REPORT【報道】

20140423-21

 

 エンジン音に対する不評を受けてエキゾーストシステム改良による対策が議論されているが、抜本的な変更は難しいと思っておいた方が良いだろう。

 

 そのためにはまず、今年のF1エンジン音がなぜ魅力的でないのかを理解すべきだ。

 

 理由は2つある。ひとつは(1)甲高い音でないことと、もうひとつは(2)音量自体が小さいことだ。

 

 (1)については、回転数が低く制限されたために起きている。これまで最大18,000rpmだったものが15,000rpmに制限された上、実際にはどのメーカーも10,500rpm〜12,000rpmしか回していない。これは、燃料流量制限が10,500rpmまではリニアに上昇していくよう設定されているが、10,500rpm以上は100kg/hのままであり、「それ以上回しても回転数が上がった分だけフリクション(摩擦)によるロスが発生してパワー効率が落ちる」(ルノー徳永直紀テクニカルディレクター)ためだ。

 

 メルセデスAMGなどは12,000rpm前後まで回しているが、これは「シフトアップした後に回転数が下がりますが、エンジンのパワーバンド特性によっては10,500rpmでシフトアップしてしまうとパワー特性の厳しい回転数につないで上げていかなければならなくなり、効率が悪化する。そのため、フリクションロスは覚悟の上で10,500prm以上にある回転数まで引っ張ってからシフトアップする方が結果的に効率的になることも考えられる。それはパワーユニットの特性とギアレシオの組み合わせによって変わってくるでしょう」と徳永エンジニアは語る。

 

 とはいえ、いずれにしてもICE(内燃機関エンジン)自体の回転数は最高18,000rpmから10,500〜12,000rpm程度に下がっており、何をどう工夫したとしても、もう甲高い音は期待できないというわけだ。

 

 仮に前述の燃料流量制限が15,000rpmまでリニアに上がっていく設定であったなら、どのメーカーも15,000rpmまでフルに回したはず。しかしこの流量規定はエンジン設計の根幹になるものであり、今さら変更されては困るというのが各パワーユニットメーカーの主張だ。

 

20140423-22

 

 (2)については、「音量=ICEが発するパワーの大きさ」であり、ICE自体が2.4Lから1.6Lに縮小されているため、音量が下がるのもまた当然のことなのだ。

 

「エンジンの音というのはICEのエネルギーと相対的なものですから、排気量が小さくなれば音が小さくなるのは仕方のないことなんです」(徳永エンジニア)

 

 今季のパワーユニットが従来と同等のパワーが得られているのはターボチャージャーとERS(エネルギー回生システム)のおかげだが、これらが発するパワーがサウンドに影響しないことは周知の通り。ICEのパワーが従来の800馬力から600馬力程度に下がったのだから、それだけサウンドが小さくなるのも当然だ。

 

 また、ターボチャージャーを装着することでエンジン音が籠もることも、サウンド的には悪影響を及ぼしている。さらに今季型レギュレーションでは排気管を中央に集合させてリアエンドに排気することが義務づけられており、この集合方式もまたサウンドに悪影響を及ぼしているとパワーユニットメーカーたちは口を揃える。

 

 現在FIAを中心として各パワーユニットメーカーでサウンド改善のための対応策として検討されているのが、この排気管の取り回し方法だ。場合によっては、センター排気システム自体の見直しも考えられる。これによってGP2くらいの音にはなるかもしれない(GP2/11は4リッター10,300rpmで650馬力のNAエンジン)。

 

 しかし、回転数が低いがめたに今までのような甲高い音にはならず、ICEの排気量が小さいがために大きな音にもならない。抜本的な変化は臨めないだろう。

 

20140423-23

 

 パワーユニットの設計者たちは、本音では美しい音を響かせたいと思っている。しかし彼らが技術者として優先すべきは、現規定下で最大のパフォーマンスを発揮する方法の方だ。

 

「もちろん個人的にはもっと良い音であって欲しいと思います。しかし、いちエンジニアとしては音なんて関係ありません。我々は良い音を奏でるためにパワーユニットを作っているわけではありませんから。いくら良い音がしても、パフォーマンスが低ければ何の意味もないんです」(徳永エンジニア)

 

 それが技術者というもの。今季型マシンのノーズ形状にせよ2年前のステップドノーズにせよ、彼らは許される限りの速さを追求しただけのこと。レギュレーションを策定する際にこうした事態を想定できないFIAの側の限界が感じられる。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Wri2)

 

 

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