03/15
【オーストラリアGP・土曜日】小林可夢偉「この結果で喜びたくない、僕らが見てるのは順位じゃないから」
開幕戦の予選でQ2に進出する好走を見せた小林可夢偉だが、本人は意外にもこの結果に喜びを露わにすることはなかった。むしろ不満げな表情を見せた。それは、予選に向けてチームが抱える新たな問題点が発覚したからだった。
Q1突破くらいではなく、もっと上を目指しているからこそ、予選後の可夢偉はやや不機嫌に決勝と今後に向けた今の率直な心境を語った。
ーー見事に初戦の予選でQ2進出という結果になりました。
「そうですね……これで喜んで良いレベルなのか僕にも分からないんですけど(苦笑)、てゆうかこれで喜びたくないっていうのが僕の本心ですね。チームを引っ張る立場としては、これで喜んでいる姿を見せるわけにはいかへんやろっていうのがあるから。まぁ、走れただけマシやし、ちゃんと走ったっていうことに対しては『頑張ったな』って言うてあげてもええかなって思います。ただ、ここまで行けたことはスタート地点のチームのポテンシャルとしては良かったと思うけど、まだここがゴールじゃないし。今の時点では順位っていうのはあんまり重要じゃないんです」
ーーQ2に行けるとは思っていた?
「そうじゃないんです、結果は見てないから。結果を見てもしょうがないんです。まだベストな状態じゃないし、まだまだやることはいっぱいある。テストのつもりで走っただけやし、ホンマに順位とかは全然考えてなかったから。
クルマのパフォーマンスとしてはまだまだやることがあるなと思ってます。自分の中では、もうちょっと引き出せるものがあったという気がしているんで。満足できる予選ではなかったですね。まぁ、距離が稼げていろんな経験ができたっていうのが一番の収穫で、そういう意味ではいろんなタイヤを試したし、燃料も変えてこのクルマで軽いタンクで走ったのは初めてやったしね。そもそもテストで何もできてへんかったから(苦笑)。これもまだまだ成長過程の一部ですかね」
ーーセッティングはできていない?
「ゼロです。時間がなさ過ぎて、これをやると予選に間に合わないっていうことで(FP-3の)そのまま行きました。FP-3ではパワーユニットのマッピングとかBBW(ブレーキバイワイヤ)はいじりましたけど、メカニカルのセッティングは全くいじってないんです。それを考えると、金曜日に走れなかったのが痛かったですね」
ーー今日の1時間ではそこまでやる時間がなかった?
「FP-3が終わってから予選までにセッティングを変えようと思ったんですけど、FIA(の車検)にクルマを持っていかなきゃいけなくなって、そうしたらセッティングを変えてる時間がなくなって。キャンバーを変えるのに1時間以上かかるって言うんですよ。フロントのスタビを変えてくれって言うたら『50分かかる』って言われて、『嘘やろ!?』みたいな。いろいろ変えられると思ってたのに、いろいろ言うても『それも無理、それも無理、それも無理』って。『ほんなら何ができんの?』って言うたら『何もできない』。『ほな、このままで行くしかないやん』って」
ーーそんなにかかるもの?
「フロントサスペンションをプルロッドにしてるから、(構造が)ややこしいんでしょうね。『速かったら25分だけど、遅かったら2時間かかるかも』って、『そらあかんやろ』って。それに元々FP-3と予選のインターバルが2時間しかないでしょ? 2時間しかないのに、このチームはミーティングを1時間やってるんですよ。そら無理でしょ?(苦笑) そういうとこから見直さなあかんっていうことなんですよ。クルマがどうのこうのっていうことじゃなくて、レース週末のオペレーションですよ。インタビュー時間が多すぎやとかね。もっと効率よくやっていけるように変えていかなきゃいけないっていうことですね」
ーーまだドライビングが難しい状況?
「全然難しいですよ」
ーーブレーキングとか、立ち上がりとか?
「全部です(苦笑)。ドライもウエットも、全部」
ーー攻めて走れるような状態ではない?
