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REPORT【報道】

【特別レポート】角田裕毅の2023年シート問題、夏休み中に決定か【プレミアム】

日本のF1

 

 まだレッドブルから正式発表がない状態の角田裕毅の2023年シートについて、最新の状況をお伝えしよう。

 

 すでに当サイトでお伝えした通り、レッドブルのモータースポーツアドバイザーでありレッドブルおよびアルファタウリの全シートを決定する権限を持つヘルムート・マルコは、夏休みの間に角田裕毅の2023年を決定すると明言している。チーム関係者に対しても「ベルギーGPまでには決めて、正式発表もしてしまいたい」と伝えているという。

 

 チームやレッドブルのマーケティング的な都合で正式発表がベルギーGP以降にずれ込む可能性はあるが、いずれにしてもマルコ自身はベルギーGPまでに決定することは明らかだ。

 

 フランスGPですでにこのように語っていたことから分かるのは、マルコがシーズン前半戦の角田の内容に満足はしているものの、100%満足はしていないということだ。もっと簡潔に言えば、決め手に欠ける状態なのだ。

 

 その背景には、アルファタウリのマシンパフォーマンスが相対的に低下し、ピエール・ガスリーですら中団グループで目立った走りができない状態になってしまったこともある。だからこそマシンにアップデートが投入されたフランスGP、そして夏休み前のハンガリーGPで中団グループ上位でキレのある走りを見せ、結果を残さなければならなかった。

 

 角田はマシンにポテンシャルがあったモナコGP、アゼルバイジャンGP、カナダGPでポイントを獲得することができず、スペインGPを最後に入賞が果たせていない。アゼルバイジャンはリアウイングの破損がなければ6位入賞が確実な状況ではあったが、モナコでは予選のミス、カナダではパワーユニットのペナルティ消化で最後尾スタートながら追い上げたものの戦略ミスとピットアウト直後のクラッシュで入賞争いのチャンスを逃した。

 

 それだけに角田自身もフランスとハンガリーの連戦では結果を残さなければという焦りに似た使命感が強かったように感じられた。フランスでは予選8位で入賞が確実な情勢だったが、1周目にエステバン・オコンに追突されてリタイア。絶対にポイントが欲しい状況だったからこそあそこで一旦引くということができなかったが、相手にペナルティが科されたインシデントとはいえ避けることができなかったわけでもなく、結果としては逆に評価を下げることとなってしまった。そしてハンガリーでは麻疹に原因不明の問題を抱え、良いところなく終わってしまった。

 

 ヘルムート・マルコとしても角田残留を決める決め手が欲しかったところだろうが、この2連戦ではそれは現実のものとはならなかった。

 

 

 では、角田は2023年もF1に残留することができるのか?

 

 結論から言えば、角田がシートを失う可能性はほとんどない。

 

 マルコは角田の速さを高く評価しており、今季前半の成績も決して悪くはない。角田もガスリーも入賞は3回。ガスリーはバーレーンでの入賞をトラブルで失っているが、角田もアゼルバイジャンは同様にトラブルがなければ入賞できており、アゼルバイジャン以降はガスリーも入賞はない。ポイントやランキングといった結果はチームの競争力に依存するものであり、そこだけで評価を下されるわけではない。

 

 レッドブルジュニアチームとしても、F1に昇格できるドライバーがいない。レッドブルのリザーブドライバーを務めるなど序列1位だったユーリ・ビップスが差別発言問題でその座を失い(レッドブルとの契約自体は残っている)、アルファタウリのリザーブを務め序列2位だったリアム・ローソンがレッドブルのリザーブやFP1出走などを担う地位に繰り上がったものの、2年目のFIA F2では目立った走りができておらず、スーパーライセンスポイントも40点に届いていない状況だ。届いていたとしても、角田を降ろしてまでF1に昇格させるほどの走りを今季も見せられていない。

 

 昨季F3王者のデニス・ハウガーも、名門プレマで走りながら自滅が目立つなどマルコの期待には添えていない。マルコの期待はすでに今季F3に参戦するアイザック・ハジャールに向いている。

 

 今F2でトップレベルの走りを見せている岩佐歩夢は、今季ランキング4位以内に入ればスーパーライセンスが取得可能になるが、マルコは2023年もFIA F2に参戦させチャンピオンを獲得させるつもりだとチーム関係者にも明言しているという。おそらく来季は岩佐がレッドブルジュニアチームの序列1位になるのだろう。今季のF2での走りだけでなく、レッドブルのシミュレーター作業も含めエンジニアからの高い評価を受けてのものだ。

 

 ハンガリーGP直前にセバスチャン・フェッテルが引退を表明したことで、フェルナンド・アロンソとオスカー・ピアストリのシートが動き、アルピーヌの1席が空いた状態になった。ハンガリーGP直後に突然明らかになったこの状況に対し、アルファタウリが影響を受ける可能性は低いだろう。マクラーレンのシートを失うダニエル・リカルドがアルファタウリに収まる可能性はなく、あるとすればむしろピエール・ガスリーがアルピーヌに移籍するという可能性の方だ。

