REPORT【報道】

20140926-04

 

 ホンダのF1プロジェクト総責任者を務める新井康久氏に、2015年のF1参戦に向けてホンダのパワーユニット開発がどのくらい進んでいるのか、その最新状況を聞いた。年明けには実戦仕様のエンジンが完成してベンチテストを開始する予定だという。気になる11月末のアブダビテストの可能性、そして先日報じられた「メルセデスAMGに勝てる」という発言の真相を聞いた。

 

ーー鈴鹿に向けて、景気の良い話は何かないですか?(苦笑)

「今は苦労しています。というか、今苦労しておかないと、実を結ばないということです。開発は予定通りと言っていますが、それは予定通りたくさんの苦労をしているということでもあるんです。日々いろんなことが起きますから、課題が山積みで大忙しです。予想通りたくさんの課題が出て来ているし、それをどうするか解決していくとまた出て来る。詳しくは言えないけど、『え、こんなこと!? 参ったなぁ!』というような予想外の大きな壁もありました。でもそれは今出てくれないと困るわけです。シーズンに入ってから出ちゃったら大変なことになるんですから。まだこれから2月末までの5カ月で山のように出ますよ」

 

ーーこれから2月1日のヘレス合同テストまでの開発スケジュールはどのような予定ですか?

「これから年明けに本番用のパワーユニットが完成して、実際に搭載する前にベンチでテストもするわけですけど、そこでも問題が起きるでしょうし、それを克服してマシンに搭載したらまたいろんなことが起きる。これからの5カ月間でそういうことをやってネタの尽きない日々を過ごしていくわけです」

 

ーーマクラーレン側はアブダビGP後のテスト走行の希望を捨てていないようですが……。

「ハハハ(笑)。ちょっと笑っちゃいました、すいません今のはなかったことにしてください(笑)。それはリップサービスでしょう。彼らの“WISH(希望)”でしょうね。2015年用のマシンは車体側も我々もまだ影も形もなくて、図面上で遊んでいる(いろんなアイディアを試している)段階ですから、実際に搭載してかたちになるのはまだまだ先の話です」

 

ーーではアブダビGP後のテストで走ることはあり得ない?

「2015年型マシンが走ることはあり得ないでしょうね、その時点では形がありませんから。11月末じゃ、モノコックの制作だってできていませんよ。ヘレスの合同テストが2月の頭ですから、そこできちんと走らせるというのがギリギリの線だと思います」

 

ーーパワーユニットの方もできていない?

「レース用のパワーユニットは11月の時点では全然できていないでしょうね。年が明けてから初めて(本番用の)パーツを組んで完成させることになります。今のテスト用のパワーユニットを載せて走らせても、しょうがないですよ」

 

ーー今年のマシンに搭載して走ることはない?

「もしやるとしても、システムチェックくらいしかできませんよ。モノコックが違うと、本当にチェックランにしかならないです。何なら、(エリック・)ブリエさんに『ホンダにもうちょっとプッシュした方が良いんじゃないの?』と伝えておいてください(苦笑)」

 

20140926-05

 

ーー新井さんがブリエと話すことはあまりないんですか?

「もちろん話はしていますよ。スパでも会っていろんな話をしました。今は言えないようなこともいろいろ話したりしました(苦笑)。でも彼は現場監督ですし、クルマの開発はファクトリーにいる別部隊ですよね。2014年型マシンの最後の開発をやっているチームと、2015年型マシンの開発チームとありますが」

 

ーー今季は年間5基という制約ですが、来年は年間4基で20戦を戦うことになりますね。

「チャレンジングというか、泣いてますよ我々は(苦笑)。すごくハードルは高いですね。今年は一部のドライバーを覗いてどのメーカーも5基でシーズンを終えられそうなところまで来ていますけど、来年は年間4基になりますからペナルティ合戦になるかもしれません」

 

ーー2015年用パワーユニットのホモロゲーション(仕様登録)については、期限がシーズン内まで引っ張られるのではないかという話もありますが?

