【アプレゲールですいません。】2018年カレンダー発表、F1はどこにいく?
6月19日にジュネーブで開かれた世界モータースポーツ評議会で、2018年のF1開催カレンダーが承認されて発表されました。
例年であればこの時期にはまず“暫定カレンダー”が承認されて、そこから各グランプリの主催者と駆け引きが繰り広げられて調整されて9月にようやく正式決定、という流れなのですが、今年はここで正式決定のようです。世間的に見ればその方が当たり前だし分かりやすいですもんね。このあたりにもおそらく新オーナーであるリバティメディアの意向が働いているのでしょう。
にしても驚きだったのは、フランス〜オーストリア〜イギリスというF1史上初の3週連戦があること。
ここ数年で何度か暫定カレンダーにそういう案が盛り込まれたことはありましたが、これはまさにバーニー流の駆け引きで、その3連戦に入っているグランプリはどこか落ちるぞ、という脅しのようなものでした。実際、3連戦が行なわれたことはなかったわけです。
しかし今回の場合、フランスGPの復活にはFIAもリバティメディアも歓迎ムードなので駆け引きなどあり得ませんし、オーストリアにしてもイギリスにしても今さら動くとは思えない。とにかくこれで“正式決定”なのです。
しかもその後に1週間のインターバルを挟んだだけでドイツ〜ハンガリーの2週連戦。つまり6月下旬から7月末にかけて6週間で5戦もやるわけで、これは常軌を逸していると言わざるを得ません。
後半戦にはイタリア〜シンガポール〜ロシア〜日本という、ヨーロッパとアジアの往復が2連続。ここも5週間の間にソチから始まる4戦が詰め込まれています。
年間21戦というのは事前に言われていた通りですが、まさかここまで詰め込みの過密スケジュールになるとは。
ファンとしては1戦でも多く見られるのが嬉しいという人もいらっしゃるかも知れませんが、僕は個人的には年間16戦くらいが妥当ではないかと思っています。あまりに頻繁にレースが行なわれていると、1戦ごとの重みが減って、内容や素晴らしいバトルを噛み締めることなく次から次へと進んでいってしまっている気がします。昔のように記憶に残る名勝負と呼ばれるシーンが減ってきている気がするのは、バトルの質の変化ではなく、見る側の見方が浅く広くなってしまっているからではないかという気がするんです。
膨大な量の情報が次から次へと流れて消えていく今の情報多寡の時代に合わせたやり方なのでしょうが、それはある意味で大量消費と同じことで、1戦1戦のありがたみを感じることなく消費してしまっている気がします。短期的な視点で見れば世の中へのF1の露出が増えて良いのかもしれませんが、長期的な視点で見ると、それはF1を自ら安売りしF1の価値を下げることになるのではないかという気がします。
インディ500やル・マン24時間があれだけの注目を集め盛り上がるのは、インディカーシリーズやWECの中の1戦として組み込まれているとは言え、それ自体が年に一度のお祭りだからです。もし年に何回もインディアナポリスで500マイルレースをやっていたら、そこまで盛り上がりはしないでしょう。
いずれはF1も年間25戦くらいまで増やすと報じられたことについてはリバティメディア関係者が否定して「まずは今のかたちのままでF1そのものの価値を高めることに集中したい」と語ったものの、彼らがいう価値”とはいったい何なのか。F1は年間36戦も開催しているNASCARとは本質的に違うということをどこまで理解してくれているのか、不安です。
冒頭の写真はカナダGPの金曜ランチタイムに突然行なわれたFOM(リバティメディア)3首脳の記者会見ですが、はっきり言ってこのお偉方が喋っている話は理屈っぽくてワクワク感は全くと言っていいほどありませんでした。
今のところ、リバティメディア主導で進められているF1をよりエンターテイメント化すること、ファン第一主義でサービスを高めることは上手くいっているように見えます。しかし、知らず知らずのうちにF1の本質的な価値が歪められているとしたら、それは自ら首を絞めていることになるのかもしれません。
(text and photo by 米家 峰起)
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