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2018 Rd.15 SINGAPORE

【Rd.15 SGP】徹底分析②:Q3進出組は大きな不利に。トロロッソ低迷はギャンブル失敗ではなく戦略ミスのせい

 

 シンガポールGPの中団グループの争いは、珍しい展開になった。予選11位のフェルナンド・アロンソ(オレンジ色・太線)が決勝7位、予選12位のカルロス・サインツ(黄色・細線)が決勝8位、予選13位のシャルル・ルクレール(紫色・細線)が決勝9位となり、Q3進出組みの最上位はニコ・ヒュルケンベルグの10位だった。つまりQ3に進まない方が決勝の展開的には有利だったのだ。

 

 グラフ①のペースを見ると、ほぼ全車が同じようなペース。これはトラフィックの中で走っているため。しかしQ3進出組のハイパーソフトがタレてピットインをしたところで、前がクリーンエアになったアロンソが一気にペースを上げているのが分かる。サインツもこれに近いペースで走っている。

 

 

 逆にQ3進出組は中団グループ後方に回ることとなり、トラフィックに引っかかって大幅にタイムロス。ここから自身のピットストップまでのレース中盤に本来のペースで走ることができたアロンソやサインツは大きなアドバンテージを築いて7位・8位へ浮上することに成功したというわけだ。

 

 

 この展開が分かっていたフォースインディアは、中団トップにいたセルジオ・ペレス(ピンク色・太線)がレース序盤からプッシュして3強チームと同等のペースで走行。後続との間にピットストップ1回分のギャップを作ろうとした。

 

 しかしセーフティカーが入ってしまったことでそのチャンスは薄れ、ペレスのペースも8周目あたりには低下してしまい、ピットアウトしたときにはウイリアムズ勢の後ろに回り、本来のペースで走れずレースを台無しにされてしまった。同一周回とは言え、セルゲイ・シロトキンに対する怒りは、速さがあるにもかかわらず入賞圏とは遠く離れた位置でのレースを強いられたやるせなさだ。

 

 だがこの時点でヒュルケンベルグの前にいたペレスは、そのまま走り切っていれば10位入賞はできたはずだった。マシンをぶつけにいったわけではないにしても、明らかにペースに差があり実質①ストップ作戦で粘りのレースをしているシロトキンに強引に抑え込まれたことに対する憂さ晴らしで行なった幅寄せの代償は、大きなものになってしまった。

 

 ルクレールはスタートでポジションを上げたピエール・ガスリー(青色・細線)に抑え込まれ、ガスリーがピットインする26周目までの間にアロンソとサインツに大きな差を付けられてしまった。同じウルトラソフトで純粋なペース自体はほぼ同じだったが、クリーンエアで走れたかどうかでこれだけの差が付いてしまったわけだ(グラフ②の27周目以降)。この事実を見ても、ハイパーソフトでスタートしてすぐにピットインし、その後レースの大半をトラフィックの中で走ることになったQ3進出組がいかに不利だったかが分かる。

 

 

 ただしハースの2台が入賞できなかったのはそれだけではない。ロマン・グロージャン(グレー色・太線)は10周目あたりからハイパーソフトがタレてアロンソに追い付かれ、3つも後ろにいたヒュルケンベルグにピットストップでアンダーカットを許してしまった。ここからのソフトタイヤのペースはウルトラソフトのヒュルケンベルグよりも速かったものの抜けずに抑え込まれ、30周目あたりからタイヤがタレてペースが大幅に低下。ヒュルケンベルグには大きく差を付けられてしまい、後方のガスリーを抑え込むことに全精力を注ぐしかなかった。

 

 ケビン・マグヌッセン(グレー色・細線)はソフトからハイパーソフトに繋いだものの同じような展開になっており、シンガポールでのハースはタイヤマネージメントが全く上手く行かずに本来の速さを結果に結びつけることができなかった。

 

 

 トロロッソ・ホンダはガスリーがスタートで12位に浮上してザウバー勢を上手く抑え込んでみせたものの、他のハイパーソフト勢が15周目前後にピットインしたのに対し26周目まで引っ張ってしまい、ここで大きくタイムロスを期してしまった。レース序盤に前を走っていたヒュルケンベルグとの差がピットアウト後の27周目には大きく開いているのをみれば、そのロスは明らかだ。特にインラップがヒュルケンベルグに較べて4秒も遅く、バイブレーションが出てガスリーがグリップの低下を訴えていたにもかかわらず引っ張りすぎてしまった感は否めない。

 

 さらにここからシロトキンやグロージャンに抑え込まれてタイムロス。最後までグロージャンを抜くことはできず入賞圏は遠のいてしまった。

 

 15番グリッドからのスタートで入賞のためにはハイパーソフトスタートのギャンブルは仕方のないことだった。実際、周りと同じウルトラソフトを履いて同じようなスタートを切っていれば、ガスリーのレースは前のマーカス・エリクソン(紫色・太線)との争いになっていたはずで、それは11位争いだ。

 

 しかしレース序盤に前を走っていたヒュルケンベルグが同じハイパーソフトスタートでしかも新品ではなく中古スタートであったにも関わらず10位入賞を果たしていることを考えれば、ガスリーがこの結果に終わってしまったのはギャンブル失敗のためではなく、タイヤが保つという過信から第1スティントを伸ばしすぎたことと、マシンのそもそものポテンシャルが充分でなかったことに原因があったと言うべきだ。

 

 ブレンドン・ハートリー(青色・太線)は2ストップ作戦を敢行しさらに悲惨な展開に。コース上で抜くことが必須となるこの戦略をハートリーに背負わせたのは過酷で、なおかついつも複数回出動するセーフティカーがスタート直後以外には一度も出なかったことも不運だった。

 

(text by 米家 峰起 / photo by Haas, Force India, Toro Rosso, Pirelli / data by F1LIFE)

 

 

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