【アプレゲールですいません。】ラリーの映画
ブラジルからの帰りの飛行機の中で、『OVER DRIVE』という映画を見ました。今年6月に公開された、ラリーに挑戦するドライバーとメカニックの兄弟の心温まるヒューマンストーリーです。
……はい、まぁ皆さん大人の事情とかよくご存じだと思いますのでぶっちゃけなくてもお分かりかと思いますが、トヨタさんがおカネ出して電通さんが作った映画です。
ストーリーに関しては、まぁ好き嫌いは人それぞれなので何も言いますまい。
あくまで個人的な感想ですが、レース(ラリー)と思春期の恋心を上手く重ねて昇華させたのは上手いと思いました。でも『RUSH』みたいな、もっと深い人間の感情とか苦悩とか極限の世界に生きるもの同士だからこそ深い部分で分り合える友情を描くような感じではなく、良く言えばライトで誰にでも分かりやすい、悪く言えば少々チープな感じが……。
それは人ぞれぞれの好みなので良いんですが、とにかく気になったのはあまりに現実味がなさすぎること。
日本を中心に開催されるラリー選手権が題材なんだけど、これが若者にすごく人気があってイケメンドライバーが若い女の子にキャーキャー言われていたり、ドライバーのゴシップが週刊誌に載るとか。それは架空の話だからと100歩譲るとしても、年間13戦で開催されるローカルラリー選手権がお台場や首都高で行なわれたり、インドやマレーシアまで遠征していたりとあまりに現実味がなさ過ぎる。
ラリー会場を盛り上げるのがDJだったりダンサーだったり、表彰台の演出もそんな乗りだったり、状況解説を兼ねて入るテレビ実況がFMラジオのDJみたいに英語混じりで超キモかったり、こんなので本当にラリーの魅力が正しく伝わるのかと首をかしげるばかり。
ドライバーはバカスカタバコを吸ってるし、やさぐれ感を演出するための“下げ”なのかと思ったら最後までそれは咎められることもなく、ボク心を入れ換えました!みたいなのもないし。最後は一番大事なチャンピオン争いのところが驚異的なペースで超駆け足で進んで、何の説得力もなく呆気なく決まってしまうし。
一般の人に分かりやすくするために、ある程度のディフォルメは良いと思うんです。これだけ莫大なおカネを掛けてラリーをプロモーションするなんて、トヨタさんでもなきゃできないことだし、ものすごく良いことだし貴重なチャンスだと思います。さすが世界のトヨタ。F1をやってる某社はそんなことやれないですから(やりたいと思っている人もいるけど、カイシャとしてはやる気なし)。
でも、だからこそ、ちゃんとすべきところはちゃんとすべきだったんじゃないでしょうか。
これを見てラリー面白そう!と思ってくれた人の中には、本物のラリーを見てガッカリする人もたくさんいるんじゃないでしょうか。
個人的には、森川葵ちゃんが可愛いから最後まで見たけど、そうじゃなかったら……っていう感じ(苦笑)。
勿体ないといえば、映画『OVER DRIVE』で検索すると、出てくるのがこれ(http://overdrive-movie.jp)。
「画面を横にしてご覧ください」。
コンピュータの画面を横にしろって? スマホじゃない人は無視? モロにスマホで見る世代をターゲットにしてるんだろうけど、これはあかん……。勿体なすぎます。
世の中には勝手な思い込みで人のことをああだこうだと決めつけるバカがいるので念のため言っておきますが、僕は別にトヨタさんが嫌いだからこんなふうに書いているわけじゃありません。いちモータースポーツファンとして感じたことを感じたままに書いただけです。
冒頭のTwitter画像にもあるとおり、12月9日にはブルーレイとDVDも発売されるようなので、気になる方はチェックしてみてください。
(text and photo by 米家 峰起)
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