REGULAR【連載】

20140901-01

 

 ひょっとすると、生のフェルナンド・アロンソに出会ったことのある人は「なんか愛想のないヤツ」と思うかもしれません。でも、それは間違いです。

 

 あれだけチームリーダーとしていろんなチームを牽引してスタッフの尊敬を集め、実際に勝ってきたドライバーなのに、実は彼はシャイな人なんです。ですから初対面の人に対してはあまり面と向かって喋ったりしませんし、サインや握手を求めてくるファンへの対応も素っ気なかったりします。

 

 でも、本人は恥ずかしくてフレンドリーにできないだけなんですね。だから時にはメディアの前で仏頂面でいたりもします。本当は照れ隠しなんですけどね。

 

 以前、そんなアロンソくんが僕に頼み事をしてきたことがありました。フェラーリのホスピタリティブースでゴハンを食べていると、いきなり後ろから肩を掴まれて「誰だ!?」と思ったら彼でした。

 

 アロンソくんは、「両親の結婚記念日に、彼らの名前を漢字で書いたタトゥーをプレゼントしたいんだ。これが父と母の名前だから、これを漢字にしてくれないか?」と言って、フェラーリのチームスタッフだけが使っているメモ帳の1ページにあらかじめ書き付けてはぎ取ったものを僕に手渡してきました。

 

 こっちもビックリしましたが、彼も相当決心してやって来たのだと思います。ほぼ毎回、彼の囲みに参加している日本人は僕だけでしたから、狙いを絞って(苦笑)。

 

 その後、僕は漢字で書いたものを用意してフェラーリのホスピタリティユニットに行き、記者会見の後で彼に渡してあげました。日本語と中国語では漢字の発音が違うので、中国人の友人のアドバイスももらいつつ、日本語バージョンと中国語バージョンの2パターンを用意し、「この文字はこういう意味だよ」とか説明して上げて、「中国語の方は僕にはよく分からないんだ」と言うと、「じゃあこっちの日本語バージョンにするよ!」と喜んでいました。「僕らの名前が漢字になるなんて、不思議な気分だなぁ」なんて言ってましたけどね。

 

 フェリペ・マッさんなんかだと、1回話をすればすぐに距離を縮めて、パドックですれ違ったときにも「おう!」って肩をポンポンッと叩いてきたりしますが、アロンソくんだと徐々に徐々に距離を詰めて、1年以上かかってようやくここまで来たという感じです。

 

20140901-02

 

 でも、あるときある技術首脳のインタビューのためにホスピタリティユニットのチームスタッフしか立ち入ることができないエリアに入れてもらったことがあって、エンジニアオフィスなんかが並ぶところでたまたまバッタリとアロンソくんと顔を合わせたんです。ちょうどエンジニアたちとのミーティングを終えたところだったようでしたが、そこでは表では見せたことのないような屈託のない笑顔と柔らかな表情を見せていました。「あっ、この人こんな表情もするんだ!?」と、僕はビックリしました。

 

 つまり、世の中に対して見せているのと、チームスタッフのような身内の人間に対して見せているのとでは全く違うんですね。よく「フェラーリはファミリーだ」なんて言いますが、それはタテマエとかきれい事じゃなくて、ホントにそうなんだろうなと直感しました。それに、だからこそ彼の周りには人が集まり、彼の走るチームやクルマはどんどん良くなっていくんです。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Ferrari)

 

 

 

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Comment

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  • コメント (2)
    • mitsunishira
    • 2014年 9月 01日

    相変わらずこのシリーズ大好きです。

    • MINEOKI YONEYA
      • MINEOKI YONEYA
      • 2014年 9月 02日

      ありがとうございます。普通のレポートでは報じられないドライバーの姿をできるだけお届けしていきたいと思っています!

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