「攻めて走るのは恐いですよ、今はリアルに。このクルマをコントロールできる自信がないから、そこまで行けてない」
ーーターン1で見てても、アウト側の縁石まで乗ってなかったよね?
「そら乗れれへんでしょ? フロントウイングもスペアがないから、1個壊すと終了に近いからね(苦笑)」
ーーテストの時とは?
「あんまり変わってないですね、クルマ自体は変わってないから。ラップごとに挙動が変わるっていうのはさすがにないですけどね」
ーーブレーキングと立ち上がりでは、どちらの方が厳しい?
「両方ですよ(笑)。両方どころか、直線走ってても恐いから。いろんな問題がありすぎて、クルマに安定性がないからね」
ーーQ2はマップはドライ用のままウエットで走った?
「ドライのまんまです(苦笑)。非常に恐かったですね。ダウンフォースはないし全然慣れてないクルマでそれをやるのは、なかなか勇気が要りますよ」
ーーインターミディエイトを履かなかったのはそのへんもあって?
「あんまりスペアパーツがないんで、安全にっていうことでね。もちろんベストを狙えばインターミディエイトを履いた方が良かったんでしょうけど、食えたとしてもスーティルぐらいやったと思うし、そんなに大きな問題じゃなかったと思いますね」
ーーそれでも最後は少しずつ自己ベストを更新していって。
「少しずつ詰めていって。今の僕の1年のブランクがある状態で、テストで充分に走り込めていない中でいきなりドンていくのは、さすがにファンキーすぎるしね」
ーー1年ぶりのF1の本番ですが、感覚はまだ取り戻せていない?
「いや、意外と普通に走ってるなって思いましたね。普通に走ってる自分が恐いな、みたいな。去年も走ってたら今日の予選(Q2)でもドンと行けたかもしれませんけどね」
ーー明日はドライの方が良い?
「どっちでも良いです! ドライも遅いんでどっちもどっちやし、まだそんな次元じゃないんですけど、僕らは冷却に余裕があるんで、暑くなった方がマシかもしれませんね。でもまずはパフォーマンスを上げないといけないし、そのためには距離を稼ぐことが必要でしょうね」
ーー昨日の夜も夜間作業禁止の直前、2分前になんとか作業を完了したみたいですけど?
「不思議なもんですね、ギリギリになって夏休みの宿題をする小学生みたいなもんですよ(笑)。毎朝来る度に『昨日の夜クルマに何もなかった?』って聞かないといけないですからね。レッドブルなんか、テストであれだけ走れてなかったのにここに来たらなんで走れるんやろっていうのはありますよ。しかも普通に走ってるから。これってなんなんやろ!?っていうのは僕が教えて欲しいですね(苦笑)」
ーーいよいよ明日、F1復帰戦に臨むわけですが?
「久々にF1に帰ってきたんで、(走行状態で)ピットストップの練習もまだ1回もやってないし、ホンマにこれでレースに出られるんかっていうのもありますけど、落ち着いてまず距離を稼げるようにしたいですね。完走してデータを収集して今後に繋がる走りにできれば、今回の厳しいスタートからすると充分かなと思いますね」
ーー14番グリッドに並びますが、周りのクルマとの差は大きい?
「いや、ホンマに周りとか見てないから。目の前のこの1戦で勝負してもしょうがないんですよ。まずどうやってこのチームの運営システムを作って、開発に何が必要なのかっていうことを長い目で見て考えてるから。まず予選までにセッティングが変えられへんほどミーティングしてるっていうのがオカシイでしょ?(苦笑)
まだクラッチのバイトポイントがどこで来るかっていうのを見てるくらいやし、スタートで上位に行ったところであんまりペースが速くないからすぐに抜かれると思うし、あんまり期待しないで見ててください(笑)。ヘタに勝負せずにタイヤをセーブして、自分のレース、現実的なレースをしたいと思います。まずは走り切ることです!」
(text and photo by 米家 峰起)
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