用も高い)高級車ですからね、これ! さっきのブリーフィングでもFIAの恐いおじさんから『みんな大人しくね』って言われましたよ。でも本番になればみんなグチャグチャになるでしょうけどね。僕はすごく平和を好むんですけど(笑)、周りがホントにね……。そりゃ、ぶつけられたらイラっときますけど、まぁ平和が一番ですよ(笑)」
ーー今年のGP2初年度はどういうことを目標にやっていく?
「AUTO GPは良いドライバーが集まってはいましたけど、結局のところ世間にはあまり知られていなくて、やっぱりF1に行くならGP2でしょっていうことになりますよね。そのGP2で結果を残すことと、この先に向けてピレリタイヤを勉強することですね」
ーーキミヤ選手の中ではこの先にF1というものを見据えているからこそここにいるわけだよね?
「そう思ってます。F1に向けたステップだと思ってます。
ただ、もう年齢も若くないのでさっさと次に行きたいですね。このシリーズで極めていこうなんて考えてないし、3年・4年やる体力(資金力)もないし、もしかしたら2年目をやる体力もないかもしれないんで、本当にさっさと次に行かないといけないと思っていますね」
ーーそのためには何が大切だと思っている?
「結果も大切でしょうけど、日々マジメに全力で生きることですかね。1年終わって『あれやっとけば良かった』、『これやっとけば良かった』って言うのはイヤですね。そうすれば何か付いてくるものがあるんじゃないかと思ってるんです。ここにいれば何かが見えてくるかもしれないし、新たな出会いもあるでしょうしね。GP2はF1のパドックとは隔離されてますけど、F1と同じ場所で開催されるわけですし、F1の人たちに向けてコース上でアピールしていきたいと思っています」
(text and photo by 米家 峰起)
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