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2019 Rd.9 AUSTRIA
【Rd.9 AUT・徹底分析①】予選車速詳細分析、レッドブルの空力改善がハッキリと出る

【Rd.9 AUT・徹底分析①】予選車速詳細分析、レッドブルの空力改善がハッキリと出る

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 第9戦オーストリアGPでの各チームの実力を、車速を詳細に比較することで分析してみよう。

 

 予選の各自の最速タイムを記録したラップの車速を数値化、グラフ化したのがこちら。

 

※この記事においてターン8、ターン9と表記しているのは、コースマップ上のターン9とターン10の誤表記です。

 

 全体的な傾向としてストレードエンドではフェラーリが頭ひとつ抜けているが、ストレート車速で各チーム間にそれほど大きな差があるわけではない。全開率が70%とストレート全開区間の長いレッドブルリンクでは、各チームが決勝での競争力を考慮して最高速を周囲のライバルと合わせ込んできており、その状態でのダウンフォースレベル=コーナリング性能が予選でのラップタイム差につながるというかたちになった。

 

 ターン6以降の中高速コーナーのボトムスピードにそれがはっきりと表われ、この区間では各マシンの車速差が大きく開いている。最高速が330km/h近くに達するレスダウンフォース状態での空力効率が問われる戦いになったという言い方もできるだろう。

 

 

ストレートラインスピード比較

各チームがほぼ横並びにセットアップ

 

 ストレートラインの速度を比較するため、最終コーナーからターン1、そしてターン3手前までの車速グラフだけを抜き出したのがこちら。

 

 前述の通り、ストレートの車速は各車ほぼ横並びになっており、これは決勝でのバトルでの競争力を考えてのもの。

 

 その中でもフェラーリはトップエンドが伸びているが、同じパワーユニットを使用するハースだけはストレート後半の最高速が伸びず、高速コーナーは抜群に速い。ハースだけはライバルたちと異なり、最高速を合わせ込むのではなく予選ラップタイム最優先のセットアップアプローチを採ったようだ。これによって予選ではQ3に進出し中団グループ最上位を獲得したが、しかし決勝での後退劇を見ると、このアプローチが正解だったのかは非常にあやしいところだ。

 

 逆に同じパワーユニットのアルファロメオはストレート前半の加速は鈍いが(ここでのターン9速度はアタック前のためあまり意味がない)、ストレート後半ではライバルと同等以上の速度に達している。同様にウイリアムズも立ち上がりは遅いがストレート後半の伸びはある。

 

 中低速コーナーであるターン1ではルノーが最速で、メルセデスAMGはまずまずだがターン3や4を見てもいつものような低速域での圧倒的速さはない。これがメルセデスAMGが予選でも苦労した理由のひとつなのだろう。

 

 

 トップ3だけを比較すると、ストレート前半の加速はメルセデスAMGの方が鋭い。逆にフェラーリは最高速はトップでも中速コーナーからのトラクション性能は決して良くはなく、ストレート前半ではレッドブルにも負けている。

 

 そして250km/h以上となるストレート後半ではレッドブルの車速の伸びが鈍り、逆にフェラーリはここから伸びていく。ターン1からの立ち上がりでもレッドブルが先行するが、ストレートエンドではフェラーリが最速の330km/hを記録している。 

 

 これらを総合すると、最高速の伸びはパワーの差もさることながら、車体のドラッグ量の多寡が左右していることが分かる。これはレッドブルリンクに限らずどのサーキットでも見られる傾向だ。

 

 ただしパーティモードと呼ばれる予選スペシャルモードでパワーを大幅に上げて(20kW向上とも言われる)車速を稼ぐ予選ではこの差になるが、このモードが使えない決勝ではフェラーリのストレートでのアドバンテージはほとんどなくなる。そしてコーナリング性能ではライバルに劣っているため、相対的に決勝では厳しい戦いを強いられることになるのだ。

 

 

 ルノーは低速コーナーが強みだが、レッドブルリンクは低速コーナーが多くはなく(純粋な意味での低速コーナーはターン3のみ)、強みが生かせる場所が少なかった。その一方でルノーの弱点である中高速コーナーが実は多く、ターン6〜9でのロスが響いて中団グループの中でも下位に沈んでしまったことが分かる。

 

 

中高速コーナリングスピード比較

各マシンの実力が明確に出る

 

 中高速コーナリング性能を比較するためにターン6〜9の車速だけを抜き出したのがこちら。

 

 レッドブルリンクはダウンフォース量の多寡が効いてくる200〜250km/h前後のコーナーが多く、予選のラップタイムだけを考えればダウンフォースが欲しい。しかし決勝を考慮すればストレート車速も必要であるため、削ったダウンフォース量でいかこの中高速セクションを抜けるかが鍵になる。

 

 そんな中でターン6〜9のボトムスピードで速さを見せているのが前述の通りハース。メルセデスAMGやレッドブルさえをも上回るコーナリング性能(車速)を記録しているが、元々の空力性能の高さを差し引いてもこれはダウンフォースを付けすぎてしまった結果だと言うべきだろう。

 

 

 ハースを除けばコーナリング車速が速いのはメルセデスAMGとレッドブルで、これまでこの速度域で苦労してきたレッドブルRB15の空力性能がようやく今回のアップグレードでメルセデスAMGに並ぶほどにまで改善されてきているのが数字に表われている。

 

 各コーナー間の短い全開区間でもフェラーリは最高速で優位に立っているが、レッドブルは単純な長いストレートエンドでは最速ではないがこうしたコーナーからの立ち上がりで加減速が連続する区間ではフェラーリと同等かそれに近い車速の伸びを見せている。それだけコーナリング性能と加減速のつながりがスムーズだということだ。こういったところにも車体の空力性能向上が見える。

 

 ストレートラインでは各マシン間の差はほとんどなかったが、中高速セクションでは上位チームと中団グループの格差がはっきりと表われて車速差が如実に開いている。

 

 

 そんな中でハースを除けば中団グループの中で唯一トップ3チームに近いコーナリング性能を誇っているのがマクラーレンだ。スペインGPに投入した空力アップデートが効いて空力性能向上を果たしたというが、それがチームの飛躍に大きく貢献していることがこの車速グラフを見ることではっきりと分かる。

 

 それとは逆にルノーは空力性能がまだまだで、中高速セクションで速さを発揮できていない。

 

 そしてQ1敗退の常連となってしまっているレーシングポイントやウイリアムズは、コーナリング速度が明らかに遅い。トロロッソはそのどちらにおいても中途半端で、強みのないマシンになってしまっている。

 

 全開率70%とストレートが長いように見えるレッドブルリンクだが、ラップタイムを左右するのは中高速コーナーだ。この中高速コーナーのボトムスピードの順位がほぼそのまま予選結果順となっていることからも明らかだ。

 

 

(text by 米家 峰起 / photo by Red Bull, Renault, Pirelli)

 

 

 

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