REPORT【報道】

20140428_HONDA-02

 

 2015年にF1に戻ってくるホンダに対しては、ファンの間でも様々な期待と不安が入り混じっていることだろう。マクラーレン・ホンダとしてF1に復活し、果たしてどれだけのパフォーマンスを見せられるのか? またすぐに撤退という道をたどるのではないか?

 

 その背景には、今のホンダF1プロジェクトを取り巻く状況が見えてこず、パワーユニットの開発状況もマクラーレンとの関係も、何もかもが不明瞭で漠然としていることが理由にあるのではないだろうか。

 

 そんな中、FIAからの要請によって中国GPのFIA会見に出席することとなったF1プロジェクト責任者の新井康久氏(本田技術研究所・専務執行役員)にホンダF1プロジェクトの今を詳しく聞いた。

 

ーーメルセデスAMGがターボのコンプレッサーとタービンを前後別々にレイアウトしていることが明らかになりましたが。

「我々も報道を見て知りました。へぇ〜、そういう方法で来たのかと思いました。まぁレイアウトに関してはそれぞれが悩んだと思いますし、考え得る方法のうちのひとつのパターンで来たんだなという感じです。

 ものすごく高温のエンジン排気が入って回っているタービンの、すぐその横に(MGU-Hの発電用)モーターを配置するというのは、普通では考えられないですよ。高温になるとモーターの磁石は減磁してきちゃいますからね」

 

ーールノーも検討はしたものの断念したそうですが、メルセデスAMG方式の難しさというのは?

「ターボとコンプレッサーを別々に配置すると、それらをシャフトでつながなければならない。回転数が低ければ簡単なんですが、高速で回転する長いものを設計するというのは非常に難しいんです。だからシャフトの軸長は短い方がいい。そうするとモーターを熱い環境に置かなきゃいけないというジレンマに陥るわけですが」

 

ーーホンダとしてはその方式は採用しない?

「我々はまだ絞り込んでいないので、いろいろ検討している段階です。その中で想定のスペックに到達し得ないもの、成立できないものを絞り込んでいくわけです。それは大きさもそうですし、出力もそうです」

 

ーー重量面も最低重量145kgを達成するのは大変だと言いますよね。

「そうですね、努力はしていますがまだまだ全然厳しいですね。しかし軽くしないとクルマ全体として不利になってしまいますからね。重量を減らすのは簡単なんですが、その分壊れてしまうリスクは高くなります。

 今年は年間5基で、来年は年間4基。今年参戦しているメーカーは今年の実戦データを見た上でその対策を施すことができますが、我々は何もデータがない状態でそこに臨まなければならないわけですから、安全性をどこまでとるかが悩みどころなんです。確実に年間4基で済まそうと思うと、結構安全マージンをとった設計をしなければならないけど、そうすると重くなる。未知な部分があるのに軽くしなければならないというのはすごく難しいですね。

 参戦が1年遅いから有利だと言われますが、全然そんなことはなくて、実戦で走れない不利は大きいです。すでに参戦しているメーカーは毎戦300kmを、それもかなり厳しい状況で走っているわけですからね。もちろんパワーユニット単体でベンチテストはしますが、実戦をやったことがなければそのテストと実戦をコラレーションできません。いくらテストをやっても、そのベンチテストで決めたモードやテストの仕方が実戦状況と会っているかかどうかを検証することができないわけです。いざ実走してみると『あれ?』ということだってあり得る。そうなると、『もう少しマージンを取って作っておくか』というようなことになる。そこが課題だと思います」

 

ーー最初にまず性能優先で軽量に仕上げておいて、あとで信頼性向上のための改編として対策をとっていくというような方法は考えない?

「まずきちっとレースを走り切るものを作るのが最優先だと考えています。パワーユニットを供給するという立場からすると、そんな(完走できないものを供給するという)無様なことはできませんから。

 壊れたら残りの3基で戦わなければならなくなるし、もっと厳しくなる。5基目を追加するとペナルティでチームに迷惑をかけることになる。そうなると、設計屋としては意地でもちゃんとしたものを作るぞという気になりますよね」

 

ーー従来の規定ではエンジンが壊れるというとピストンがボアを突き破ってブローするとかクランクシャフトが折れるというようなトラブルでしたが、現行の規定ではトラブル対策として重くしなければならないというのはどういう部分なんでしょうか?

「クランクシャフトのような“動く部分”に振動や摩耗が始まった時にブロックにクラックが入って壊れてしまうかもしれないし、そういう箇所をしっかりと作らなければいけないというのはこれまでと同じです。例えば油圧が落ちたとかクラックが入った時点でセンサーで感知して止めますから、おそらく激しく壊れてしまうようなことはないと思います」

 

ーー回転数が低くなった分エンジンブロックを薄くするというようなことはない?

「それはないですね。1気筒あたりの出力はそんなに変わりませんから。ブロックはまず燃焼圧を支えなければならない。それがピストンとコンロッドに伝わってクランクシャフトを回すわけですが、結局のところ1気筒にかかる圧力というのは燃焼圧でいうと相当高いですからね。むしろ今までNAだたものがターボで吸気を過給して押し込んでいますから、1.5倍くらいです」

 

ーーということは、細かな部分で少しずつ軽くしていくしかない?

「もうすでに軽くしたつもりで色々と検討はしたんですが、なかなか重量が下がらないんですよね……そういう厳しい状況ですが、そういうことを言ってもしかたないので、シーズンが始まるまでにしっかりと仕上げたいと思っています」

 

ーーMGUのコンポーネントをマクラーレン側が担当するという噂もありますが?

「そんなことは多分ないでしょうね、あり得ないです(苦笑)。パワーユニットをICEとMGUに切り離して考えるということ自体が、一般論としても考えにくいですし、どうしてもやりたいっていうのならやってもいいですけど(苦笑)、無駄だと思いますよ。ハードウェアそのものは開発できるとは思うんですが、制御技術の観点で言うとICEと一体となってエネルギーマネージメントしていかなければなりませんから、それを別々に開発するメリットはあまりないと思いますね。やってやれないことはないけど、相手とのやりとりがものすごく複雑で面倒になると思います」

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

Related Articles

Comment

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. コメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

Recent Post【最新の記事】

Calendar【日付で記事検索】

2020年7月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun
« Jun    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031