【アプレゲールですいません。】フォーミュラEの面白いところ、足りないところ

　フォーミュラEの開幕戦・北京ラウンドをテレビで観戦しました。予想以上に面白かったところももあったり、予想とは違って微妙かなと思ったところもあったりしましたが、ポジティブに評価して良いというか、そんなにネガティブになる必要はないんじゃないかと感じました。

　テレビ朝日さんの地上派での中継は、アムリンアグリを「チームニッポン」と無理矢理煽ってみたり、レース内容があまり細かくフォローできていなくて順位がよく分からなくなってしまったりと微妙なところもありましたが、それはモータースポーツ中継に不慣れなせいでしょうし、今後少しずつ良くなっていくのではないかと思いました。せっかく土曜日の夕方に地上派で放送しているのですから、変に専門的でレースマニア向けにするのではなく、松岡修造さんと片山右京さんのコンビでシンプルに分かりやすく伝えるのも良いと思います。

　地上派の中継時間が足りなくて、最終ラップでBSデジタルに切り替わったのはかなり残念というか、地上派しか見られない人たちは「なんでやねん！」という感じだったとは思います。最終ラップの最終コーナーであんなドデカいクラッシュがあっただけに、あのクライマックスまで放送されていれば、結構新しいファンを惹きつけることになったのではないかと思いますし、余計に残念でしたね。

　まだバッテリーの性能があまり高くないので、クルマのスピードも120km/hあたりからの伸びが弱いように感じられましたし、全体的な速度域が低くて、ドライバーたちも限界点の低い市販車でレースをしているようなダルな感じだったのではないかと思いますが、一般の人にとってはそれはあまり気にならない要素なのかもしれません。

　今回のレースを参考にして、今後のレースに向けてサーキットの形状や全長、周回数などのスポーティング面を改良していくことでレースはもっと面白くなるのではないかという予感もありました。たとえば、バッテリーセーブのためにトロトロ走るフォーメーションラップは必要ないでしょうし、各車のバッテリー残量やファンブーストの使用を分かりやすくするなど、もっとエンターテインメント性を高めることを念頭に置いて改良していってほしいですね。

　テレビ番組作りの面でも、せっかく地上派で放送するならレースそのものよりも、一般の人がもっと興味を持ちやすいところにフォーカスしたり、入口になるようなフックが足りないような気がしました。せっかく北京で開催するなら、鳥の巣の周りを歩く佐藤琢磨選手の映像やコメントがほしいし、小籠包でも食べに行ってる風景があっても良いと思うんです。電気自動車とひとくちに言ってもよく分からないから、ステアリングの解説をしてもらいつつドライバーがどんな操作をしているのか紹介しても良いだろうし、レースそのものだけではないエンターテインメントとしての面白さを伝える要素が足りなかった気がします。セナプロ対決とか女性ドライバーとか、ディカプリオとか、必要なのは表面的なことじゃないような気がします。

　それはきっと、テレビ局側のノウハウが足りなかっただけではなく、フォーミュラEを運営する主催者の側もエンターテインメントとして盛り上げようという意識が足りていないからなのだと思います。スポーツとして盛り上げたいのは分かりますけど、現状のあのクルマではそれは無理ですし、おそらく来シーズンにいきなり性能がアップすることも考えにくいでしょう。そもそも、純粋なモータースポーツなら、どれだけ速かろうが技術がすごかろうが、一般の人は見ないでしょう。

　フォーミュラE開幕戦のテレビ中継を見て、面白そうだと思った面と、ちょっと足りないというかここを足せばもっと面白くなるのに……と思った面があるというお話でした。

（text by 米家 峰起 / photo by Formula E）