06/28
【オーストリアGP無線ドキュメント】タイヤ、ブレーキ温度に苦しむドライバーたちの叫び!(1/3)
ツェルトベクは決勝日を迎えて急に青空が広がり、強い陽射しが照りつけてきた。グリッド上で最後のマシン整備にあたるメカニックたちの額には汗が滲み、気温は20度を超え、路面温度は50度に達しようかとしている。
涼しかった土曜日までとはコンディションが大きく変わり、路面の変化を読むのは難しい。
その暑さと未知数の前に、予選でフロントロウを独占したウイリアムズ勢はタイヤを気にするあまり勝利を追い求めはしない。そしてメルセデスAMG勢とて盤石ではない。パワーユニットの冷却だけでなくブレーキのオーバーヒートも問題となり、ルイス・ハミルトンがブレーキのマネージメントに苦しみながら戦っている様子が刻々と伝わって来る。
上位勢のみならずフォースインディア勢を中心としたピットストップ戦略によるバトルの中で交わされた緊迫したやりとりにも注目してもらいたい。
【DUMMY GRID】
●ルイス・ハミルトン
←「ニコは君と比べてエアロバランスをハーフターン前寄りにしている。今のところ(レコノサンスラップでは)彼はクルマがオーバーステア気味になったとレポートしている」
→「僕的にはブレーキバランスが前寄り過ぎたよ」
←「+2にしたからね」
→「ああ、もう一度+−ゼロに戻したいと思っている」
←「分かった」
→「バイトポイント……じゃなくてBB(ブレーキバランス)2」
←「了解、グリッドにつくときはストラットモード1で走って、グリッドについたらストラット5、バイトポイント5に変更してくれ」
→「(スタート直後の)1コーナーだけBB……ゴメン、BBALを後ろ寄りにすれば良い?」
←「君がタイヤのウォームアップについてどう感じるかによるね。フロントが楽に温められると感じるのならBBAL1に戻しても構わない。フロントの温まりが遅いと感じるのなら-1にしろ。最初の数ラップはBB3に戻すのも悪くないと思う。いつもよりもBBレベルが低いのを忘れるな。BB2でいつもの1.5程度の設定だ、BB3に設定していつもの2だ。普段のサーキットでいえば金曜の設定だ」
→「そうだね、タイヤのウォームアップにはかなりプッシュする必要があるだろう」
【FORMATION LAP】
●ダニエル・リカルド
←「(下位以外で)プライムを履いているのはバトン、マルドナド、ペレスの3台のみだ」
●セバスチャン・フェッテル
←「エンジンはgood、ギアボックスもgood、バッテリーもgoodだ」
●ジェンソン・バトン
←「イエローG3。BBはMIDポジションで」
【LAP 2】
●セバスチャン・フェッテル
→「ドライブを失ったよ! どうすれば良いか教えてくれ」
←「今調べているところだ」
→「スロットルのレスポンスがないんだ」
←「他のクルマは(3周目の)ターン1を曲がったところだ」
→「まだ走り続けている。何をしたら良いか教えてくれ」
←「とにかくマシンを停めてスイッチを切ってみてくれ。他のクルマがバックストレートに入って近付いて来ているから注意してくれ」
→「OK、なぜか分からないけど、まだ駆動力が復活したよ」
←「OK、周りのクルマに気をつけろ」
●ダニエル・リカルド
←「チャージ10。黄旗だ、セバスチャンがイターン3手前の右側でスローダウンしている」
【LAP 5】
●セバスチャン・フェッテル
←「OKセバスチャン、レースをして良いぞ、GO RACING」
●ダニエル・リカルド
←「ダニエル、オーバーテイクボタンを使うな」
→「了解、僕はまだ使っていないよ」
←「ああ、分かっている。この後レースの最後までずっと使うな」
【LAP 8】
●フェリペ・マッサ
←「ターン1、2、3でできるだけリアタイヤをいたわってくれ。シフトもできるだけショートシフトしろ」
●セルジオ・ペレス
←「スーパーソフトで走っている連中はリアのグレイニングに苦しんでいるぞ。できるだけタイヤをいたわれ。リカルドはオーバーテイクボタンが使えない上に、DRSも機能していないようだ。抜けるぞ!」
