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2020
【2020 Rd.1 AUS】ハースVF-20 注目ポイント・後編「レーシングポイントのコピーとは一線を画すフェラーリとの技術提携」

【2020 Rd.1 AUS】ハースVF-20 注目ポイント・後編「レーシングポイントのコピーとは一線を画すフェラーリとの技術提携」

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 2020年開幕戦オーストラリアGPでの『ハースVF-20』のディテール写真集から、『F1LIFE』の注目ポイントを解説しておきましょう。

 

 VF-20のロールフープ部のエアインテイクは、前後2段に分かれているアルファロメオとは異なり、ワークスフェラーリと同様の上下2分割①。そしてロールフープの下②も実はエアインテイクになっています。これもワークスフェラーリ同様で、つまりリアカウル内部の冷却系レイアウトはワークスと同じようなスタイルを採っていることを意味しています。

 

 パワーユニット周りに張り巡らされているピンク色③や黒色④の配管は、オイルラインや冷却系からエアを抜くためのもので、接続されたポンプによってフルードを強制的に循環させて配管内に混入したエアポケットを抜いていきます。この作業が不充分だとベイパーロック現象が起きたり、ハードウェアそのものにダメージを及ぼしたりといったことに繋がります(マクラーレン・ホンダ時代にもそのせいでいくつか“冷却系の”問題が起きました)。

 

 

 サイドポッドはメインのエアインテイク⑤とは別に、内側にもうひとつ小さなエアインテイク⑥が存在します。これもワークスフェラーリのSF1000と同様の手法で、やはりリアカウル内の冷却機器レイアウトはワークスと同じ方式を採用しているというか、パワーユニットやギアボックスだけでなくハイドロ系や冷却系も全てまとめてフェラーリからカスタマー供給を受けているものと推察されます。

 

 リアビューミラー⑥はモノコック側から伸びたステー⑦に対し、コの字型のフェアリング⑧から吊り下げるようなかたちでマウント。フェアリングの後方⑨はサイドポッドへ伸びてポッドフィンと接続されていますが、このマウント部分⑩やミラーの吊り下げ箇所⑪もやはり金属部品で補強されています。

 

 

 こちらはHALOのフェアリングを取り外したマウント部分⑫が見える珍しいショット。下位カテゴリーでは廉価版のチタン製HALOをそのままモノコックにマウントしていますが、F1では各チームが独自にフェアリング⑬を施して空力効果を追求することが許されています。

 

 F1の場合はHALO内部にコクピットへ向けたADR(アクシデントデータレコーダー)のハイスピードカメラが装備されているため、マウント部分近くからそのケーブル⑭を取り込んでいます。

 

 

 フロアのエッジ部分に刻まれたスリットが交錯する箇所⑮はやはり金属部品で補強。リアタイヤ前方の部分はカーボンではなく3Dプリンターで制作したとおぼしき樹脂製になっており、2枚の水平フィン⑯や翼端板⑰のような構造が加えられているうえ、リアタイヤ内側のフロアまで繋がってスリット⑱を構成しているなど複雑な処理が施されています。

 

 リアサスペンション⑲はフェラーリSF1000と同型のように見え、フェラーリからカスタマー供給を受けているものと考えられます。

 

 Tウイングの接続部⑳も金属部品で補強されていますが、なぜか2箇所の固定ネジがなくタイラップで留めた状態で木曜車検に臨んでいます。リアウイングのセンターピラーもやはり金属で補強されています。こうしてマシンの各所に金属部品が使われていることを見ると、ハースのマシンは重量面で小さくないハンディを背負っているのではないかと考えられます。

 

 リアエンドは昨年型から大きく変わってはいませんが、リアウイングの翼端板は昨年型に比べて大きく進化。中段部分のスリット㉑が一般的なスダレ型からS字型に変わり、より大きな気流の跳ね上げ効果を発揮しているように見えます。これに呼応するように後端部にも跳ね上げ方向の整流フィン㉒が上段から下段まで計5本追加されています。

 

 翼端板前端のスリット㉓はなくなり、下端のスダレ型フィン㉔も縮小するなど、リアウイング翼端板周りの気流制御方法を刷新してきているのが分かります。

 

 

 リアサスペンションは各アームの整流効果を意識した湾曲㉕やアップライト側の取り付け部㉖、中間位置に全長調整のための回転部分を備えたプルロッド㉗など、全てがフェラーリSF1000(☝️写真)と同じ。しかしリアアップライト内側の整流フィン群は全く異なる手法で、これは今年からブレーキダクトがリステッドパーツとして指定されカスタマー供給を受けることができなくなったことも影響しているようです。

 

 フェラーリ製ギアボックスの下には大きな空間㉘がありますが、フロアとの間にフェアリング㉙を装着することでディフューザーに向けてトンネルを形成し、さらに勢いよく気流を掃き出すような効果を持たせています。

 

 ディフューザーにもスロットの間隔を維持するための金属製補強部品㉚が装着されていますが、基本的な構成はフェラーリと同様。ただし中央部分の湾曲形状㉛はやや異なり、メルボルンでは一番上のフィンは3Dプリンターで作成されたもの㉜が装着されていました。

 

 ハースはフェラーリからパワーユニットを中心としたギアボックス、リアサスペンション、冷却系などリアエンド全体だけでなくフロントサスペンションも含めてメカニカル面は全てカスタマー供給を受け、つまりフェラーリの車体をベースにモノコックと空力面を自社製作することでマシンを作り上げており、その空力開発コンセプトにはシーズンを追うごとに独自性が増していっています。こうしてマシンのディテールを見ても、同じようにコピーマシンとして比較されがちなレーシングポイントのRP20とはマシン製作のアプローチの仕方が全く違うと言えるでしょう。

 

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