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【F1リアルスコープ】フリー走行の見方が分かる! 各チームはどう走っている?
F1にはFP-1〜3まで3回のフリー走行がありますが、各チームがそれぞれどのように時間を使っているのかを知れば、フリー走行の楽しみ方が変わってくるはずです。ここではそのセッションの“見方”を伝授しましょう。
まずFP-1は、最初にインストレーションチェック。F1マシンはバラバラの状態で輸送され、サーキットに到着してから組み立てられますから、組み立てたばかりのマシンを一度ゆっくりと走らせて、基本システムがきちんと機能しているかどうかを確認するわけです。
主な項目は、ギアボックス1〜8速全てに入れてチェック、電波障害が起きないか1周すべてにわたって無線チェックなど。
さらには一定の速度で走行して空力データをチェックする『コンスタントスピード・エアロテスト』も行ないます。エンジニアから「どのコーナーの後に何速でコンスタントスピード」と指示されて、一定速度で走るわけです。その間、チームはマシンのどこにどれだけダウンフォースが発生しているかをチェックし、想定通りの空力性能が出ていることを確認。これをやらないと、ファクトリーでシミュレーションしてきたセットアップが全く無意味なまま走ることにもなりかねないのです。
マシンがガレージに戻ってくると、メカニックがマシン各部を視認チェック。オーバーヒートや水・ハイドロの漏れがないか、カウル内の排気管などもチェックします。
そこから30分ほどは路面状況が良くなるのを待ちます。
まずFP-1で使えるのはプライムタイヤの1セットのみ。これを履いてセットアップの確認。空力と脚回りなどを調整し、マシンバランスを調整します。同じプライムタイヤのままそれを何度か繰り返してFP-1は終了です。FP-1で使用したプライムタイヤはピレリに返却します。
この時点で、事前シミュレーションのセットアップがアタリかハズレかが見えてきます。が、サーキットによっては路面コンディションの変化も大きいので、あまり当てにしすぎるのもよくありません。
FP-1ではフロービズというテストをやることもあります。これは新しい空力パーツが想定通りに気流を発生させているかを確認するもので、パーツに揮発性の色付きオイルを塗り、そのオイルが走行中に走行風で乾いて、オイルの色だけが気流のかたちに残るというもの。CFD(コンピュータ風洞)通りに気流が出来ているのかを、目に見える形で示してくれるわけです。
FP-2ではタイヤテストです。FP-2ではプライムとオプションが1セットずつ使用できます。
まずは新品のプライムタイヤを履いてマシンセットアップの再確認をして、1〜2ランしたところでオプションタイヤを投入し、数周のランでアタックのシミュレーション。FP-2のベストタイムは基本的にここで記録されます。
これが終わると、残りの約1時間でロングランのタイヤテスト。ここからがFP-2の本番です。各ドライバーがいずれかのタイヤを履いて10〜20周ほど走行し、そのデグラデーションの傾向をチェックするわけです。
チームによっては2台で別々のスペックを履かせて両タイヤともデータ収集するところもあれば、この段階で一方のタイヤは“捨てタイヤ”“予選タイヤ”、もしくはデグラの心配なしと割り切って片方のみで走行することもあります。
FP-2ではベストタイムよりもこのロングランでどのタイヤを履いているか、そしてそのタイム推移と巡航ペースの善し悪しに注目すると、決勝に向けて推測する面白さが増します(『F1LIFE』でも金曜分析レポートでお伝えしていますが)。
FP-3では各スペックのタイヤが1セットずつ。各チームとも金曜のデータをファクトリーで分析し、シミュレーションを元にセットアップの修正をしてきます。FP-3ではまずプライムタイヤでそのセットアップ確認をします。
時間はわずか1時間しかありませんから、数回のランでマシンの最終調整をしているとあっという間に終わってしまいます。金曜日が雨やトラブルで充分な走り込みが出来ていない場合は、FP-3でロングランを行なうこともあります。2013年のメルセデスAMGなどはよくここでロングランをやっており、タイヤに不安を抱えていたことが分かりました。
最後の10分を迎えたところで各ドライバーはオプションタイヤを投入し、予選に向けたアタックのシミュレーション。FP-3のベストタイムはここで決まります。つまり、予選に向けたガチの戦いなわけですが、中には余分に燃料を積んで三味線を弾いているチームもあります。彼ら自身だけは「この燃料量でこのタイムだから、空タンで走ればこのくらいのタイム」ということがシミュレーション上で分かっているわけです。
このように、FP-1から3まで様々なプログラムが進行しており、それぞれ異なる楽しみ方があることはおわかり頂けたでしょうか。
(text by 米家 峰起 / photo by Wri2, MercedesAMG)
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