【特別記事】ライバルへの禁止薬物混入〜F1のドリンク管理は?
先日のカヌーの日本選手権で、オリンピック出場資格を競うライバル選手のドリンクに禁止薬物を混入させ、8年間の資格停止処分を科されたという事件がありました。これに関連して、「モータースポーツではドリンクボトルはどのように管理されているのでしょうか?」という質問をTwitterで頂きましたので、こちらの記事でお答えしようと思います。
まずF1については、ドリンクはそれぞれ専属のフィジオセラピストがドライバーの体質やその時の気候コンディション、体調、走行内容などを考慮して調合します。基本的には水にナトリウム、つまり塩分を溶かしたものですが、それだけでは飲みづらいのでいわゆるポカリスエットのようなスポーツドリンク味にしたり、紅茶のような味にしたりといった工夫をしています。
お茶の味にするのは、走行中に飲むドリンクはコクピットの周辺に収納されていますが、マシンはラジエターや制御コンピュータなど熱の塊が多々あるため、ドリンクもその熱でお湯のようになってしまうため。
肝心のドリンクの管理ですが、これは前述の通り専属のフィジオセラピストが管理しているわけですが、実際には車載しない(普段持ち歩くドリンクボトルは)モーターホームの冷蔵庫に普通に入れてあったりして、僕らが目にして逆にビックリすることも。
ある意味、衆人環視の中にあるので、ドライバーがそんなところでライバルのドリンクボトルに細工をしていたら怪しすぎてすぐに見つかってしまうとも言えますが。
F1やそのサポートレースであるFIA F2などもWADA(世界アンチドーピング機構)による検査対象となっているので、ドライバーたちはセッション終了後にアトランダムにドーピング検査を受けることもあります。何か問題があればそこで判明しますが、今のところ何か陽性反応が出たということはありません。
なお、FIA F2やGP3などのサポートレースでは、チームというかそのドライバーが所属する育成プログラム(フェラーリ、マクラーレンなど)のフィジオセラピストがいる場合もありますが、ほとんどのドライバーは自分でドリンクを管理しています。ですから、今回のカヌー競技の場合のようにライバルに禁止薬物を飲ませるといったことが起きる可能性もないわけではありません。
(text by 米家 峰起 / photo by MercedesAMG, Red Bull, Force India)
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