RACE【レース】

20140413-04

 

 10周を過ぎると、後方ではタイヤがタレたウイリアムズ勢がピットに向かい始めた。フェラーリ勢も12周目・13周目にピットインを済ませ、タイヤを上手く使うフォースインディア勢は15周目・16周目まで引っ張り、予選ではダウンシフトのトラブルでQ2で敗退を余儀なくされたセバスチャン・フェッテルも16周目までタイヤを保たせた。

 しかし、予選3番手を獲得しながらも前戦のペナルティにより13番グリッドからスタートしたチームメイトのダニエル・リカルドの方が勢いがある。

「僕のDRSが機能していないよ」

 フェッテルはストレートのスピード不足によりそう感じたようだが、それは彼の思い過ごしだったようだ。

 後方に付いたリカルドは、ハッキリとは口にしないものの、遠回しに自分を先行させるように無線で訴える。

「いつもこうやってタイムロスしているんだ」

「セバスチャン、ダニエルを先に行かせてくれ。彼の方が速い」

「分かったよ、ターン11のブレーキングで行かせるよ」

 フェッテルのタイヤはもう限界に達しようとしていた。

「ピットインすべきだ。もうリアタイヤがない」

「分かった、トルクマップ1、ボックスだ」

 ピットストップを終えたフェッテルに対して、「セバスチャン、主流は3回ストップ作戦だよ」とギヨーム・ロクランが伝える。後方スタートのレッドブル勢は、いずれもタイヤに優しいマシンのアドバンテージを生かして2回ストップ作戦に活路を見出す戦略だ。

 

20140413-05

 

 一方、1-2で独走するメルセデスAMG勢は本来のペースよりも抑えて走っているためにタイヤのタレは少ない。彼らは最初から2ストップ作戦を念頭に置いている。

 18周目、最初のピットストップを前にプッシュを始めたロズベルグがハミルトンとの差を縮め、DRSを使ってターン1でインに飛び込んだ。しかしその動きを察知していたハミルトンは、ターン1のアプローチで早々にこれを見切り、ブレーキング競争をするのではなくアウト側いっぱいから舵を切り、ターン2〜3に向けて最良の立ち上がり加速を得てクロスラインで悠々とロズベルグを再逆転してみせた。ロズベルグも無理なブロックはせず、2人はこのバトルを楽しんでいるようにさえ見えた。

 さらに翌19周目にもロズベルグは同じようなアタックを仕掛け、今度は2人ともややタイヤをロックさせながらアプローチしたターン1でロズベルグが前へ。そのままターン4までイン側を抑えきるが、今度はハミルトンがアウト側からサイドバイサイドで仕掛け、ターン6までに首位を奪い返した。ライバルたち全車がピットストップを終え、タイヤを使い切っても構わない状況に置かれた彼らは、伸び伸びとバトルを展開した。

 そして19周目の終わりにハミミルトンがピットに向かい、最初のタイヤ交換を行なう。

「ニコ、ここからDRSを使ってハードプッシュしてくれ。次のピットストップでミディアムに換えて、事前に話し合っていた通りの戦略で行く」

 タイヤのデグラデーションが大きく相対的にフレッシュタイヤの威力が強くなるがゆえに、2周後の21周目にピットインしたロズベルグはハミルトンの後方でコースに戻ることになった。ここからはソフトのハミルトンに対し、ミディアムのロズベルグは耐えるレースが続く。

「ニコ、ここはプライムタイヤで長いスティントになるぞ」

 3回ストップ作戦のウイリアムズ勢はやはりタイヤのタレが速く、25周目にはバルテリ・ボッタスが「可能ならもうピットインしたい」と訴えてピットに飛び込んだ。マッサも28周目にはセルジオ・ペレスとヒュルケンベルグに相次いで抜かれ、2回目のピットストップを余儀なくされる。

 

20140413-06

 

 フォースインディア勢は34周目・35周目まで引っ張ってミディアムタイヤに換え、予定通り2回ストップ作戦を敢行する。レッドブル勢も同じ周回に2度目のピットストップを終えた。

「ルイス、もう燃料は安心だ。リフト&コーストの必要はないよ」

「分かってるよ、僕はタイヤをいたわっているだけだ!」

 ハミルトンは燃費セーブの必要がないという無線の指示に対して、やや苛立たしげに応えた。しかし、それもいつものハミルトンだ。

 一方のロズベルグにとっては状況が好転していた。

「ニコ、ミディアムとソフトの差は予想していた以上に接近してきているよ」

 異なるタイヤを履く2人の差は、じわじわと広がり10秒弱にまでなった。

 しかしそんな矢先の40周目、ターン1にアプローチしたエステバン・グティエレスのインに、ピットアウトしたばかりのパストール・マルドナドのマシンが接触し、浮き上がったザウバーのマシンが宙を舞って破片をまき散らした。この事故を受けてセーフティカーが導入され、これを機にピットストップを残していた全車がピットへと向かった。

 メルセデスAMG勢もピットインし、ハミルトンはミディアムへ、そしてロズベルグはソフトタイヤへと履き替えた。レースは残り11周。レースは追う側のロズベルグにとって有利な状況になった。

「コーナーのエイペックスでかなりハンドリングがプッシュされるんだ。どうしたら良い? 僕はブレーキバランスは後ろ寄りにはしたくないんだ」

 ハミルトンは依然としてマシンに違和感を抱えていた。ここまで決して万全の状態で周回を重ねてきたわけではなく、純粋な速さという意味ではロズベルグに敵わないことも分かっていた。

 どのマシンもすでに燃費もタイヤも心配はなく、ギャップが縮まったここからチェッカーまで、11周の超スプリントレースが展開されることになる。それはハミルトンとロズベルグの2人にとっても同じこと。いや、彼らが本気で全開の走りを披露するのは、今シーズンこれが初めてのことかもしれない。(3/3に続く)

 

(text by 米家 峰起 / photo by Wri2)

 

 

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