RACE【レース】

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 曇天の下に、ひんやりとした空気が肌を刺す。朝に降った雨のせいで濡れた路面は、午後になってようやく乾いてきた。ヘレスに放たれるエンジン音も、心地良く伸びやかに響き始めた。

 

 2014年、大革新を迎えたシーズン最初のテストは、最終日を迎えた。その午後にコース上を走っているのはメルセデスユーザーの4チームばかりで、唯一フェラーリだけがそれに伍する仕上がりを見せる。それ以外は充分な走行が出来ず、ルノー勢は午後2時で完全に姿を消してしまった。

 

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 日本のファンにとっては、小林可夢偉のF1復帰とケータハムでの54周が強く印象に残る。

 

 しかしその内実はERSの出力とエンジンのブーストを抑えての、実戦とはほど遠い走りでしかなかった。レッドブルとトロロッソに至っては一ケタ以上の周回数を走ることすら出来ず、特にレッドブルは車体側でも深刻な問題を抱えて抜本的な対策を迫られることとなった。

 

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 エイドリアン・ニューウェイは早々にヘレスを後にしてミルトンキーンズに戻り、ルノースポールのエンジニアも予定を前倒しして木曜に英国へ合流した。事態は極めて深刻だ。

 

 メルセデスAMGは2人のドライバーで最多の計132周。フロントウイングのトラブルで初日を半分棒に振ったことを受け、最終日の午後にはルイス・ハミルトンにもシェアさせる余裕すらあった。

 

 マクラーレンも新人ケビン・マグヌッセンが110周を走破し、終了直前の午後4時48分にターン10の濡れた縁石に足を掬われてクラッシュしたが、今の彼らにとってこの程度のロスは痛くもかゆくもないだろう。

 

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 さらにはメルセデスユーザーであるウイリアムズのフェリペ・マッサが最後にアタックを敢行してトップタイムを記録、フォースインディアのリザーブドライバーのダニエル・ジュンカデラもアタックで3番手タイムを記録した。タイムシートの上位はメルセデスユーザーで占められ、フェラーリだけが孤軍奮闘している構図だ。

 

 端的に言って、今年のこのヘレス合同テストではラップタイムは全く意味を持たない。最終日には比較的伸びやかなサウンドが響くようになってきたとはいえ、どのチームもエンジンを最高回転数の1万5000rpmまで回してなどいないし、ターボの過給圧やERSのブーストレベルなども、実際にこのシステムが持っている実力からは遠いところで運用している。まずは走り、データを集めることが先決だからだ。そのためには、不用意な負荷は与えないように恐る恐る走らなければならなかったのだ。

 

 しかしこの4日間、常にメルセデスユーザーがラップタイムでも周回数でも上位につけてきた。だからこそ、テスト内容においても彼らが他チームを圧倒している。重要なのはむしろそちらの方だ。

 

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 4日間のテストを終えて、これほどまでに3パワーユニットメーカーの明暗がはっきりと分かれてしまうとは、誰が予想しただろうか。ロジスティクスのスケジュールを考えれば、次のバーレーン合同テストまでの猶予は2週間しかない。次のバーレーンでは、開幕までの時間を考えればもう失敗は許されない。そして仮にルノーが完璧な対策を施してきたとしても、ユーザーチームがヘレスで失った4日間は返っては来ない。

 

「こら大変やねぇ……」

 

 ため息をつくように可夢偉が言った言葉が、いつまでも脳裏にこびりついて離れない。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Wri2)

 

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