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REPORT【報道】
【小林可夢偉・開幕直前ロングインタビュー】「今年F1に乗れないなら、レースを辞めようとさえ思ってた」(1/3)

【小林可夢偉・開幕直前ロングインタビュー】「今年F1に乗れないなら、レースを辞めようとさえ思ってた」(1/3)

報道記事

20140308-01

 

 3月を迎えたバーレーンは、僅か1週間で驚くほど暑くなった。薄っすらとエアコンの効いたケータハムのホスピタリティブースで向かい合った小林可夢偉は、こちらの目を真っ直ぐに見据える。

 

「今さら聞くことなんか、ある?(笑)」

 

 可夢偉は冗談めかして、開口一番そう言った。

 

 1年ぶりのF1復帰が決まってからというもの、彼のテストを追いかけてきた。だからテストの足取りはよく分かっている。

 

 しかし彼がF1から離れていた間のF1復帰までの道のり、そしてこのF1復帰への思いは、まだどこかぼやけた像しか結べていないような気がしていた。おそらく、彼のF1復帰を待ち望んできたファンの人たちも、分かったようでいて、どこか釈然としない部分があるのではないだろうか。

 

 強い決意を秘めた最後の挑戦。

 

 だからこそ、そのシーズン開幕を前に、彼がまだ明かしていない部分と真正面から向かい合い、彼の本音を聞いておきたかった。きちんと語っておいてもらいたかった。

 

 F1復帰までのことを聞きたい。そう伝えると、可夢偉は落ち着いた声で話し始めた。

 

*  *  *

 

ーー元々はザウバーと交渉をしていたわけだけど、その時点ではケータハムと話をしていたわけではなかった?

「してないですね」

 

ーーで、12月中旬にザウバーとの交渉が破談になって、ケータハムと話をしにいった?

「まぁ、最後に空いてるのはそこしかないなって言うて。その前にフェラーリをどうするかっていうのもあったんやけどね。フェラーリからは『絶対に行くな』とまで言われてたから(苦笑)。『ケータハムに行ってもお前にとって碌なことはない』って親切にもアドバイスしてくれて」

 

ーーそれでもWEC(世界耐久選手権)のフェラーリじゃなくてF1に戻りたかった?

「いやぁ、なんか、安定した人生っていうのに楽しみを感じなかったし……」

 

ーーオジサンになるまでずっとフェラーリのGTに乗って、みたいなのは嫌だった?

「実際、今年F1に乗られへんかったらレース自体やめようかなって思ってたくらいやから。そのくらいの気持ちやったから、そこ(フェラーリからのオファー)には何の未練もなくて」

 

ーー1年離れたことで、F1への思いがそれだけ強くなっていた?

「そう。それに、今の方がもっとやれる自信もあったし」

 

20140308-02

 

ーー元々はザウバーに行くつもりで、でもケータハムに乗るとなれば、チームとしてのランクは下げることになるわけじゃない?

「まぁね。元々は下がらない予定やったんやけどね(苦笑)」

 

ーーそれでもF1に乗りたいという気持ちは強かった?

「まぁ、乗るしかないでしょ?」

 

ーーザウバーとの交渉が終わって、ケータハムとのコンタクトは?

「まずメールで連絡したら『来い』って言われて。『ほな行くわ』っていうて行ったんですよ、リーフィールドに。いつやったかもう覚えてないけど、記事見たら分かるんじゃない?(12月19日に訪問)」

 

ーー年末にはオーロラを見に行くと言って突然旅立ったわけだけど(苦笑)、あの頃の状況というのは?

「いや、もう願うしかなかった。トニー(・フェルナンデス)やシリル(・アビテブール)とはもう話をしてて、『待っとけ』って言われて。でもうクリスマスを過ぎると会社(チームのファクトリー)は閉まってるでしょ? だからやることもないし、年明けの営業再開まで待つしかないから。ああいう人らは年末はしっかり休むから(苦笑)。

 で、あの時はたまたま個人スポンサーとアメリカに行く予定やったんですよ。でも突然その人が来られるのが2日遅れることになって、僕だけ先に行くことになったんですよ。で、何もせずに2日も待っとくのもなんやから、ほな(オーロラに)ちょっと願いに行こかと思って。ホンマに成田に行く途中に『オーロラでも見に行こか』って決めて(笑)。だから何の服も持たずに行って、めっちゃ寒かったっていうね(笑)」

 

ーー“願掛け”っていうのが小林可夢偉らしくない感じがしたんだけど、そんな背景があったんだ?

「願掛けじゃなくて、なんかせなあかんわ、って思ってね(笑)」

 

「GTに乗ってみて、やっぱり自分が戦うべき場所はF1なんやなって思った」(2/3)「美しくなくていい、泥臭くでも殴ってでも自分のやり方で突き進む」(3/3)に続く)

 

(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, Caterham)

 

 

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