【特別記事】F・アロンソ「2026年に向け、今までになくワクワクしている。自分の衰えは感じない」
2026年はホンダとタッグを組みワークスチームとして出発するアストンマーティンのフェルナンド・アロンソが、新たなシーズンに向けたチームの状況、自分自身の状況、そして今の心境を語った。
【まとめ】
・2026年の新たな挑戦に向け、2023年以上にワクワクしている
・新ファクトリー、新風洞、新人材と、成功に必要な全てが揃っている
・ニューウェイは究極のパフォーマンスだけを追求している
・若いチームには成功を収めるための教育が必要
・チーム体制変更は以前から準備されたものであり不安はない
・2026年はオーバーテイクが難しい?
・ドライバーの腕もさることながら、重要なのはマシン性能
・自分の衰えは感じない、経験値で成長している
【2026年に向けた期待感の高さ】
ーー2026年の新時代を迎える前に、これまでのアストンマーティンの成果をどのように評価していますか?
「僕らは期待したほど速くはなかったし、2024年もタフでチャレンジングだったけど2025年もそれと似たようなものでしかなかった。僕らは苦戦してきたし、それを隠し立てするつもりもない。開幕前のテストの時点から比べればいくつか低調な時期もあったし、酷いシーズンになると思われるような状況だった。それでも僕らは常に自分たちに厳しく臨み、充分な速さがないという現実を受け入れて向き合い、毎レース週末ベストを尽くしてトラックサイドでも可能な限りの速さを引き出そうと努力してきたんだ。その結果として何度か入賞を果たすことができた。だけどそれを大喜びしているわけにはいかないし、本当に厳しいシーズンだったし別れを告げられて嬉しいよ。2026年が楽しみだよ」
ーー2026年に向けて今の心境は?
「すごくワクワクしている。アストンマーティンに加入した2022年シーズン後のオフと同じくらいワクワクしているよ。あの時はチームが前進していることが手に取るように分かっていたし、2023年が素晴らしい1年になることも分かっていたから、本当にワクワクしていたんだ。そして今年はレギュレーションが刷新されて、どんなレギュレーションなのか、どのチームが良いスタートを切るのか、未知の要素も多い。だからこそすごく楽しみだ。もちろんタフな挑戦になることも分かっているよ。今までのところ僕らはトップ争いができる位置にはいないからね。でもドライバーとしても興味深いのは確かで、マシンが大きく変わってドライビングスタイルも変わるだろうし、開幕までに許されるテストも決して多くはないし、間違いなく適応するのに充分な時間があるとは言えない。だからオフの間にシミュレーターで可能な限り準備を整えておかなければならないし、とても短いオフの間にメンタル面もフィジカル面もしっかりと準備をして2026年に向けて切り替える必要がある。間違いなくエキサイティングな時間だよ」
ーー2024年に契約延長した時、2026年に最も優れたパッケージになるのはアストンマーティンだと語っていました。
「今もそう考えているよ。新ファクトリーが完成し、風洞も最新型に生まれ変わって稼働を始めている。エイドリアン・ニューウェイ、アンディ・コーウェル、エンリコ・カルディーレがいる。おそらく最高の2人の人材がいて、1人は車体開発とチーム統括を、もう1人がエンジンと車体の統合とチーム統括を並行して進める。そしてローレンス(・ストロール)という強力なリーダーがいる。素晴らしい人材と素晴らしいファクトリーが揃い、全てをまとめ上げるだけだ。ただし彼らはまだここに加わって数カ月で施設も人材も真新しいけど、ひとつのシステムにまとまるために数カ月というのは充分な期間だと思う。僕としてはアストンマーティンは成功は約束されていると思うし、問題はそれがいつになるかだ。それを少しでも早く実現するだけだよ」
【ニューウェイをトップとしたチーム体制】
ーーエイドリアン・ニューウェイの技術的なリーダーシップはどのように見ていますか?
「エイドリアンが重視するのはたったひとつしかない、それはパフォーマンスだ。それ以外には何も関知する隙もない。究極のパフォーマンスと完璧さだけを追い求めているんだ。彼は素晴らしい競争者であり、素晴らしいリーダーだ。これまでこのチームはまだそのレベルに到達できていなかったけど、彼が加わったことでチーム全体がもっと極限までパフォーマンス志向になるだろう。そのアプローチをチームの全員が受け入れることができればね。ただしまだ新しいチームであることも忘れてはいけないと思う。アストンマーティンが立ち上がった時の基盤となったのは、旧態依然とした300人程度のチームでしかなかったんだ。しかしそこから僅か2〜3年のうちに急速に拡大してきた。F1界での経験もまだ多くないスタッフも少なくないけど、若くてエネルギッシュだ。彼らはエイドリアンのような人物やリーダーたちの指導を必要としている。F1という世界で成功を収めるための方法を彼らに教えなければならないんだ。そういう意味で、F1界で最も大きな成功を収めたエイドリアン・ニューウェイとアンディ・コーウェルの2人が揃っているというのは素晴らしいことだよ」
ーーニューウェイイズムはアストンマーティンに充分に浸透したでしょうか?