 

 ミック・シューマッハのハース離脱とアルファタウリ移籍が報じられているが、これはもちろんハースとフェラーリの条件交渉における駆け引きとしてハース側が流しているものだろう。ハースがフェラーリとの技術提携によって成り立っているのは明らかで、パワーユニットやギアボックスなどカスタマーパーツの供給代金、マラネロの施設や技術スタッフなどの使用といった技術提携にかかるコストをフェラーリドライバーであるミック・シューマッハの起用によって割り引かれている。ハースがこれを手放してまで起用する実力と資金力のあるドライバーは見当たらず、ミック自身の成長がはっきりと見て取れる現状の中でミック以外のドライバーを起用する理由はない。

 

 

 つまり角田に取って代わるドライバーがいない状況であり、マルコがよほど角田に不満がない限りは角田がシートを失う可能性はない。マルコとしても角田を残留させたいが、決め手に欠くというだけの状況だ。

 

 それに加えて、レッドブルとホンダの関係値もある。レッドブルとアルファタウリにはレッドブルパワートレインズを介してHRCからパワーユニットが供給されているが、アルファタウリにはホンダがスポンサーとして付いている。つまりホンダがアルファタウリに資金を提供しており(実際にはパワーユニット代金と相殺されているはずだ)、その見返りとしてホンダのドライバーが起用されている状況だ。これはホンダが2021年限りで撤退する以前から角田のために敷いていたレールだ。

 

 つまりホンダとの関係値を考えれば、2025年まではアルファタウリの1席にはホンダが希望するドライバーが起用され続ける。アルファタウリがパワーユニット代金を支払ってでも自前のドライバーを起用したいということにならない限りは、角田か岩佐、もしくはHFDPでフランスF4やカート世界選手権に参戦しているドライバーたちの中の誰かがアルファタウリで走ることになる。

 

 現在のF2での走りや内容を見れば、岩佐にはF1に昇格する資質も充分にあるように見えるが、岩佐のスーパーライセンス取得が可能か否かは少なくとも夏休み明けの3連戦が終わらなければハッキリとはしない。その後はF2はアブダビラウンドのみであるため、この時点でランキング4位以内が確定する可能性があり、そうなれば岩佐のスーパーライセンス取得が可能になる。ただしランキング4位から10位まで15点差(3位から11位まで40点差)の大接戦であり、確定するかどうかはライバルたちのポイント状況にも依存するため不透明。いずれにしてもレッドブルとしてはアルファタウリのシート確定をイタリアGPの9月第2週まで待つことはできないだろう。

 

 現実的に考えれば角田が残留する可能性が極めて高い。レッドブルリンクを訪れたホンダおよびHRCの首脳陣とは、角田の処遇も含めたホンダとアルファタウリの来季以降の契約内容についても話し合いがなされたはずだ。角田の成績がこのような状況だからこそ、レッドブル側も駆け引きとして角田のシート決定をここまで遅らせているのだろう。

 

 レッドブル内での「決定」とは別に「発表」がいつになるかというのも問題だが、10月には日本GPが控えているため、通常なら日本人ドライバーの起用は日本GPへの集客効果も踏まえて夏休み明けあたりの時期に発表されるはずだ。ただし今年は日本GPの観戦チケットの売れ行きも好調であるため、考慮の必要はなさそうだ。仮設スタンドの増設と追加チケット発売となれば、それに合わせた発表のタイミングになる可能性もある。ただし2022年日本GPの開催にあたって日本政府には新型コロナ観戦対策を徹底する旨の開催計画書を提出してチーム関係者の入国許可(特別短期滞在ビザ発給)の保証を取り付けているため、入場者数はこれ以上増やすことができない可能性も高そうだ。

 

 いずれにしてもマルコとしては夏休み中に決定・発表したいという意向を持っている。その最後の一押しとなる走りがフランスとハンガリーでできなかったのは痛かったが、ホンダとの関係値を蹴ってまでF1に乗せたいと思うような選択肢が他にないことを考えれば、角田のアルファタウリ残留は既定路線であり、しかるべきタイミングで発表されることになりそうだ。

 

(text by 米家 峰起 / photo by AlphaTauri)

 

 

  • コメント ( 5 )

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  1. ManGok

    少しモヤモヤが晴れた気分です
    正式発表を楽しみに待ちたいと思います

    • MINEOKI YONEYA

      早めに決めてしまいたいのはみんな同じなのに、なかなか決定できないという(苦笑)

  2. turugi

    Motorsport.comの英語版記事の中に「舞台裏でクリアにしなければならない問題がある」と書かれていたので、決め手のことなのかなと思いました。

    みんなモヤモヤですね。

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