【2020 Rd.13 ERM】予選徹底分析②:低速を捨て平均点を上げたアルファタウリ【中団グループ】
2020年の第13戦エミリアロマーニャGPの予選におけるタイムアタックでのデータを比較することで、中団グループのマシンの性能を分析してみよう。
全車のグラフの中から中団グループだけを抜き出すとこのようなグラフになる。
①ストレート車速はハース以外がほぼ同等レベルになっているものの、最高速はやはりルノーが速くドラッグとダウンフォースが少なめの傾向を示している。②ストレート前半の加速はルノーとマクラーレンが優れており、メルセデスAMGのカスタマー勢よりもパワーが出ているようだ(燃焼モードは同じでもそれ以外のセッティングはワークスと異なる可能性が高い)。
③の中高速コーナーでは、ウイリアムズが速さを見せる。これはジョージ・ラッセルの頑張りと、ウイリアムズのダウンフォース多めのセッティングによるところだろう。それ以外ではアルファタウリとマクラーレン、ルノーとやはりQ3進出組が速く、アルファロメオとハースの遅さが際立って目立つ。
中団グループではメルセデスAMGのように極端にストレートに振ったマシンはなく、ほぼ横並びの最高速のセッティングゆえにコーナーの速さがそのままタイムと順位に直結したかたちだ。ハースはストレートもコーナーも遅く、タイヤを上手く使い切れていない可能性が高い。
④のリバッツァのような中速コーナーでもアルファタウリは速く、⑤のような短めの全開区間では最速。つまりトップエンドではルノーに劣っていてもストレート区間全体で見ればアルファタウリは速く、そして③や④のようなコーナリングも速い。中団トップのラップタイムは、どこかひとつの要素が飛び抜けているのではなく、全体の平均点の高さによって実現したものであることが分かる。
⑥の中低速コーナーではほとんど差がないが、ルノーが112km/hで最速。アルファタウリは105km/hと大きく差を付けられハースに次いで遅い。しかしイモラは低速コーナーが少ないことから、ある意味で低速コーナー性能を捨てたセットアップでそれ以外の平均点を底上げしているのだろう。本来はオールラウンダーマシンのマクラーレンが強さを見せるタイプのセットアップだが、新型ノーズを中心とした改良型パッケージの性能をまだ引き出し切れていないようで、ここ数戦はオールラウンダーのお株をアルファタウリに奪われかけている。
メカニカル性能に優れるルノーはこうした中低速セクションで速さを見せるが、バリアンテアルタ(ターン14〜15)で速さを見せているキミ・ライコネンはターン15出口でトラックリミット違反を犯してこの14位相当の1分15秒758のタイムを削除されている。
(text by 米家 峰起 / photo by Renault, AlphaTauri)
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