「彼はとても特別な人間だし、彼の考えていることややっていることを完全に理解できるのはごく一部の人だけだ。だから時間が必要だ。最初のうちは彼の一言一言、アイディア、会話に耳を傾け注意深く受け止めて、理解しようと努めてきた。そういったプロセスを経てチームとして成長してこられたんだと思うし、本当に特別な経験だった。彼からの質問やアイディアはチーム、マシン、ドライバーにとって良い解決策を見つけ出すためのものであり、特にターンインのアプローチに関してのものだ。2026年型マシンはこれまでのクルマとは大きく異なるものになるし、最高速もタイヤも違う。そういった状況を踏まえて、ドライバーがどんな状況に直面することになるのか、ラップの中の特定の瞬間であったり、予選と決勝の違いであったり、様々なことを予測して構築しているんだ」
ーーアンディ・コーウェルがホンダやアラムコ、バルボリンとの定型業務に専念することとなり、ニューウェイがチーム代表を兼任することになりましたが、その点に不安は?
「それはないよ。レース現場には強力なチームがあるし、アンディ・スティーブンソン(スポーティングディレクター)のように経験豊富な人材や素晴らしいレースエンジニア、パフォーマンスエンジニア、ストラテジストもいるし、ランス(・ストロール)と僕を合わせてのべ35年の経験があって、成功を収めるためにレースチームとして欠けているものは何もない。その点は心配していないし、必要なのは速いクルマだけだよ」
ーー自分がプレイングマネージャーとしてチーム代表を兼任するという考えは?
「サッカーではそういうこともあったよね、チェルシーのイタリア人選手だっけ?(笑) 僕はドライビングだけで充分だよ。僕らはチームとしてとても強い絆で結ばれていて一致団結していて、ここからの数年間に向けて特別なものを作り上げる過程にあるんだ。ファクトリーや風洞、素晴らしい人材などあらゆる要素を生かしながら細かな調整を施して最大限に効率よく機能するように構築している。あとはレースをするだけだよ」
ーーローレンス・ストロールのリーダーシップについてはどのように見ていますか?
「ローレンスとは週に一度は電話で話しているし、彼が現場に来た時は毎日ランチかディナーをともにして話をするんだ。彼が何を考えているのか、彼もチームにとって何が最善なのか、何が足りていないのかを尋ねるし、常に情報を共有し合って、僕もチームが進めているあらゆることに深く関わっている。もちろん僕には決定権はないけど、常に情報は共有してもらっている。だから今回の体制変更に関してもローレンスが以前から考えていたことは徐々に伝わってきていたよ。これは2025年の結果を受けての決定ではなく、もちろん2025年は僕らにとって厳しいものではあったけど、チームの長期的計画を変えるようなものではなかったんだ。いくつかのレースで数ポイントを争うことしかできないというのは満足できる状況ではなかったけど、それが今回のチーム組織の大変更に影響したわけではないよ」
【2026年型マシンと自身の速さについて】
ーー2026年はマシン規定が大きく刷新されますが、F1はどのように変わるとみていますか?
「結局のところ、マシンもF1自体も大きくは変わらない。ストップウォッチとの戦いであり、ライバルとの戦いでもある。レギュレーションでダウンフォースが少し減ってグリップレベルが下がりマシンパフォーマンスは少し変わるだろうけどね。だけど僕が気にしているのはオーバーテイクのしやすさだけだ。シミュレーターをドライブした限りでは、ストレートでは前も後ろも誰もがDRS(アクティブエアエロ)を使うことができるから、相手との差を生み出すには(エネルギー回生システムの)エネルギーを使うしかない。でもエネルギーを使ってしまうと次のストレートで(エネルギーが足りず)その代償を支払うことになり、抜き返されてしまうかもしれない。だからそういう場所ではオーバーテイクを仕掛けるのは避けるか、オーバーテイクしない方がマシかもしれない。でないとタイムロスを喫してしまうからね。1回のオーバーテイクにどのくらいエネルギーを必要とするのか、それは実際に走ってレースをしてみなければ分からないし、推測するのは難しい。そして一番大きいのはタイヤだ。3ストップや4ストップのレースならピットストップ直後はタイヤパフォーマンスの差が大きいからエネルギーを使わなくてもオーバーテイクが可能だ。もしかするとオーバーテイクを増加させるための鍵はタイヤになるんじゃないかと思う。マルチストップになるようなタイヤアロケーションにすることが、観客にとってショーアップに繋がると思う」
ーー相変わらず後続を抑え込むテクニックがものを言うレースになるのでしょうか?
