RACE【レース】

20180316-13

 

 バルセロナ合同テストにおけるレースシミュレーション分析によって、2018年の勢力図を読み解く。3強チームの勢力図に続いて、次は中団グループの勢力図を分析してみよう。

 

 バルセロナ合同テスト2回目に行なわれた各チームのレースシミュレーションのラップタイムを表にすると、以下の通りだ。

 

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 3強チームとそれ以外のチームは、昨年よりもその差が縮まっているとはいえ、依然として明確に分かれている。中団チームのラップタイムだけを抜き出すと、このようになる。

 

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 このグラフではフェルナンド・アロンソ(オレンジ色・点線)のラップタイムが抜きん出ているように見えるが、これはパワーユニット交換で大幅に時間を失った4日目の午後4時過ぎから開始したレースシミュレーションで、3日目のストフェル・バンドールンのプログラムを見る限りでは、セッションの残り時間を見てレースシミュレーションの途中から開始したと見るのが自然だ。

 

 もしこれが第1スティントからソフト〜ミディアム〜ミディアムとつなぐ戦略のレースシミュレーションだったとすればマクラーレンの速さは本物だ。しかし第1スティント後半(8周目以降)のタイヤのデグラデーションが小さいことを見ても、それほどマシン(燃料)が重たくない状態でのそうこうであると想像できる。

 

 アロンソの周回数をレースシミュレーションの途中からだったと仮定してグラフを後半にずらすと以下のようになり、バンドールンとほぼ同じかやや速いくらいのタイムに収まる。つまり、これはレースシミュレーションの途中からだと判断すべきだろう。

 

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中団グループのトップはハース

課題はタイヤマネージメントか

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 こちらのグラフで中団チームのレースシミュレーションのペースを比較すると、タイヤ戦略が異なるとはいえ、第2スティントのミディアムと最終スティントのソフトで速さを見せているハース(グレー・実線)が目立つ。

 

 第1スティントはタイヤを守るためにペースを抑えながら走っているものと考えられ他の中堅チームとほぼ同等のペースだが、それほどデグラデーションの状況は良くはない。ミディアムは元々デグラデーションが小さいためどのチームも燃料が減って軽くなった分だけペースが上がっていくが、最終スティントのソフトでは最後にペースが低下していてやはりデグラデーションに苦しんでいるように見える。

 

 昨年もタイヤマネージメントに苦しむ場面が何度か見られたが、ハースにとってはここがアキレス腱になるかもしれない。しかしハースはブリヂストンから新たに日本人エンジニアを獲得しており、シーズン序盤戦までにこの不安要素を払拭してくる可能性も充分にある。そうなれば、マシンの持つ速さが遺憾なく発揮されるようになりハースが中団のトップに立つ可能性は高くなりそうだ。

 

 

ハースに挑むフォースインディアとルノー

さらなるアップデートで開幕戦では肉薄か

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 ハースよりもやや遅れを取る位置にいるのがフォースインディア(ピンク色)とルノー(黄色)。本格的なタイムアタックを行なっていないため一発のタイムでは下位に沈んでいたフォースインディアだが、レースペースではしっかりと昨年同様の実力があることを示している。さらにバルセロナでは昨年型の空力パッケージで走行しており、開幕戦に2018年型パッケージが間に合えばここからさらに戦力を伸ばしてくるはずで、ハースに挑みかかる可能性も充分にある。

 

 ルノーもパワーユニットの出力が上げられればハースとフォースインディアに挑むことができるポジションにいる。ブロウンリアウイングの問題が注目されているが、そもそも排気ガスによるダウンフォース増加効果はそれほど大きなものではないといい、禁止されたとしてもさほど大きな影響はないだろう。それよりもパワーユニット自体の出力を上げられるかどうかが課題になりそうだ。

 

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 いずれにしても中団グループのトップはこの3チームによる争いになる。3強チーム6台が完走すれば、残り4席しかない入賞圏をこの3チーム6台が争うことになりそうだ。もちろんQ3進出を掛けた争いもこの3チームの中で激しいものになるだろう。奇しくも搭載パワーユニットが3強チームのそれと同じ分布であり、サーキットごとの特性によって毎戦のように勢力図が変わることも考えられる。

 

 

中団トップ争いに加われないマクラーレン

予想以上に苦しい状況に

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 アタックラップでは全体で3番手のタイムを記録して注目を集めたマクラーレンだが、レースペースではこの3チームに及ばない。バンドールン(オレンジ色・実線)他チームと同じように第1スティントは全体のペースを抑えながらスーパーソフトを使っているが、第2スティントのソフトのペースは遅く、中団上位の3チームに大きな差を付けられてしまっている。

