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2019 Rd.4 AZERBAIJAN
【Rd.4 AZE・徹底分析⑤】UTSUの理系視点レース分析

【Rd.4 AZE・徹底分析⑤】UTSUの理系視点レース分析

 

 第4戦アゼルバイジャンGPを、徹底分析①〜⑤とは別の角度からいくつかのポイントに的を絞ってUTSUが独自の理系視点で徹底分析する。

 

 アゼルバイジャンGPでの各ドライバーのラップタイムとギャップから、早まったピットインタイミングの真相、マックス・フェルスタッペンの3位表彰台の可能性、フェラーリの戦略の謎、そして混戦極まる中団勢で抜き出ているチームを探ってみる。

 

 

【ポイント①】メルセデスAMGのレースコントロール

 

 まずは早まったピットインのタイミングについて見てみる。このグラフは2周目から11周目までのバルテリ・ボッタス、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・フェッテル、マックス・フェルスタッペンのラップタイムを並べたものだ。

 

 2周目から5周目にかけてメルセデスの2台は1分47秒台後半のペースを維持し、フェッテルやフェルスタッペンをDRS圏外に追い出し、アンダーカットされないマージンを持つためにプッシュしていた。一方、フェッテルやフェルスタッペンはメルセデスのペースに付いていくことができず、1分49秒台前半のラップタイムで推移している。5周目以降はメルセデスのペースが落ち、11周目にはフェッテルやフェルスタッペンと同じペースにまで落ちているのが分かる。

 

 

 一見するとメルセデスのタイヤがタレているように見えるが、この時点では4台が似たようなラップタイムになっただけで、メルセデスから見ると後ろとのギャップに関してはロスがない。ハミルトンは9周目にグレイニングを訴えていたが、グレイニングはデグラデーションほどラップタイムに影響しないため、このラップタイムの落ち込みは後ろのフェッテルに対するギャップコントロール、または燃料節約のためと考える方が良いだろう。

 

 しかし後ろからはミディアムタイヤでスタートしたシャルル・ルクレールが来ていた。下のギャップグラフにもあるように、ルクレールは6周目にセルジオ・ペレスをオーバーテイクして以降1周あたり約0.8秒ずつボッタスに接近していた。

 

 

 ルクレールは8周目にもフェルスタッペンをオーバーテイクし、なおもペースを高い状態で維持していたためにピットストップタイミングが予定の25周前後よりも早まったと考えられる。また今回のSCウィンドウが9秒だったために、ルクレールがSCウィンドウ内に入る直前の12周目にメルセデスはボッタスをピットに入れたのではないだろうか。

 

 

【ポイント②】フェラーリのレース戦略の分かれ目

 

 

 さて、フェルスタッペンはルクレールに抜かれた後、ソフトタイヤでスタートした上位チームでは最後の14周目にピットインした。このタイミングは遅いと考える。フェッテルはルクレールに抜かれる直前にピットに飛び込んでミディアムタイヤに履き替えた。フェルスタッペンはその翌周にも入らず14周目でピットインした。10周目はフェルスタッペンのピットストップウィンドウ内にペレスがいたために入ることが出来なかった。しかしフェッテルが入った翌周以降はウィンドウが開いていたので、12周目にはピットに入ることが出来たはずだ。

 

 セカンドスティントのフェッテルとフェルスタッペンのラップタイムを見てみるとフェルスタッペンが19周目から27周目まで継続してフェルスタッペンの方が速く、全体で最速のペースも見られていたので、このピットタイミングがあと2周速ければフェルスタッペンがフェッテルを捕らえるシーンが見られていたかもしれない。

 

 ミディアムタイヤでスタートしたルクレールは、上位4位がピットに入り単独で走行を続け34周目までスティントを伸ばした。しかしこの戦略もいまいち良くないもののように見える。

 7周目から12周目まではただ一人ミディアムタイヤで1分47秒台を継続し、上位4台の戦略変更まで追い込んだ。しかし、ソフトタイヤスタートだった上位4台がピットでミディアムタイヤに替えて以降はその輝きを失った。1周あたり約1秒のペース差でボッタス、ハミルトン、フェッテルに接近され、32周目でボッタスに先頭の座を奪われた。

 

 フェラーリとすればなるべくスティントを伸ばして、ロスタイムが小さくなるセーフティカーやVSCを待っていたいところだったのだろうが、ボッタスからフェッテルまで抜かされてしまっては、順位を取り戻すことが出来ないだろう。フェッテルがピットインする11周目ではルクレールに抜かれる直前にピットに呼び込んで、オーバーテイクされる時のロスタイムを発生させなかったにも関わらず、ルクレールにはその対応が出来なかった。

 

 無線では34周目に「今ピットインしてもソフトタイヤが最後までもたない」とルクレールに弁明していたが、たとえ2ストップになったとしても新品のソフトタイヤを余分に持っていたので、終盤にガスリーに対して追撃可能だったはずだ。トラックポジションを重視しすぎて、保守的になるフェラーリの悪い癖が出てしまったようだ。

 

 

【ポイント③】中団グループ勢のペース比較

 

 最後に中団勢のペースを比較してみよう。注目したいのはVSCが解除された41周目からフィニッシュまでのラップタイムだ。

 

 これを見るとペレスが常に中団勢では一番のタイムを維持し、続いてカルロス・サインツがいる。アレクサンダー・アルボンやキミ・ライコネンは途中青旗の対応でラップタイムが落ち込む時があるものの、47周目以降にはサインツと同等のラップタイムを出せている。

 

 一方でケビン・マグヌッセンやニコ・ヒュルケンベルグは右肩下がりで落ち込んでいる。特にマグヌッセンはVSC中に新品のソフトタイヤに履き替えたのにもかかわらず、4周ほどタイムを維持した後にタイムを落としている。この要因は定かではないが、これが「ハースは予選ではQ3に入るほど速いのに、レースになるとその速さが見られない」というアルボンの言葉を表すものだろう。

 

 今回は市街地でかつ路面温度も下がっていく特殊なコンディションだったために、今後のレースでもこの傾向となるかどうかはレースを見るまで分からないが、レーシングポイントやマクラーレンがレースで強い姿を見せつつあることがこのグラフから読み取ることができる。さらにはそこにトロロッソやアルファロメオが加わる可能性も秘めていることから、今後の中団争いも混戦模様が見られそうだ。

 

 

(text by 正木 聖 / photo by MercedesAMG, Ferrari, Red Bull, Pirelli)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • コメント ( 3 )

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  1. zog

    おもしろい!
    F1ライフは、米家さんの緻密なレース分析が魅力ですが(TAROさんのエッチなお姉さまもいいけど)、新たな魅力が加わりましたね。レースのキモをじっくり解析するUTSUさんの記事、これからも期待しています!!

  2. w0fu1sg6

    あれ?よねやんの愛だね。。。

  3. girime

    インタビュー系の記事より、本記事のような分析系のほうがUTSUさんに向いている気がします。
    というわけでインタビュー系はTAROさんに期待ですねw

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