「2025年まではオーバーテイクが難しかったから、予選で前に出てしまえばあとは後続を抑え込むことも可能だった。経験を様々なかたちで生かしてコーナーごとに違った工夫をして、抜かれないようにしていたよ。もちろんカタールのように15台も後ろに抑え込むより5秒引き離してマージンを持って走りたいけど、それは不可能だったからね。2026年もエネルギーマネージメントをあちこちで上手く使って予想外の結果を導き出せるかもしれない。でも、頭を100%フルに使って7位や6位になったとしてもそれを誇ることなんてできない。むしろ、頭を使う必要もなく20秒差で全勝できる方が良いよ!」
ーー2025年はマックス・フェルスタッペンが最速の呼び声が高かったにもかかわらずタイトルが獲れず、やはりものを言うのはマシン性能であり、最速のドライバーが王者になるとは限らないということでしょうか?
「(2006年以降の)この19年間ずっとそうだよ! 2025年で20年になるね(笑)。マックスが信じられないほど素晴らしいドライバーだということは誰もが知っているし、マシンの全てを引き出して走り勝利を収めてきた。マシンのおかげでなく彼の力による勝利もあったかもしれない。それは去年もそうだった。マクラーレンの方が速ければ彼らが勝つための条件が揃っていると言えるし、レッドブルが速ければマックスにもチャンスがある。結局のところ、マシンのパフォーマンス次第だ。僕の場合は、最速のマシンさえ用意されればチャンピオンになれると言うだけの自信はあるよ」
ーー新規定の下で何かを見付けたチームが優位に立つことになるでしょうか?
「F1ではいつの時代も同じで、何かマジックを見付けた者が勝つんだ。トラクションコントロールが禁止された時のことを覚えているけど、スロットルコントロールが上手いドライバーが有利だと言われたけど、レッドブルがエキゾーストブローイングを発明した途端それだけでレッドブルだけが勝てるようになり他のドライバーより100ポイントも多く獲得できたんだ。クレバーなドライビングで稼げることは事実だけど、マシンの差が0.5秒もあればドライバーの腕でその差をどうにかすることはできない。新規定の下では2025年よりもドライバーが生み出せる差が大きくなればと思うし、それがどこにあるか模索するのは楽しみだけど、(アクティブエアロの)FIAによる自動検知稼働システムで自動で切り替わるとかエネルギーマネージメントもほぼ自動的に行なわれるなど、あまりにオートマティックすぎるところもあると思う。ドライバーが腕でどうにかできる部分は充分じゃないし、規制が多すぎるような気もする。もっとドライバーに自由度があればと思うけどね」
ーー自分自身の衰えは感じていませんか?
「この2年間、マシンには外から見えない問題と弱点を抱え続けてきたし、マシンのパフォーマンスはリザルト通りではなかった(マシンの実力以上の結果を出してきた)と思う。僕個人としてはこの2年間で見せてきたパフォーマンスのいくつかは20年前の自分では不可能だっただろうというものもあった。だからこそ僕は自分自身に満足しているし、リラックスもしている。そして楽しんでいるし、2026年に向けて自信を持っているんだ」
ーー年齢とともに速さが衰えることはないと思いますか?
「ドライバーというのは時間とともに上達するものだと思う。なぜなら経験が増え、過去に経験したのと同じシナリオに直面した時にはより上手く対処することができるようになるからだ。そしてミスから学び、様々なドライビングテクニックを身に付け、様々なタイヤモデルをドライブしてタイヤの扱いを学び、チームとも経験を通しても成長していける。問題は年齢とともにモチベーションを失い始め、毎日トレーニングをするハングリーさを失い始めるということだ。ファクトリーに行ったり、マシンに乗って最大限のパフォーマンスを発揮することに対するハングリーさも失われる。でも僕には今のところそういうことは起きていない。反射神経や視力の低下で100%の速さが出せないことは誰にもあると思うけど、加齢によって速さが失われることはないと思う。少なくとも僕の場合はそうだ」
(text by 米家 峰起 / photo by Aston Martin)




アロンソのインタビュー、ありがたいです!
年齢なんて関係ない熱量、そしてある意味で少年のようなレースを楽しむ心。
羨ましい限りです。
シーズン中もいつまでも上機嫌でレースをしてくれると良いのですが・・・(2015年も最初はそうだったんだけど)