REPORT【報道】

20140308-03

 

 小林可夢偉にF1復帰までの道のりと、このF1復帰への思いを聞くロングインタビュー。「今年F1に乗れないなら、レースを辞めようとさえ思ってた」(1/3)に続いて、チームとの合流と初テストを聞くと、可夢偉はフェラーリのGTに乗って改めて自信を持ったというその根拠とWECでの苦悩を明かした。

 

*  *  *

 

ーー年明けの1月6日に「今週が勝負」ってツイートしていたよね。

「いや、そっから毎週毎週『今週決める』って言われてて、それでも全然決まらへんっていうのが続いて」

 

ーー1月10日のエントリーリスト発表までに何か目処が立つというようなことではなかった?

「なんもないよ、ほんまになんもなかった」

 

ーーでもかなり早い段階から「小林可夢偉とマーカス・エリクソンで決定」みたいな記事が出ていたよね?

「なんでああなってるんか、俺にも分からへん(苦笑)。まぁ、フィンランドから出てたでしょ、確か? だから、シートを争ってるところから(駆け引きのために)出てんのやろなと思てたけどね、多分」

 

ーーそこから1月21日の発表までは?

「なんもしてない。何もできないし(苦笑)。ホンマに発表の日までファクトリーにも行かれへんかったからね。前の日に『契約するから来い』って言われてイギリスへ行って前乗りしてるのに、チームの人にも内緒やからって、ずっとホテルに押し込められてじっとしてたんやもん。『ホンマにぃ? この1日、大事じゃないん?』って思いながらね。『あと1週間でクルマ走るんやろ!?』みたいな(苦笑)。それで当日ファクトリーに行って発表、っていうね」

 

ーー待ってるのはツラくなかった?

「いやまぁ、みんなが風俗行って待合室で待ってるのと同じようなもんですよ(笑)」

 

ーーヘレスでF1のコクピットに戻ってきたあの瞬間は、どんな気分だった?

「いやぁ……気持ち悪かったよね、エンジンのバイブレーションで頭がすごく揺れて(苦笑)。F1ってこんなんやったっけ?って思ったけど(苦笑)。

 マジメな話をすると、まずタイヤが見えるっていうことに興奮しましたね。『タイヤってこんなに見えるんや!?』ってビックリした。タイヤがロックした時ってこんなんなんや、って久々に感じましたね。コクピットから見える風景っていうのがね、全然違うんですよ、やっぱり。

 残念ながらあの時はスピードはそんなに出せなかったけど、それでも高速コーナーのダウンフォースなんか『これで落ちたん?』っていうくらいグリップするなっていうのは、GTにはない久々の感覚でしたよね」

 

20140308-04

 

ーーこの新しい環境にはもう慣れた?

「慣れてへんて言うてないでしょ、僕? 慣れるも慣れへんも、初めからそんな感覚は一切なかったから。スルッと来てそのまま普通に仕事してた。まぁ、ここで働いてるヤツをたくさん知ってたっていうのもあるしね。元トヨタで一緒に働いてた人が多いから。だからね、“慣れる慣れへん”とかいう話ではなかったんですよ」

 

ーー馴染むための工夫とか努力というのは特になく、自然体でそれができているということ?

「うん、特にない。チームも僕のことを分からないといけないし、僕もチームのことを分からないといけないけど、それは慣れるっていうのとは違う。何に慣れたらええんか、僕にはイマイチ分からへん。ホンマに僕にはそういう感覚がないんですよ。

 てゆうかね、そういうことを言うてたらそれはF1チームとは違うと思う。(ロータスからマクラーレンへ移籍した)エリック・ブリエを見て頂いたら分かるでしょ?(苦笑) あれがスタンダードの世界なんですよ、F1って。その感覚でやれへんかったら、この世界では負けると思うよ。そんなこと気にしてたら生きていかれへんし、そんなところで遠慮してたらレースになる前にクビになってると思いますよ、『お前仕事できひんな』って言われて。

 “慣れる慣れへん”っていうのはね、日本人的な感覚なんかなっていう気がする。そうじゃなくて、入っていって仕事をするのが当たり前であって、そんな意識すら無駄やと思う。僕は仕事しに来てるんやから。それやのに『慣れへんからここイヤや』なんて言うてたら子供みたいでしょ、プロじゃないですよそんなの。F1ってそんな次元じゃないってことです。

 就職活動してこの会社に採用してもらってこの会社に馴染めへんなっていうんじゃなくて、自分から『ここで働きたい』っていうてここに来てるのに『慣れへんなぁ』っていうたらおかしな話でしょ(苦笑)」

 

ーードライバーにとってF1ってどのくらい魅力的なものなの?

「米家くんは仕事しててどう思う?」

 

ーー他のカテゴリーとは何もかもレベルが違うし、華やかさもあって僕は好きだけど……?

「いやね、僕はF1の現場が好きとかそういうんじゃなくて、去年F1から離れてみて『全然まだ戦えるのに俺ここでなにしてんねやろ?』っていう気持ちが大きかったんですよ。

 F1を休んでGTに乗って、F1ドライバーがいきなりGTに乗ったってだいたいあかんやろ、みたいな目で見られるわけですよ。でもね、結果的に一番速かったのは俺やし。別に何も(特別な準備は)してへんのに、フラフラ〜っと乗って誰よりも速かったんですよ。それもコンマ何秒とかじゃなくて1秒単位の世界(差)やからね。

 逆に、速すぎて怒られるんですよ! いや、ホンマに(苦笑) 無線で『SLOW DOWN〜』っていうのも何回も聞いたし、真剣に怒られたことも2〜3回あったし。僕に対するチームオーダー、すごかったから。こらちょっと自分が戦うとこじゃないな、っていうね。

 そんな自分を見てると、やっぱりまだ自分が戦うとこってF1なんかな、って思ったんですよね」

 

ーー僕らが見ている結果と実際は違ったんだ? バリバリの若いドライバーとしてはそれでは満足できなかった?

「いや、バリバリっていうか、これからドライバーとして一番脂が乗る時期やと思うんですよ。ドライバーとして一番良い時。そんな時期にね、自分が乗ったら一番速いって分かってる場所でもう1年乗るよりは、とりあえずどこでもええからF1で、レベルの高い世界でやってみてもいいんじゃないかなって。そこで最後に気持ち良くF1を続けられるか、F1を辞めるのか、決めたいなって」

 

「美しくなくていい、泥臭くでも殴ってでも自分のやり方で突き進む」(3/3)に続く)

 

(text by 米家 峰起 / photo by Caterham)

 

 

Related Articles

Comment

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. コメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

Recent Post【最新の記事】

Calendar【日付で記事検索】

2020年7月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun
« Jun    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031