REPORT【報道】

20140924-01

 

 来季に向けて下位チームの消滅が囁かれる中、シンガポールGP週末のケータハムにはやや異様な雰囲気が漂っていた。

 

 まず木曜にはピレリからタイヤの供給が停止された。本来ならば各チームがホイールをピレリのフィッティングエリアにホイールを持ち込み、ピレリのメカニックによってタイヤがフィッティングされた状態で各チームに供給される。1ドライバーあたり20セット(プライム7、オプション6、インターミディエイト4、ウエット3セット)で計40セットだ。これに各チームのタイヤ担当メカニックがセットナンバーやドライバー名、前後左右を示すマークなどを書き入れ、タイヤウォーマーに包んでピレリのエンジニアとともに管理する。

 

 しかしケータハムのタイヤ担当メカニックたちはホイールを輸送用ボックスに片付けていた。チームからピレリへのタイヤ代金の支払が行なわれておらず、ピレリが供給の停止を宣言したからだ。

 

20140924-02

 

 1セットのタイヤ代金は1900USドル(約20万6000円)。1レース週末の代金が40セットで約824万円ということになる。

 

「ピレリは各チームと年間契約を結んでおり、スペックや輸送にかかるコストが異なろうと、各グランプリの代金はフラットレート(均一料金)になっている。これを一括ではなく3カ月に1回程度の期限を設けて分割払いで支払ってもらっている」(ピレリ関係者)

 

 ケータハムは木曜日中に支払証明書をピレリに提出することで折り合いを付け、金曜の夜間作業禁止の解禁となるFP-1の開始3時間前、午後3時にピレリから40セットのタイヤを受け取ることに成功した。

 

 7月のチーム買収以来、今シーズン末までの運営資金は確保されているとしてきたケータハムの新経営陣だが、夏休み以降は資金繰りが悪化しているようだ。これは夏休みから急に小林可夢偉を外して持参金付きドライバーの起用を模索し、数多くのドライバーにオファーを出し始めたこととも合致する。

 

 チームの後ろ盾になっていると見られていたバーニー・エクレストンは、8月以降はやや距離を置いているという。これはここに来てサードカー構想を強力にプッシュし始めたことと無関係ではなさそうだ。

 

20140924-10

 

 そして土曜の予選後、強い雨の降り続く24時半頃からチームのホスピタリティユニットにスタッフ全員が集められ、会合が行なわれた。首脳陣、エンジニア、メカニック、ホスピタリティスタッフに至るまで現場にいる全員が集められたが、ドライバーやそのマネージャー、フィジオセラピストらは室外に出され、実質的な経営者であるコリン・コレスの姿もなかった。

 

 チーム関係者は“ビッグミーティング”があると外部の人間に伝えていたが、外からその様子を見る限りではチーム代表のマンフレディ・ラベットがチームスタッフを前に延々と話し続けていただけだった。

 

 ミーティングは約50分に及び、途中でマシンのパルクフェルメ保管の作業を行なうために一部のメカニックが中座してガレージに向かうほど。とても予定通りに行なわれたものとは思えなかった。パドックの中でも人通りの少ない場所に位置するケータハムのホスピタリティだけに、当初はカーテンも開け放たれていたが、外部からその様子を見ていると途中からカーテンは閉ざされてしまった。

 

 終了後にラベットに問いただすと、「スタッフとの意思疎通を図るために行なっているミーティングで、経営が変わってから毎月行なっているものだ。(クリスチャン・アルバースが辞任し)チーム代表が替わってから初めてのレースだし、こうして現場で行なった」とのことだったが、チーム関係者によればこれまでにこうしたミーティングが行なわれた事実はない。

 

 スタッフたちには箝口令が敷かれていたようで、誰一人としてミーティングの趣旨や内容を口にする者はいなかった。ドライバー関係者にも、ラベットが語ったことと同じことを言うようにとの通達があったという。広報スタッフに聞くと「勇気づけられるスピーチだった」とのことだが、それを言おうとする彼女を制止するように別のスタッフが強引に連れて行くなど、このミーティングが尋常でないものであったことは間違いない。

 

 部屋から出て来たスタッフたちの表情は硬かったが、やや笑顔も見られたことからすると、チームの即時撤退を伝えるものではなかったことは明らかだったが、これまでの経緯やチームの置かれた苦しい状況などが説明されたものと推測される。すでに40名以上のスタッフを解雇して人員整理を進めている新経営陣だが、今のところ残っているスタッフへの給料の遅配は発生していない。だが今後はその可能性やさらなる馘首の可能性もあるという通達だったのかもしれない。

 

20140924-11

 

 決勝前のスターティンググリッドでは、15分前の段階でゲストやメディア関係者が退出を命じられるが、その後に可夢偉車を担当するスタッフたちがリアウイングを取り囲むように集まり、可夢偉を呼び入れて記念撮影を行ない始めた。

 

「ねぇ、どうなるんですかね!? チームがなくなるんじゃないですか?(笑)」

 

 可夢偉は冗談とも本気ともつかない様子でレース後にそう語ったが、この週末のケータハムの動きから察するに、その可能性がゼロではないと言わざるを得ないだろう。チームスタッフたちもいつこれが最後のレースになってもおかしくないという意識があるからこそ、グリッド上で記念撮影を行なったのだろう。

 

20140924-12

 

 日本GPへの参戦を危ぶむ声もあるが、現時点ではスタッフたちは月曜日のフライトでロンドンから日本へと入る予定だという。ただしシンガポールから直接日本に飛ぶ予定だった一部のスタッフがイギリスに戻るなど、日本GP参戦が100%クリアな状況でもないようだ。チームが手配するマーカス・エリクソンのストックホルムからシンガポールへの飛行機チケットもグランプリ週の月曜日になるまで発券されなかったというから、チームが厳しい財政状況に置かれていることは間違いない。

 

 ラベットはグリッド上では準備作業を行なうドライバーやチームスタッフたちをよそに、ずっと携帯電話でメッセージのやりとりをし続けていた。レース後にはすでにパドックを後にし、ホテルでビジネスミーティングを行なっていた。参戦継続のために奔走しているというのが実際のところなのだろう。

 

 しかしガレージ資材など船便で送る荷物はすでに日本GP、ロシアGPに向けて発送を完了しており、シーズン末までの活動は可能だろうという情報もある。日本GPで小林可夢偉がドライブするならスポットスポンサーをしたいという企業もあるといい、その資金を元手に鈴鹿でも活動を継続してくれることを祈りたい。

 

(text by 米家 峰起 / photo by 米家 峰起, Wri2)

 

 

 

Related Articles

Comment

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. コメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。

Recent Post【最新の記事】

Calendar【日付で記事検索】

2020年6月
Mon Tue Wed Thu Fri Sat Sun
« May    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930