2014 Rd.8 AUSTRIA

20140625-01

 

 フォースインディアのタイヤ運用を担いレース戦略に深く関与している松崎淳エンジニアに、カナダGPに続いてオーストリアでも再びタイヤ戦略によって好走を見せた要因を聞いた。さらに、カナダGP決勝後のスチュワード審議についての新情報も明かしてもらった。

 

ーー今日は路面温度が高くなりましたが、フォースインディアとしてはまたタイヤ戦略で上位に浮上して6位・9位を得ましたね。

「第1スティントの時点ではタイヤのデグラデーションやマネージメントの面で予想と少し違っていた部分もありましたけど、第2スティントで上手く調整をして最終的には大丈夫でしたね。ニコの方は少し調整しきれなかったかなという部分はありましたが……」

 

ーーニコは最後にダニエル・リカルドに抜かれてしまいましたね。

「レッドブルはコーナーが速かったと話していましたね。最後はちょっとタイヤも厳しかったというのもありますが、あのくらいのデグラデーションで簡単に抜かれてしまうのではダメですね。あれだけのドライバーですから、本来ならあんなところでそう簡単には抜かれないはずなんです。それが抜かれてしまうというのは、やはり彼らがもっと運転しやすいようにしてあげられなかったことが我々の反省点ですね。そこは我々ももっと精進しないといけないですね」

 

ーータイヤのウォームアップには問題なかった?

「ウォームアップよりもタイヤのバランスを前と後ろで合わせてやるのに苦労しましたね。温められないわけではなくて、前後のピークを合わせられなかったんです」

 

ーーフロントのタレとリアのタレの進み具合が違った?

「そんなところです。先ほど話したように路面コンディションが予想と違ったので、それをレースエンジニアと連携しながら合わせ込んでいったわけですけど、2台を比較するとチェコ(ペレス)の方が上手くできたということですね」

 

ーーここは右フロントが厳しいんですか?

「いや、リアですね。もちろんドライバーはアンダーステアだっていうんですけど、僕の理解ではカギになるのはリアタイヤです」

 

ーー前回はドライバーの好みで戦略を分けたということでしたが、今回2台で異なる戦略を選んだのは?

「狙いはありました。チェコの方はその狙い通りにいきましたね。ニコの方も狙い通りに行きかけていたんですが、(タイヤのタレを)上手く合わせきれなかったですね」

 

ーーチェコのソフトタイヤでスタートするというのはギャンブル的な戦略だった?

「いや、充分コンサバな戦略だったと思います。もっとアグレッシブな戦略を採ることもできたんですが、わりと堅実にポイントを取りにいったつもりです」

 

20140625-02

 

ーー前回のクラッシュの後だからか、メルセデスAMGとのトップ争いも今回は大人しめだったように見えました(笑)。

「それはちょっとコメントを差し控えます(苦笑)。でも、普段通りに走っていましたし、それで実際に問題はなかったでしょ? それが事実を物語っていると思います。

 ウチのチームとしては、今回提出したテレメトリーのデータを持ってスチュワードのところに行っていたら、ああいう裁定にはならなかったかもしれないと考えています。もちろん僕がフェリペ(・マッサ)のエンジニアだったら感情的になったでしょうし、フェリペもロブ(・スメドリー)もフェラーリ時代に一緒に仕事をした友人なんで、気持ちは分かりますけどね(苦笑)。同じデータを見ても立場によって解釈の仕方が違うでしょうから、何とも言えませんけどね。ウチとしては(故意の事故ではないという)充分な論拠があったことは事実です。あの裁定の裏側には過去の彼の振る舞いが影響したのかもしれません」

 

ーーカナダのレース後の審議にはデータは提出していなかったんですね?

「あの時は審議に呼ばれた時間までにデータを用意することができなかったというのもありますし、ウチとしては『当然向こうがペナルティを受けるだろう』と安直なリラックスしたムードで行ったんですね。それが逆にペナルティを受けてしまったので、どうしよう?という感じだったんです(苦笑)。正直なところ、データなんて準備する必要などないと思っていたんですよね(苦笑)。あれが11番手争いだったらあんな裁定にはならなかったでしょうしね」

 

ーーウイリアムズとフォースインディアの強いサーキットというのはほぼ同じだと思うんですが、それぞれのマシンの特性は似ている?

「それぞれの強いところ、弱いところというのは結構ハッキリと違いますね。どこがどうというのはあまり詳しく教えられませんが(苦笑)、ウチはその弱点をもっと潰していかないといけませんね。モントリオールでは我々だけが1ストップ作戦をして、外から見れば良いポジションにいたように見えたかもしれませんが、予選結果を見て頂ければ分かる通り、カナダで起きなかったこと(ウイリアムズの台頭)が今週ここで起きたわけではないんです。

 今週は単純にクルマの速さが足りませんでしたね。コースの特性とクルマの特性、その両方のバランスがウチのクルマにとっては取りにくいサーキットだったんですね。ウチはパワーユニットが良いですから、全部ストレートだったら良いんですけど、それじゃ1周戻って来られませんから困っちゃいますよね(笑)」

 

ーー今回ウイリアムズがタイヤのデグラデーションにあまり苦しまなかったのはどう見ますか?

「決勝重視のセットアップをしたかどうかは分かりませんが、彼らは抑えて走ったんじゃないでしょうかね。優勝できる速さがあったように思いますけどね。チーム内部事情はよく分かりませんが、(アンダーカットされるのを承知で即ピットインしなかったのには)なにかあったんでしょうね。そうしてくれているうちにウチもウイリアムズに対して弱いところ、マクラーレンに対して弱いところをもっと強化していかなければいけませんね」

 

ーーマシンのアップデートはなかなか進んでいない?

「今回持ち込んだ中にも良いもの(新型ノーズ)があったんですが、決勝には入れませんでした。フリー走行で試してパフォーマンスは確認できたんですが、耐久性の不安があったので実戦使用は断念したんです。でもウチのチームも少しずつ進歩していますから」

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

 

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