【Rd.5 ESP・徹底分析②】コーナー重視と直線重視、バランス型と明確に3グループに分かれる中団勢
第5戦スペインGPでの中団グループ各マシンのパフォーマンスを、予選アタックラップの車速を分析することで解き明かしていこう。
各マシンの自己最速アタックラップでの、各コーナー及びストレートエンド(EOS)等での車速をまとめてみる。ダニール・クビアトとダニエル・リカルドはQ3に進出したがグラフ化したのはQ2での自己ベストタイム記録時、それ以外にもQ2敗退のランド・ノリスとキミ・ライコネンとセルジオ・ペレスはQ2、ジョージ・ラッセルはQ1で自己ベストタイムを記録した際の車速をグラフ化している。
全体のグラフを見ると、特にターン7〜9やターン12〜13の中高速コーナーセクションでトップ3チームと中団グループの差が顕著に出ている。
【中・低速コーナー】空力性能の高さはハースとルノー
ストレート重視はレーシングポイントとアルファロメオ
中団グループの7台だけを抜き出したセクター3のグラフがこちら。中高速コーナーではハースとルノーが速く、レーシングポイントとアルファロメオが遅い。まさに予選の勢力図通りの結果になっている。
ただしその中でもトロロッソとマクラーレンはコーナリングスピードが速いわけでもなく、全開区間の車速の伸びで稼ぐようなかたち。明らかに前者2チームと後者2チームでタイムの稼ぎ方が異なっている。
【高速コーナー】高速空力性能はハース、マクラーレン、トロロッソ
シーズン開幕当初の問題点解消が浮上のカギ
中団グループのターン7〜9の中高速コーナーを比較したのがこちらで、高速のターン9ではハース、マクラーレン、トロロッソだけがほぼ全開で通過できたのに対し、それ以外のマシンはスロットルを戻さなければターン9をクリアすることはできなかった。このあたりに高速域での空力性能の差がはっきりと表われている。
セクター3やターン7のような中速コーナーでは速さを見せるルノーだが、高速域ではやや苦しんでいるというのは興味深い。レーシングポイント、アルファロメオ、ウイリアムズはターン7でも9でも明らかに中団勢の中で遅れを取っている。
逆に中団勢の中で明らかにトップの空力性能を誇るのはやはりハースだ。
ターン9はコーナリング途中に風向きが変わるためマシン挙動が不安定になりやすく、開幕前テストではメルセデスAMGやマクラーレンのようにマシンバランスのトランジション(コーナリング中のバランス変化)が過敏でセンシティブな挙動に苦しんだマシンは高いボトムスピードが維持できなかった。彼らはこの2カ月間でしっかりとその問題を解決してきたというわけだ。
車速だけを見ればウイリアムズもライバルに特別大きな差を付けられているわけではなく、小さな差の積み重ねが現状のタイム差に繋がっていることが分かる。
【ストレート】ダウンフォース不足が露呈するレーシングポイント
依然としてダウンフォース豊富で中団トップのハース
中団グループのストレート車速を比較すると、同じフェラーリ製スペック1パワーユニットでもダウンフォースが多めのハースは車速が伸びず、アルファロメオは中団グループの中でトップの伸び。コーナーでは遅いがストレートで稼ぐという本家フェラーリと同じマシン特性のアルファロメオと、真逆のハースである点はシーズン序盤戦を通して変わっていない。
ルノーはスリップストリームに入った状態の数値であるため参考にしかならないが、スリップに入っていないアタックでも322km/hまでまずまずの伸びを見せていた。
レーシングポイントはストレートの後半でパワーと空気抵抗がサチることなく伸び続けており、コーナーでの遅さを見てもマシン全体のダウンフォース不足は否めない。
トロロッソも最高速の伸びを見れば同様にダウンフォース不足とも言えるが、コーナーでまずまずの速さを確保しているところを見ると、こちらは空力効率の良さを武器に最高速を伸ばしていると言えるだろう。
こうして見ていくと、ハースとルノーは完全にコーナリングマシン。アルファロメオとレーシングポイントは直線マシン。その中間点を突いてきているのがトロロッソとマクラーレンということになる。これが中団グループの勢力図がコース特性によってコロコロ入れ替わる理由であり、この傾向は今後も続いていくだろう。
(text by 米家 峰起 / photo by Renault, Haas, Toro Rosso, Pirelli)
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