REPORT【報道】

20140428_HONDA-04

 

 2015年にF1に戻ってくるホンダに対しては、ファンの間でも様々な期待と不安が入り混じっていることだろう。マクラーレン・ホンダとしてF1に復活し、果たしてどれだけのパフォーマンスを見せられるのか? またすぐに撤退という道をたどるのではないか?

 

 その背景には、今のホンダF1プロジェクトを取り巻く状況が見えてこず、パワーユニットの開発状況もマクラーレンとの関係も、何もかもが不明瞭で漠然としていることが理由にあるのではないだろうか。

 

 そんな中、FIAからの要請によって中国GPのFIA会見に出席することとなったF1プロジェクト責任者の新井康久氏(本田技術研究所・専務執行役員)にホンダF1プロジェクトの今を詳しく聞いた。

 

ーーF1パワーユニット開発に携わっている方々の規模は?

「みなさんが想像されているよりも相当少ないと思います。過去にホンダがやってきたF1プロジェクトとは違って、技術的にも相当進歩しています。物量でやって勝利を得るという時代ではないと思いますし、開発費も過去とは比べものにならないくらい『え、こんなものなの?』というくらいリーズナブルにやっています。知恵を絞って、頭で勝負です。

 『HRD Sakura』という研究所を栃木県さくら市に設立して、この4月からモータースポーツ部門が引っ越しました。これまでいたところ(栃木研究所)から20kmくらい北で、隣町という感じですね」

 

ーー英国ミルトンキーンズの活動拠点は?

「6月に設備が揃ってファイヤリング(エンジンに火を入れること)ができる体制になります。ちょっとしたベンチテスト装置と、組みばらしができる場所があるというだけですね。もちろん洗浄などはできるようになっていますが、見て頂くと『え、これだけですか?』っていうくらいの、30分もあれば全部見て回れるくらいの設備ですよ。本当に狭くてかわいい施設で、第3期のHRD(ホンダ・レーシング・ディベロップメント)に比べたら事務所程度の規模で、3分の1くらいの面積しかありませんから。

 スタッフは日本人とイギリス人混合で、テクニシャンを中心として20人程度の小さな所帯になります。日本からはすでに設備立ち上げのために常駐スタッフが行っていますが、現時点では1人しかいませんが、来年はレースについて回るメンバーはそこを拠点にして動きますから、レースが始まれば常駐の日本人スタッフはもっと増えることになります」

 

ーーパワーユニットは日本で製造して、マクラーレンへ直接送るかたちになりますか?

「まだ確定ではないんですが、基本的には日本からマクラーレンに直接送って、レース後にミルトンキーンズでチェックをするというような体制になるかと思います。ミルトンキーンズをメインでやるというように誤解されている方もいらっしゃるようですが、あくまでブランチというような位置づけですね」

 

ーーマクラーレンのファクトリーには常駐スタッフはなし?

「なしです。同じイギリスの中でファクトリーを構えていますから、距離的には1時間ちょっとかかるのでスープは温くなっちゃう距離ではありますけど(苦笑)、遠からず近からずという感じですね」

 

ーー現場を担当するスタッフの人選は?

「まだこれからですね。私は基本的に監督役として全戦に行くことになると思いますが、日本から行くかイギリスに滞在するかは決めていません。いずれにしてもこの仕事は体力勝負になりそうですね(苦笑)」

 

ーーいまマクラーレンとの連携を担っている担当者が現場に行くということではない?

「そうではないですね。レースの中でオペレーションするというのは、開発とはまた違った特殊な能力が必要ですし、図面を書いている人が現場での瞬間的な判断ができるかどうかというのは別ですからね。

 それに、設計は各要素ごとに担当していますが、現場でのエネルギーマネージメントという観点で考えるとパワーユニットの全体像を理解していないとできません。ですから、設計者が現場のオペレーションができるということではないでしょうね。もちろん設計している人間がより理解を深めるために現場に行くことはあるでしょうけどね」

 

ーー現在のパワーユニットの設計責任者というのは?

「表に出ていない人間ですし、これからも出ないと思います。

 昔のLPL(ラージプロジェクトリーダー=総責任者)というようなかたちでは運営していないんです。今は設計者もいれば、システムをまとめる人間もいるし、テストをまとめる人間もいるし、それぞれがそれぞれの立場で責任を担っていかないと、勝てるパワーユニットにはなりません。そうやって、分業というよりも、膝を突き合わせてというか1日中常に寄り集まって作業を進めているわけです。

 それを統括する立場が私で、それぞれの状況を見ていますが、設計責任者という位置づけではなくて、F1プロジェクトの責任者が私だということになりますね。昔のLPLは技術だけでしたが、今はそれだけではないということですね。私は最終的にレース活動全体の責任を取る立場でもあるので、先週はWTCCでマラケシュにいて悲しい思いをしてきましたけどね(苦笑)」

 

ーー今回のF1活動では予算も随分小さいということでしたが?

「人も少ないですし、それだけ開発にかかる予算も小さいですね。というか、今はそんなにモノを作らないですから。

 今までならAとBとCを作って試してどれが良いかを考えて、BとCのどちらかだからまたもう1個作ろうか、みたいなことでした。でも今はモノを作って試してパワーユニットがまとまるような簡単なレギュレーションではないんです。考え抜いてから作らなきゃだめなんです。他のメーカーのエンジニアの方たちもきっとそんな風に考えておられると思いますし、今回こうして初めてお目にかかったので今後はそんな話もしていきたいなと思っていますけどね。このレギュレーション自体はエンジニアにとっては非常にチャレンジングで、自分の知恵を試されるようなものですね。

 このF1パワーユニットのような複雑なシステムって、モノを作ってしまうともうダメなんです。作ってしまうと、答えが出て来るじゃないですか? そうするとそれに縛られてしまう。目の前のそれを直そうとする。でも正解はその先にないかもしれないんです。そうじゃなくて、もっと手前で頭の中で考えないとだめなんです。複雑になればなるほど、作ってしまうと固定概念に囚われて、なんとかそれをモノにしたいとハマってしまうんです」

 

ーー2013年5月の時点で2015年からの参戦を決めたホンダさんとしては、その考える時間が足りなかった?

「考える時間が足りないんですよね、圧倒的に。技術面を担当する我々研究所の側から言うと、普通に考えたら2016年からの参戦くらいが妥当じゃないかという意見もあったくらいです。今はすごく頑張っているつもりですけどね」

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

 

Related Articles

Comment

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. コメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

Recent Post【最新の記事】

Calendar【日付で記事検索】

2021年8月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun
« Jul    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031