 

 ミディアムを履いた第3スティントはこれら3チームと同等かそれ以上のペースで走っているが、第2スティントでソフトタイヤを長く保たせたために最終スティントが短くなったこととに加えて、燃費セーブをしたぶんだけ最後にプッシュすることができたのかもしれない。アロンソ(オレンジ色・点線)は自身の59周目にピットインをして約10分間ピットに留まっているが、これは59周目の第2セクターでトラブルが発生しエンジンから異音を出しながらスローダウンしての緊急ピットストップ。しかし何らかの対策を施してそのまま再びコース復帰を果たしミディアムのスティントを走り切っている。

 

 それでもまだ実力を出し切っていない状態のフォースインディアやルノーにようやく追い付くレベルで、ハースには追い付けない。フォースインディアとルノーが開幕戦で力を伸ばしてくる可能性が高いのに対して、マクラーレンはルノー製パワーユニットの出力向上の恩恵にはあずかることができるかもしれないが、リアカウルの冷却見直しは必須で空力面のパフォーマンス低下は免れない。開幕戦に向けて空力パッケージのアップデートを計画していると言うが、例年小さなアップデートばかりで大きなものが持ち込まれた試しはない。

 

 ルノーにスイッチしたマクラーレンの置かれた現状は思いのほか厳しいものなのかもしれない。

 

 

入賞はほど遠いトロロッソ・ホンダ

課題は速さとタイヤマネージメント

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 そしてトロロッソ・ホンダ(青色・実線&点線)も決して容易な状況ではない。ドライバーたちは「中団グループで争えることは間違いない」と太鼓判を押したが、レースシミュレーションのペースを見ると、トロロッソが抱えている課題が浮き彫りになる。

 

 まずペースそのものの遅さ。これはすでにお伝えした通り車体側もパワーユニット側も満足のいくレベルに仕上がってはおらず、まずは信頼性重視で一歩ずつレースを戦っていくことが最優先だから仕方がないことかもしれない。開幕時点で高い性能を目指すよりもむしろ、これまでのトロロッソとは違ってシーズンを通してのアップデートをきちんと果たしていくことに重きが置かれている。

 

 そしてもうひとつの課題は、タイヤのデグラデーションだ。どのスティントを見てもスティント中盤の手前からタイムが落ちており、燃料が軽くなった分のタイムの伸びがない。ドライバーたちもタイヤの扱いが難しいと訴えていたが、トロロッソはバルセロナの新路面にしっかりと対応できたとは言い難かった。

 

 ただし4日目のブレンドン・ハートリー(青色・点線)は中盤からマシンに問題を抱えており、ペースを押えながらレースシミュレーション走行を続けていたという。おそらく45周目あたりからのペース低下が意味しているのがそれだろう。最後はパワーユニットのデータ異常によって走行を早期に切り上げたが、もしこのトラブルがなければ3日目のピエール・ガスリー(青色・実線)と同等かそれ以上のペースとタイヤマネージメントを示した可能性はある。

 

 それでも中団グループの上位勢には届かなかったこともまた事実だが、デグラデーションが大きくなければマクラーレンと同等のペースで走ることはできそうだ。

 

 例えば多くのチームが第1スティントの重たい状態では速いラップと遅いラップを交互に挟みタイヤを労りながら走っているが、トロロッソはこうした工夫は行なっていない。こうしたところにもチームとしてのタイヤマネージメントの未熟さが表われている。

 

 開幕戦までにデータを分析することでマシンのセットアップとタイヤマネージメントをどこまで熟成させられるか。それがトロロッソにとっては鍵になりそうだ。その下には本格的なレースシミュレーションを行なっていないウイリアムズと(薄水色)、ザウバー(紫色)しかいない。なんとか現状のSTR13のポテンシャルを最大限に引き出し、せめてマクラーレンを上回って7番目のチームのポジションを奪い取って貰いたいものだ。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Haas, Force India, Toro Rosso, McLaren / data by F1LIFE)

 

 

 

 

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Comment

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  • コメント (2)
    • tonsukesan2
    • 2018年 3月 19日

    客観的かつ公平な分析、ありがとうございます。シミュレーション段階とはいえ、今年の2ndグループは、ハースが速そうですね。元ブリヂストン日本人エンジニアが注目です(フェラーリにいたあの方ではないですよね!?)
    トロロッソは、シーズン後半の伸びしろに期待ですね。

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