REGULAR【連載】

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 F1マシンのセッティングにはバラストが欠かせないと言われます。ザウバーがシーズン序盤に苦労したのは、フェラーリのパワーユニットが重たかったせいで車体が最低重量を上回り、バラストを搭載することができなかったためだというほどです。

 

 バラスト搭載のためにあまりに軽量化にコストがかかるということで、近年はマシンの重量配分は制限が強化されてバラスト搭載の範囲が狭められています。ですから、各チームとも以前ほど大量のバラストを搭載するということをしていませんが、それでも少ないよりは多い方が圧倒的に有利であるということに違いはありません。

 

 2015年の技術規定でもマシン最低重量701kgに対してフロントタイヤにかかる重量は319kg(45.4%)、リアは375kg(53.5%)以上であれば構わないと定められており、重量配分は前後比「45.5:54.5」〜「46.5:53.5」の間で調整が可能なのです(数値は全て予選時のドライタイヤ装着状態)。

 

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 重量配分は前後それぞれのタイヤにかかる重量を測定して算出しますから、このように4つの重量計を用意して、その上に4輪を乗せて、それぞれの重量計の数字を読み取ります。4つの合計が車重、前2輪の合計と後2輪の合計の比が重量配分、そして右側と左側の重量は可能な限り同じにするといったように、この4つの重量計を使って重量配分セットアップの確認を行なうわけです。

 

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 ちなみに、重量計というとバネの伸び縮みで目盛りが動くタイプのものを想像しがちですが、それでは温度や金属の経年変化によって精度が変わってきますから、F1界で使用されているのは重力加速度を利用したデジタルスケール、いわゆるストレインゲージです。バネ式だと測定部の高さが動いてしまいますから、4輪個別では正確な測定ができないという理由もあります。

 

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 バラストはマシン全体の重心を上げないよう、なるべく低い位置にマウントされています。一般的なのはフロアの先端部分(Tトレイ)やフロントウイングなどですが、もしかすると表からは見えない我々には想像もできないような場所にもマウントが用意されているかもしれません。

 

 このウイリアムズの写真では、Tトレイのカーボンカバーを外した状態で中の金属製バラストが見えています。先端部だけでなくモノコックのキール両脇にも金属パーツが見えています。これを見る限り、ウイリアムズのマシンはバラストが多く、本体は結構軽く仕上げられているようです。このあたりにもウイリアムズ躍進の鍵があったのではないかと推測されます。

 

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 こちらはマクラーレンの写真ですが、どのチームもフロントウイングの中央部分にはこのようにバラストのマウントを用意しています。蓋を開けて、中にこうした小さな(だけど非常に重い)金属の塊を入れたり外したりして重量配分バランスを調整しているのです。

 

 フロントウイングは重心から最も遠い先端部にありますから、小さなバラストでもてこの原理で大きく効いてくるわけです。ちなみに、この小さな金属の塊で0.4〜0.5kgほどです。工具箱の中に入っている黒丸は、バラストの蓋を閉じるためのネジの上から貼るステッカーです。ネジむき出しでは美しくないので、こうして黒いステッカーで目立たなくしているのです。わざわざそのためにカーボン地のステッカーを用意しているチームすらあるほどです。

 

(text and photo by 米家 峰起)

 

 

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