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REPORT【報道】

【特別レポート】ハース浮上の理由は新型フロントウイング。しかしコンポジット製造に課題も?

報道記事

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 日本GPでは2台揃ってQ3進出を果たしたハースの躍進が注目を集めたが、その原動力となったのは新型フロントウイングだった(写真・下)。これによってマシンの問題点が大きく改善され、マシン挙動が向上したのだ。

 

 そもそもハースはシンガポールGPでフロントウイング、フロア、リアブレーキダクトと今季最後の予定でアップデートを投入したが、 フリー走行でロマン・グロージャン車にパワーユニット関連のトラブルが発生するなどして走行時間が限られてしまい、マシン挙動が上手くまとめられなかった。そのためフロントウイングは新型を使用できず旧型で戦うこととなった。

 

 続くマレーシアGPでテストして投入する予定だったが、FP-1でケビン・マグヌッセン車の火災による赤旗中断があり、走行プログラムに遅れが生じたためにまたしても実戦投入まで持ち込めず。日本GPでようやく充分な確認走行ができて実戦投入となったのだ。

 

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シンガポールGPのVF-16。フロントウイングのアッパーフラップが鈴鹿仕様とは異なる旧型。


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マレーシアGPでも同じフロントウイングを使った。

 

 

 これにより全体的なダウンフォースが増加し、課題であったブレーキングの最終フェーズ、つまりターンインしていく直前のマシン挙動の不安定さが改善され、ドライバーたちが自信を持って攻めていくことができるようになった。特に中高速コーナーでの速さが向上し、鈴鹿ではそれが効果を発揮したと言える。

 

 ただしハースはマレーシアGPでブレーキやホイールに原因不明の問題が発生したように、未だにパーツの不具合に苦しめられている。グロージャンは長きにわたってマシンに違和感を訴えており、「メカニカルバランスが悪くて、ストレートは良くてもコーナリング時には踏ん張りが利かなくてマシンが曲がらずはらんでいってしまう」と不満を漏らしている。

 

 当初はほぼ全てのマシン設計図をフェラーリから受け取り、ダラーラで開発を進めて製造まで行なっていたハースだが、シーズンを経る中で独自開発パーツも登場してきた。しかし製造は相変わらずダラーラで行なっており、世界各国のワンメイクレーシングカー製造で名を馳せるダラーラとはいえどもカーボンコンポジットなどの製作精度はF1チームのそれとは差があるといい、フェラーリの設計図の想定通りの強度が確保されていなかったり、想定以前の距離でパーツが破損したりといった事態が起きているようだ。

 

 カーボンコンポジットは、炭素繊維に液体樹脂を染みこませたプリプレグと呼ばれる素材を型に敷き詰めてオートクレーブで加圧過熱することで硬化させて製造する。その際に炭素繊維の折り目をどのような向きで並べ重ねるか、もしくは1枚の炭素繊維のうち中央なのか端なのかどの部位を使うのかによってパーツの強度・剛性は大きく違ってくる。そのノウハウはいわばカーボンコンポジットの根幹をなす部分であり、化学複合素材を扱うレース業界以外の大企業も喉から手が出るほど欲しがる部分。フェラーリとしてもパーツの設計図は提供しても、コンポジット製作の指示書は提供していないものとみられる。

 

 開幕前テストではコンポジット部品の接着不良でフロントウイングが脱落するといった初歩的なミスが起きていたが、ダラーラがこうした状況をどこまで改善できるかがハースの浮上の鍵を握っている。

 

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日本GPではようやく新型フロントウイングを実戦投入し、性能を向上させた。

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

 

 

 

 

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