「いや、まだ何も決まっていないと思います。一応、我々としては今年同様の2月末が申請期限という想定で開発を進めています。2月の頭にテストが始まってからも、残りの1カ月間で開発しなければならない項目はかなりたくさんあると思っています。1カ月あればかなりいろんなことができますから」

 

ーー実走テストが始まってから開発終了(ホモロゲ期限)までの最後の1カ月が勝負になる?

「今の時点で開発がどのくらい進んでいるのかと言うと6〜7割なのか何割なのか分かりませんが、1カ月ごとにその度合いは進んでいくわけです。でも最後の1カ月は本当に最後の5%とか3%を詰める作業になります。そこは本当に死にものぐるいの開発になるでしょうね。最後は大変なことだけが残っているわけですから、開発の指数関数的には(上昇させるのは)どんどん大変になっていくわけです。だからそういう中でどちらが良いのか見極められないとか、下手すると見切り発車といったことにもなるかもしれません。

 今年の各メーカーのヘレス合同テスト以降の開発ラッシュはすごかったですよね。開幕するまでは『これじゃレースにならない』なんて言っていたのに、いざメルボルンでフタを開けたら驚きましたよね」

 

20140926-06

 

ーー1年目からカスタマー供給を視野に入れず、マクラーレンへの独占供給にしたのは正解だったと思いますか?

「まずこのパワーユニットは『はい』と渡して走らせられるようなものではありませんよね。パワーユニットと車体の両者の様々な相関関係の上でそれぞれのスペックが決まってくるわけです。レッドブルだってルノーのワークスとしてやっていても結構苦労しているわけですし、我々だって簡単に勝てるような甘い世界だとは思ってません。ですからまずはマクラーレンへの独占供給でワークス体制で共同開発を進めるという方針は間違っていなかったと思っています。まずはとにかくガチンコで戦って良い成績を出して、それを見た他チームからも供給のオファーがくれば嬉しいなとは思いますけどね、まずは成績を出さないことには何も言えないですから、今は黙って黙々と仕事をするのみです」

 

ーー同じメルセデスAMG製パワーユニットのユーザーでも、ワークスとその他ではドライバビリティなどに差があると言われていますよね。

「ハードウェアは別にして、それをコントロールするソフトウェアがものすごく重要なんです。メルセデスAMGなんかはそれを全て自分たちでやれるわけですよね。こうコントロールしたい、ああしたいというようなことを、彼らはクルマ全体としてやれる。その点ではカスタマーチームには差が出てしまいますよね」

 

ーー先日、メルセデスAMGに勝てるといった内容の新井さんのコメントが報じられましたが。

「そんなこと言ってないんだけど、書かれていましたね(苦笑)。ここまで書かれちゃうのかっていう感じですね。先日F1公式ウェブサイトのインタビューを受けたんですが、『開発は順調ですか?』って聞かれたから『まぁ色々ありますがスケジュール通り進んでいますよ』と答えて、『どのくらいまで進んでいますか?』というので『現状の各メーカーのレベルくらいには』という話しはしました。でもそういう漠然とした話しかしていませんよ(苦笑)。具体的な数値なんてまだ言えないですしね(笑)。

 勝負でメルセデスAMGに勝つとか負けるという話は一切していないんです。どこのメーカーもメルセデスAMGを目標にやっているだろうし、我々もそういうふうにやっていますよいうふうに話しただけなんですけど、ああいう風に曲解されてしまったのは私の英語力の乏しさせいですかね(苦笑)。しかも日本語になったらめちゃくちゃ書かれていましたしね、あれで大変な目に遭いましたよ。記事が出ちゃっているんでもう何を言ってもしょうがないし、大人しくしておくしかないんですけどね。

 しかし今年苦しんできたメーカーも来年このままということはないでしょうし、実際に性能差は縮まってきています。来年に向けてどのメーカーもメルセデスAMGのパフォーマンスを基準に開発を進めているでしょうし、我々もまずはメルセデスAMGを目標に開発していかないと勝負の土俵にも上がれないと思っていますよ」

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

 

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