【LAP 10】
●ルイス・ハミルトン
←「フロントブレーキ(の温度)が限界ギリギリだ。妥協(のブレーキング)が必要だ」
●エイドリアン・スーティル
→「グレイニングがかなり酷くなってきている!」
←「分かったよ、エイドリアン。プッシュし続けてくれ」
【LAP 11】
●ジャン・エリック・ベルニュ
←「前のリカルド、ダニー(クビャト)、後ろのグロージャンと戦っているぞ」
●ルイス・ハミルトン
←「ボッタスとのギャップを縮めろ。ストラット2、マジックRSを解除しろ」
●フェリペ・マッサ
←「フェリペ、次のピットストップでフラップ調整は必要か?」
→「今のところアンダーステアの症状はないし問題ないよ。僕的にはアンダーだけが問題だから」
●エステバン・グティエレス
←「この周BOXしろ、タイヤを使い切れ。プライムタイヤに交換する。フロントウイングは+2だ。了解したら確認を頼む」
→「了解」
【LAP 13】
●ルイス・ハミルトン
←「BOX、BOX! BOX、BOX!」
●バルテリ・ボッタス
←「タイヤの状態をフィードバックしてくれ。次のピットストップでフラップ調整は必要か?」
→「タイヤは悪くないけど、もうそんなにたくさん走れない。最大でもあと5周くらいだろう」
←「リアがタレていくだろうが、まだ後続との差は広がっていっているし状況は良い感じだよ」
【LAP 14】
●フェリペ・マッサ
←「フェリペ、この周の終わりにBOXだ」
【LAP 15】
●セバスチャン・フェッテル
←「周りのドライバーたちがピットインしていくぞ。前のバトンはプライム、後ろのマルドナドはオプションだ」
●ニコ・ヒュルケンベルグ
←「1ラップあたり0.5秒必要だ、ニコ。できるだけ(前の)マグヌッセンをプッシュしてくれ」
●セルジオ・ペレス
←「ロズベルグを抑えて走っていてもペースを失っていないから、抑えられるなら我々はハッピーだ。でも彼を抑えるために自分のレースを妥協するようなことはするな。自分なりのペースでプッシュして走れ」
【LAP 16】
●ダニエル・リカルド
←「ダニエル、ペースアップしろ。前の連中がピットインするから、ピット出口でバトルになるぞ」
●セバスチャン・フェッテル
←「セバスチャン、申し訳ないけど我々はセーフティカー導入のチャンスを待つしかない。このペースで走るとタイヤが壊れてしまうぞ」
●ルイス・ハミルトン
←「この2周ほどはブレーキ温度が限界を超えているぞ。マネージする必要がある」
【LAP 17】
●ダニエル・リカルド
→「フロントタイヤが信じられないくらいターンインしてくれないよ。逃げていってしまう」
●ジェンソン・バトン
←「(次のピットストップは)ターゲット-3を考えている」
●ジュール・ビアンキ
←「フロントブレーキの温度が厳しい。ブレーキバランスをダッシュボード上で-4クリックにしてくれ」
【LAP 19】
●マーカス・エリクソン
←「可夢偉はターン2、3、5でブレーキングを君よりも遅くしているよ。ターン9の出口でもっとタイムを稼ぐこともできる」
●ルイス・ハミルトン
←「ルイス、オーバーテイクボタンを少し使っても良いぞ。(燃費は)問題ない。でも賢く使え」
【LAP 20】
●ジェンソン・バトン
→「ラップタイムはどのくらいで走れば良い?」
←「1分14秒台の中盤から後半だ。ケビンのさっきのラップは1分14秒6だった」
●ルイス・ハミルトン
←「またフロントブレーキの温度が上がってきているぞ。その点を配慮して走ってくれ」
←「少しオーバーテイクボタンを使うのはやめて、バックアップのためにバッテリーにチャージしてくれ」
→「まだ全然フルペースじゃない、チャージ4で走っているよ」
←「今調べているところだが、今は限界ギリギリだ」
●マックス・チルトン
←「コバヤシを後ろに抑え続けるためにタイヤのグリップを最大限に使え」
(text by 米家 峰起 / photo by Wri2)
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