REGULAR【連載】

 

 先月のスーパーフォーミュラ開幕戦で「2スペックタイヤが面白くした!」という声が上がっていて、僕はちょっとモヤモヤした気持ちでした。予選のタイムを見る限りデルタが平均で0.5秒、大きいチームでも0.9秒くらいしかなかったので、この差で本当にレースが面白くなったのかな?と。

 

 決勝のレース展開を見ても、そのモヤモヤは晴れず。というか、2スペックだから面白かったのではなく、各チームがタイヤの性能変化が把握しきれないままレースをしなければならなかったから面白かっただけでは……?という気が。不確定要素を増やしたという意味では2スペックにしたから面白くなったと言えますが、それは純粋な2スペック制の面白さではありません。

 

 レース中の各車のラップタイムが分からないので、ロングランのタイム推移やレース展開の全体像がハッキリと分からなかったのですが、ようやくスーパーフォーミュラのウェブサイトに掲載されたのでそれを見ると、モヤモヤしていた部分がスッキリとしました。

 

 http://superformula.net/sf2/headline/7128

 

 詳しい解説はこちらのウェブサイトをご覧ください。

 

 ただ、この開幕戦のデータを見ると分かるのは2つで、①やっぱりソフトとミディアムの差が小さすぎて2スペックだから面白かったわけではないということと、②なるべくフリーエアで走ったもの勝ちのレースだということです。

 

 タイヤと給油という2つの要素が絡み合っているので分かりづらくなっていますが、第2スティントは燃料搭載量が同じなので、そこを見れば純粋な各車のペース差が分かります。

 

 スティント冒頭はソフトの山本尚貴選手や野尻智紀選手と、ミディアムの関口雄飛選手のタイムがほぼ同じ。スティント後半だけミディアムの関口選手が速い。ここから分かるのは、やっぱりソフトとミディアムのデルタが小さすぎてこれじゃ戦略の幅なんて作りようがないということと(ソフトのライフが事前にハッキリ分かっていればみんなおなじ戦略を採ったはず)、普通に使えばソフトのデグラデーションが一定に進むのに対してミディアムタイヤをセーブしていた関口選手は最後にプッシュができたということ。

 

 これは第1スティントにも言えることで、予選で本来のポジションを取ることができなかった関口選手は渋滞に引っかかるのが分かっていたためここではタイヤ温存と燃費セーブに徹して、15周目あたりから前のソフトスタート勢がピットインしてフリーエアになったところでプッシュして本来のペースで走行。

 

 これで前の5台をオーバーカットして5位へ。平川両選手に突っ込まれるアクシデントもありましたが、ミディアムに履き替えたここからもさらにフリーエアでプッシュして本来のペースで走行。これでこの後にピットインしたミディアムスタート勢3台をアンダーカットして2位へ。

 

 結局のところ、団子状態になって抜けずに本来のペースで走れないというのがほとんどのドライバーなので、そんな中でいかにフリーエアで走る周回を多くするかというのが勝負の鍵だということです(もちろん純粋な速さがなければ成立しない戦略ですが)。逆に、どんなに速いクルマでも集団の中で走り続ければどんどん沈んで行ってしまいます。

 

 

 実際のところ、関口選手の第1スティントは前に野尻選手がいる状態でしたが、野尻選手の本来のペースが速かったためここはそれほどロス無く走ることができていたようです。が、前の伊沢拓也選手に追い付いてしまった時点でこれ以上ロスが大きくようにピットイン。ここからフリーエアで新品ミディアムでプッシュして、実質的に16周目からミディアムスタート勢がピットインする30周目までフリーエアでプッシュしたことで大きくポジションアップすることに成功したというわけです。

 

 逆に塚越広大選手が選んだ2ストップ作戦は、タイヤのデルタがこれだけしかないと抜くのが難しく、フリーエアで走る時間が短くなってしまうため、成功させるのはかなり難しくなります。燃料搭載量が軽い状態で走ることができるメリットもありますが、1ストップでもタイヤ交換に要する時間と給油時間の差が3~5秒しかないのであれば、40秒以上もかかってしまうピットロスタイムが1回増える不利を取り戻すのはかなり難しく、実質的に2ストップ作戦は「なし」ということになってしまいます。

 

 と、詳しく説明するとこのように長くなってしまいますが、スーパーフォーミュラは簡単に言えば「フリーエアで走ったもの勝ち」のレースだということ。

 

 それはコース上で抜けないからで、ソフトタイヤにそれをひっくり返してミディアム勢を抜けるほどの差が無い限りは、この展開は変わらないものと思われます。みんなが第1スティントを引っ張るのか短くするのかは始まってみないと分かりませんが、その逆を行くしかないというレースです。

 

 スーパーフォーミュラはクルマがすごく速いけど、予選が(ほぼ)全てのレース。その一方でFIA F2はクルマはあんまり速くないけど、ピットスタートでも表彰台に上がれてしまうほどレースペースが全てのレース。レースを見る側にとってどっちが面白いかといえば、僕は圧倒的に後者に軍配が上がるような気がします。

 

 来年はシャシーがさらに2~3秒速くなって、エンジンを1秒ほど遅くして相殺するなんていう話も小耳に挟みましたが、そんなことをしたら余計に抜けないレースに拍車が掛かるのではないかと心配です……。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Suzuka Circuit)

 

 

 

 

 

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Comment

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  • コメント (2)
    • ManGok
    • 2018年 5月 08日

    来年からのシャシーはインディカーのように、床下でダウンフォースを稼いで、上部のエアロはシンプルにする、といった手法が取られるのでしょうか? そうするとタイムは上がらないような気はしますが…
    自分としては多少遅いマシンであっても、激しいバトルがそこかしこで起こるようなレースが観たいです

    • MINEOKI YONEYA
      • MINEOKI YONEYA
      • 2018年 5月 09日

      今のSFは「速い」って言いたいだけのクルマ&カテゴリーになってしまっていますからね……高速パレード走行なんて誰も見たくないですよね。
      タダでさえ抜けない狭い日本のサーキットなのに、これ以上パワー/ウェイトレシオが下がったらさらに抜けないレースになってしまうと思います。

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