11/12
【ブラジルGP・日曜】ロータス小松礼雄「新型ノーズはダメだと分かっていてテストしたんです」
今季不調にあえいでいるロータスの小松礼雄エンジニアに、USGPでテストした新型ノーズに込められていたチーム事情を聞いた。ツインタスクノーズに不調の原因があることを確認するためのものだったというが、その背景には様々なチーム事情があった。ケータハムと同様にスペアパーツ不足に苦しむほど予算的に苦しい戦いを強いられているという。
ーーブラジルではルノー勢が苦労していましたね。パワーユニットの差がモロに出た形でしょうか?
「ストレートが長いし、標高も高いし、そうですね。でも僕はあんまりパワーユニットのせいにはしたくないんです、レッドブルやトロロッソに負けているうちはね。予選で15位だったじゃないですか。どれだけ頑張ってベストな走りができていたとしても、あとせいぜい0.2秒縮められただけだったし、14位ですからね。ほぼ全力を引き出してあの結果ですからね」
ーーチーム内のモチベーションを維持するのも大変では?
「そりゃ、大変ですよね。モチベーションを高めなきゃいけないけど、現実も見なきゃいけない。だから盛り上げるのも難しいんです。でもみんなバカじゃないから、現状は分かっていますよ。ドライバーに対してもそうですしね」
ーーロマン・グロージャンも無線で怒っているところばっかり流されていますよね(笑)。
「ははは、彼は不機嫌なフランス人だから(苦笑)。フランスのテレビでもすごく評判悪いらしいですね、フランク・モンタニーがどっかでボロクソ言ってたらしいですよ(笑)。本当だったらああいうのは無線でやらない方が良いと思うけど、彼の性格だからしょうがないですよね。それでも速く走ってくれれば僕はどうでも良いから」
ーーUSGPの金曜日にテストしたスタンダードな形のノーズですが、その手応えは?
「あれはね、ダメだというのが分かっていて入れたんです。実際、ダウンフォースの発生量という意味ではダメだったんですけど、それは分かっていたことだから良いんです。それよりも確認したかったことが確認できましたから」
ーーツインタスクのノーズが今季の不調の原因かどうかを確認するため?
「そう。今年のマシンはフロントエンドの空力のセンシティビティ(敏感さ)の問題を抱えているんですけど、あんな変なノーズを付けてるじゃないですか?(苦笑) それがどんな悪さをしているのかっていうことを見るために来年向けのあのスタンダードなノーズを付けて走ったんです。つまり、(通常型ノーズを付けて走った際の)センシティビティを見るためのテストだったんです。今のクルマであのノーズを付けてもダウンフォースの絶対値が落ちているのは分かっていたんです。そしたらその通りでしたけどね」
ーーセンシティビティの問題の原因はツインタスクノーズだったということですか?
「それが分からなかったわけです。風洞では良いんだけど、実際にコースを走るとすごくセンシティブなんですね。だからそれがノーズのせいなのかどうかを見るために作ったわけです。まぁ来年はあのツインタスクは使わないでしょうね(苦笑)」
ーーということは来年は空力が大きく改善される?
「でも問題はセンシティビティだけじゃなくて、ダウンフォースの絶対値もありますから。こないだ話したようにリアもないけど、フロントエンドも充分じゃない。
もしセンシティビティだけ解決すれば良いなら、オースティンだって予選・決勝もあの新型ノーズで走れば良かったわけじゃないですか? でもあれではダウンフォースが出ないから、センシティビティが悪くてもダウンフォースが出るツインタスクを使った方が良いわけです。だから、ツインタスクを辞めたとしても通常型のノーズでダウンフォースのレベルをどれだけ上げられるかっていう課題もあるんです」
ーーでは、来年もツインタスクを継続してセンシティビティの問題の方の解決を図るという手はない?
「もしウチの今のクルマでレッドブルぐらいのすごい量のダウンフォースがあれば、あのノーズを使っていても大丈夫でしょう。でも今のレベルのダウンフォースしか出ていないんだと、あのノーズは使えないんです。だから来年は使わないつもりですけど、来年になったら使ってたりしてね(苦笑)」
ーーそれでも解決の糸口は見えてきているのでは?
「まだまだですよ、まだ先は長いですよ、本当に……。まだ光明が見えるところまでは来ていないですね。大きく変えないとダメだから。でも来年に向けては大丈夫だと思いますよ、これ以上悪くなることはないですから(苦笑)。実際、『なんでこんなことしてるの?』って思うような要素はないし、目の前の状況を見て全て理にかなったことをしているから」
ーー今年のクルマの開発は、期待通りにいかなかった?
「いや、ある程度の開発はできていますし、ゲインできたダウンフォースの値だけを見れば悪くはないけど、ベースがあまりに悪すぎるから。すごく低いところからスタートしているから、そこが問題ですよね。マシンの特性(センシティビティ)が良くないから、例えば同じ量のダウンフォースが発生するパーツを付けたとしても、元の特性が良いクルマなら付けた分だけ使えるんですね、だけど元の特性があまりにも良くないから、付けた分の全てを使えない。ダウンフォース同じくらいのダウンフォースは使おうと思ったら、それよりももっとたくさん付けないといけないんです。ダウンフォースを10ポイント増やしても、その10ポイントがそのまま使えるようなクルマじゃないんです。いくらピークダウンフォースが高くても、下限が低ければそこがボトルネックになってしまう。だったら中くらいでも安定してダウンフォースが出ている方が良いわけです」
ーー開発に予算を投じようという意味では、チームの運営は良くなってきているのでは?
「いや、本当はあのローノーズは鈴鹿で入れる予定だったんですよ。鈴鹿っていろんなコーナーがあるから、ああいうテストをするには最高の場所なんです。それが遅れて、ソチにも来なくて、オースティンでやっと投入でしょ? だいたい3〜4戦遅れてやってくるんですよ、ウチの開発は」
ーーそれは技術的な問題? それとも予算の問題?
「全部ですよ。おカネが無いから外部への支払も遅れるし、パーツを作るのも遅れるわけだけど、全てが関連しているんで何が悪いって線引きはできないですよね」
ーーでもケータハムみたいなスペアパーツがないというレベルではないんでしょ?
「いや、そういうレベルですよ。ないですよ、パーツは」
ーーブレーキディスクが買えないとか?
「ああ、そういうことはよくありますよ」
ーー右側をクラッシュさせたらもう走れないなんていうレベルではない?
「いや、ほぼそれに近いものがありますよ。僕らがやりくりしなきゃいけないことって、スゴいですよ。なんでこんなこと考えなきゃいけないの?っていうようなことだらけですから(苦笑)」
ーーでもさすがに、サスアームにクラックが入ったから現場でカーボンを巻いて補修して使うなんていうことはありませんよね?(苦笑)
「それはさすがにないけど、僕らもそういう状況になるまでにそれほどジャンプは必要としない状況ですね(苦笑)。本当に、去年や一昨年では考えられないような状態で走っていますからね。パーツのマイレージだって、セッションごとに使い分けるのを繰り返しているような状況ですからね。それで空力のパフォーマンスが出ないって、当たり前だって(苦笑)」
(text and photo by 米家 峰起)
Comment
- トラックバックは利用できません。
- コメント (2)
このアヤオさんシリーズ、とても面白いですね(笑)。
アヤオさんは物言いが超ストレートなので、面白いんですよね。これからもどんどん掘り下げていきます!(笑)