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2017 T2 BARCELONA TESTING
【マクラーレン・ホンダ短期集中連載】①テスト総括「トラブルに翻弄され続けた8日間」

【マクラーレン・ホンダ短期集中連載】①テスト総括「トラブルに翻弄され続けた8日間」

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 マクラーレン・ホンダにとって2017年開幕前テストは散々なものだった。走行距離は全チームで最下位、タイムも低迷。ドライバーからもチームからも不満の声が噴出した。世間では「ホンダのせいでトラブルだらけのテスト」という印象だけが強く残った。

 

 しかし、信頼性、性能、政治という様々な要素が入り組んで、状況が正しく伝わっていないこともまた事実だ。

 

 2017年シーズンの開幕を目前に控えた今、マクラーレン・ホンダはどうなっているのか。様々な角度から、短期集中連載のかたちで事実をお伝えしたい。まだ明らかにされていない事実も多々ある。

 

 まず第1回目は、マクラーレン・ホンダのバルセロナ合同テスト8日間を改めて振り返り、整理しておこう。「ホンダのせいでトラブルだらけのテスト」というのは事実ではない。大前提として、ここを見誤り先入観で物事を見てしまうと、事実を掴むことはできない。

 

 

【テスト前半は旧スペックPUトラブル、後半は車体トラブルで大幅タイムロス】

 8日間のテストで起きたトラブルと失った時間を整理すると、以下のようになる。

 

20170314-11

 

 9〜17の数字が並んでいるのがテスト各日の時間軸(テスト開始の午前9時からテスト終了の午後6時までを表わしたもの)で、トラブル発生&対策に要した時間と、その内容をまとめた。グレーはホンダ、オレンジはマクラーレン側の問題だ。

 

 ホンダのパワーユニットにトラブルが発生したことも事実だが、それはテスト前半に使用された旧スペックに限っての話であり、開幕戦仕様のベースとなる新スペックは3日間でトラブルは発生していない。

 

 逆に、新スペックで本格的なテストに専念しなければならなかったはずの最後の3日間で起きたのは、マクラーレン製のターボパイプからの水漏れと、電源が突然シャットダウンするという問題。特に後者はまずパワーユニット側の問題を疑い車体ハーネスの交換を面倒がって最後に回したがために原因の究明が遅れ、1日で済んだロスを2日に及ばせてしまった。

 

 パワーユニットの信頼性不足に翻弄され続けたかのようなイメージがあるマクラーレン・ホンダの開幕前テストだったが、実際にはパワーユニットの問題は旧スペックでカタが付き、後半は車体側の問題を即座に解決できなかったことがこの結果につながったというだけのことだった。

 

 もちろん、この連載で後述するようにパワーユニットが新しい燃焼コンセプトを導入しているだけにその振動が水漏れやハーネス不良といった問題を引き起こした可能性もあるが、電源シャットダウンの問題は昨年のブラジルGPフリー走行3回目でもジェンソン・バトンのマシンに起きていたり、赤旗のうち1回はターン9の縁石にヒットした衝撃によるものであったことを考えると、そもそもマクラーレンのハーネスに弱い部分があったとも言える。冷却周りに関しても、昨年も冷却水充填の際の空気抜きが充分でなく、そこから空気と異物が混入したことでERSのシーリングを破壊するという問題も起きており、マクラーレン側のメカニック作業の質にも疑問が残る。パワーユニットをパッケージとして準備するのはホンダ側メカニックだが、これを車体に組み付けたり降ろしたりする作業や補器類を用意する作業はマクラーレン側メカニックの作業だ。

 

 これらがハードウェアの問題なのか、メカニックの組み付け作業によって起きた問題なのか、そのあたりはファクトリーに送り返された問題のハーネスやターボパイプを検査して究明しているはずだ(そもそもハーネスの問題自体を公表していないため、その究明された原因を明らかにすることはないだろうが)。

 

 いずれにせよ、バルセロナ合同テストで起きた問題は、それほど深刻なものではない。問題は、単純にマシンが遅いことだ。

 

 マクラーレンは「トラブルだらけ」というイメージを煽ることでそこを曖昧にしようとしているが、技術陣はこの「遅さ」を相当深刻に捉えている。

 

 その原因は、車体にもパワーユニットにもある。現時点では、パワーユニットの抱える性能不足の方が大きい。

 

 この集中連載の次回以降では、車体とパワーユニットの実状を解説していきたいと思う。

 

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【マクラーレン・ホンダ短期集中連載】掲載予定

 ①テスト総括「トラブルに翻弄され続けた8日間」

 ②車体分析「MCL32が抱える問題点……空力、冷却」

 ③PU分析・前編「完全刷新のRA617H、なんとかスタートラインに着いた段階」

 ④PU分析・後編「ホンダが直面する予想以上の難局と真実」

 ⑤チームを巡る政治「イメージを守りたいマクラーレンと弱腰のホンダ」

 ⑥オーストラリアGP予想「ザウバーとの最下位争いも覚悟」

 

(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, McLaren)

 

 

 

  • コメント ( 6 )

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  1. Tonookahid

    この短期連載、すごく楽しみにしています。

  2. T.ODA

    短期連載楽しみにしています。

    しかし、なぜホンダは公式会見で車体側のトラブルを発表しないのでしょうか。

    • MINEOKI YONEYA

      ここでホンダ側が言い返すと、本当に2015年のレッドブルとルノーみたいなメディア状での見苦しい泥仕合になってしまうから、グッと我慢し続けているんです・・・。

  3. shimose

    米家さん、ご無沙汰しています。下世です。
    HONDAのことになると、みんな力入りますよね。
    F1に限らず、アメリカでも国内の主要レースでも、ツーリングカーでも、ここ数年のHONDAは、スカッと強く無いですもんね。多くのファンが速くてカッコ良かったHONDAを知っていて、ついついあの頃は良かったモードになってしますんですかね?
    八つ当たり?なのかも知れませんね。

    • MINEOKI YONEYA

      ご無沙汰しております、下世さん。そうなのかもしれませんね、理想と現実があまりに違いすぎて、それが腹立たしくて怒りをぶつけて……。
      ホンダもいち企業ですから、いくらやりたくても人的予算的リソースが充分に確保できず、戦っている人たちにももどかしい部分もあるようですが……。

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