RACE【レース】

20140911-01

 

 今季は不振が続いているロータスだが、イタリアGPではケータハムにも後れを取る場面すらあるなど、いつもにも増して苦戦を強いられた。ロマン・グロージャンの担当レースエンジニアを務める小松礼雄エンジニアにモンツァでの不振について聞いていくと、話は今シーズンの苦悩の理由へと発展していった。

 

ーーイタリアGPではかなりロータスが苦戦していましたが、超高速のモンツァではルノーのパワーユニットの不利は大きかったですか?

「それもありますけど、レッドブルやトロロッソはちゃんと戦えていましたからね。いや、ウチはロードラッグのエアロパッケージがダメなんです。それは以前からなんで、今週も苦しいだろうなということはもちろん来る前から分かっていましたよ」

 

ーーそれにしても、普段チームメイトに先行していることの多いロマン・グロージャンが珍しく大苦戦していましたよね。

「それは今回、いろんな要因があったんです。FP-1は(シャルル・ピックがドライブしたので)乗っていなかったし、FP-2の出だしで空力に問題があってハイフューエルの走行しかできなかった。で、FP-3では1周目に縁石に乗り上げた時に何か空力パーツが壊れて全然本来の性能が出てない状態で走っていたし、ERSの水圧系の問題もあってほとんど走れなかったんです。だからQ1でほぼぶっつけ本番のような状態で、完全なアタックができなかったんですよね」

 

ーー今週はほとんどロクに走れていなかったんですね。

「そうですね……酷いもんですよ、ホントに。チームに対してかなりいろいろと文句は言ってるんですけどね」

 

ーー問題はルノーのパワーユニットだけじゃない?

「ルノーがどうのこうのというより、クルマが悪すぎるんです。素性からして全然ダメなんだけど、そのダメなのを良くするための人材もリソースもないんですよ」

 

ーーチームの財政難で、かなり人材も減ったと聞いています。

「おカネは全くないし、すごく優秀なエンジニアたちがいなくなっちゃいましたからね。ウチから抜けたエンジニアは、メルセデスAMGの空力責任者とCFDの責任者、フェラーリの空力責任者、ウイリアムズの空力責任者になってるんですよ。それからマクラーレンのスポーティングディレクターも去年までウチにいた人間ですよね。5人もスゴい人が一気にいなくなったわけです。それでまともなクルマができるわけがないですよね。

 ホントに、情けないですよ。ラップタイムを見てもらえれば、どれだけ酷いか分かるでしょ?」

 

ーーロマンのモチベーションは大丈夫?

「現状を受け入れないことにはどうしようもないですからね……。その上でできることといえば、それこそチームメイトに勝つことくらいでしょ? そこにモチベーションを見つけ出すしかないですよね」

 

ーーロマンは去年の後半戦に大きく成長したと太鼓判を押されていましたけど、大人になったからこそ今も戦えている?

「これが2年前とかに起こっていたら、彼は完璧に終わっていたと思います。あの積み重ねがあったからこそ、今年どんなに酷くてもきちんと戦って、予選でもチームメイトに対してほとんど勝ってるじゃないですか? その一方でパストールなんてクラッシュしまくっているでしょ? 2年前のロマンだったら、あんなふうになっていたと思います。ロマンもパストールも、速い時は速いけど上手く行かないときはああなってしまうというタイプのドライバーだったけど、ロマンは去年の後半戦に成長して安定してきたから、それが今に生きているんだと思います」

 

20140911-02

 

ーー小松さん自身のモチベーションは?

「う〜ん(苦笑)。どんなポジションを走っていたとしても仕事としてやるべきことは変わらないわけだけど……今年のクルマの素性として、どこが悪いというのはデータを見れば分かっているです。でも、それを良くするための人材もいないし、おカネもないというのがツラいですね。それを良くするためには何をどうすれば良いのかということが把握できていない。だから素性の悪さが一向に直らない。そのためには人材とおカネが必要なんです。

 みんなちゃんと定期的にアップデートを持ってきているけど、ウチは雀の涙ほどのアップデートしかない。だから前に進んでいかないんです。あとはもう、現場のエンジニアリングだけではどうすることもできないレベルの話ですから。現場でやってる人間は、あれだけ活躍した去年と同じ人間なわけですからね」

 

ーーそう簡単に打開できるような状況ではないんですね。となると、来年に向けても悩みは深いですね。

「全然。来年良くするためには今年のクルマをどうすれば良くできるのかということを把握してなきゃいけないし、それが今はできていないし、それが分かったとしても開発をしてパーツを作るためのおカネもないし。本当に、チームオーナーがもっと資金を投入するとか、新しいスポンサーが見つかるとかしない限り、この状況を打開するのは難しいと思いますよ。

 今年なんか、もう残りのレースはテストセッションみたいなもんです。でも、試すものがあればまだ良いけど、テストセッションにするためにはCFDにかけたり風洞にかけたりしてパーツを作って持ってこなきゃいけないんですよ」

 

ーー小松さんにとっても、このままじゃこのチームに対する気持ちが揺らいでしまいそうですね?

「このガレージにいる人たちには愛着はありますけど、オーナーには全く愛着ゼロですよ。ホントにコンクリに詰めてドブに沈めたいくらい嫌いですよ(笑)。なんにも分かってないし、多分ビジネスも分かっていないんでしょうね。自分の投資している会社をよくここまで酷くできるなと思いますよ。去年の後半の時点で(このチームの予算規模からすれば)あれ以上良くなることはないって分かっていたわけだから、良いビジネスマンだったらあそこで価値が高いうちに売り抜けておけばまだ良かったのに、こんな状況だと誰も買わないし、買ったとしても超安く買い叩かれちゃいますよね。これじゃ能力のある人材は誰も来ないし、ジェニーの人たちがこのチームをどうしたいのか、本当にワケが分からないですよ。この間なんて、『ここに来ているパーツの数が足りないのか、クオリティが足りないのか』って言うから、『この予算で何を期待してるんですか?』って聞いちゃいましたもん(苦笑)。『(足りないのは)その両方だ』って。『この予算でポイントが獲れると思ってるの?』って聞いちゃいましたよ」

 

ーーそんな状態なんですか?

「彼らの問題は、去年ウチらが上位で健闘していたのが彼らのおかげだと思ってることなんです。去年はそれ以前の積み重ねの残りの勢いであそこまで行けただけで、本当はあの予算であの成績というほうがおかしいんです。でも彼らは、あの予算であの結果が出せるのが当たり前だと思ってしまった。だから今年になって『なんでこの予算で結果が出せないんだ』ということになる。『出せるわけないじゃん!』って感じですけどね。去年だって彼らがきちんと投資していれば、キミ(・ライコネン)を失うことだってなかっただろうし、選手権だって最後までちゃんと戦えたと思いますけどね。彼らは本っ当に何も分かってないんです……」

 

20140911-03

 

(text by 米家 峰起 / photo by Lotus)

 

 

 

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Comment

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  • コメント (4)
    • mitsunishira
    • 2014年 9月 12日

    これだけで今月分の会費に相当するくらいの読み応えのある記事でした!

    • ManGok
    • 2014年 9月 12日

    そんなに酷い状況なんですね
    リリースや結果だけでは分かりませんでした

    • MINEOKI YONEYA
      • MINEOKI YONEYA
      • 2014年 9月 13日

      やっぱり、どんな人たちにもそれぞれの戦いがありますね。小松さんも良いチームで戦わせてあげたいですね。

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