1. HOME
  2. RACE【レース】
  3. 2019
  4. 2019 Rd.11 GERMANY
  5. 【UTSU】日曜決勝分析レポート:クビアトの決勝徹底分析
2019 Rd.11 GERMANY

【UTSU】日曜決勝分析レポート:クビアトの決勝徹底分析

2019 Rd.11 GERMANY

 

 『F1LIFE』のインターンシップUTSUこと正木聖がドイツGPで取材したレポートをお届けします。まだまだ至らぬ点も多々ありますが、1人でも多くの方に読んで頂き、叱咤激励の声を頂ければと思います。

 

*  *  *

 

 ダニール・クビアトがトロロッソに2008年のイタリアGP以来の表彰台をもたらした。雨が降って非常に荒れた展開となったレースだが、表彰台をもたらした要因はクビアトのドライビングだけでなく、トロロッソの戦略判断、そしてホンダのサポートがあった絶妙なコンビネーションで生み出されたものだった。

 

 まずクビアトはスタートでミスを犯し、17位まで後退した。その後25周目までインターで走り続けたクビアトは、インターミディエイトの消耗を見てすぐにソフトに交換した。クビアト本人はタイミングを間違えたと振り返っているが、実際には順位を落としておらず、大きな支障にはなっていなかった。

 

 さらにシャルル・ルクレールがクラッシュしたことで発生したセーフティカーで、雨足が強まったのを見てまたインターミディエイトに交換した。この判断はすぐに行なえており、11位まで順位を上げることに成功し、入賞争いは充分に狙える位置まで回復した。

 

 そして表彰台を獲得する大きなターニングポイントになったのは45周目のピットのタイミングだ。路面が乾いていくコンディションの中、各チームがスリックに履き替えるタイミングを見計らっていた時に、クビアトは11位という場所にいたおかげもあってか、躊躇なくソフトに履き替えた。この動きを見て上位勢はクビアトの動きに合わせるようにしてピットインしていった。クビアト本人も「2回目スリックを履いたタイミングは完璧で、他の人がスリックを履かなかったのを見たときは、僕らに流れが来ていると思ったし、3位にいることに興奮したよ」と語っていた。

 

 

 他よりもすぐにピットに入ったことで、温まったタイヤでプッシュすることができ、ピットイン時の12位から3位までポジションを上げる大きなアンダーカットに成功した。これにより後方のバルテリ・ボッタスとのギャップが4秒とすることができたので、2位のランス・ストロールへの追い上げに注力しやすくなった。ストロールとのペースは平均して0.5秒ある状態で、後方にいた速いクルマから逃れるためにも、追いついてからすぐにオーバーテイクすることができたことも大きなアドバンテージになっただろう。

 

 終盤4回目のセーフティカーが入ったことでそのアドバンテージの効果が薄まったものの、最後はレース中で使用している範囲でパワーが出るモードを使って3位表彰台を獲得することができた。残り10周で「もっとパワーを出せないのか?」と激しく叫ぶような問いかけがチーム内であり、残り5周から「出すしかないっしょ!」と速いモードを使った。トロロッソのガレージ内でも普段は冷静な無線のメッセージでも、今回ばかりは叫び声となって声が飛び交うような興奮した状態が続いていた。そのためチーム内でも冷静さを取り戻すために「クールダウンしよう」と声をかけあったと、レース後本橋正充チーフエンジニアが語った。

 

 今日のトロロッソ・ホンダのレースについて、本橋チーフエンジニアは次のようにも振り返っている。「トロロッソと去年から組み始めましたが、今年は結果が伴わないレースもあったので『やった!』という感じですね。難しいコンディションの中で出た結果なので全体的にトロロッソもホンダもうまく噛み合った結果だと思います。タイヤのマネジメントについては、クビアトがうまく乗ってくれたのでこの先もある程度期待しても良いのかなと思います。ウェットコンディションの中でバランスの良い状態で走れていたので、終盤で後ろを振り切れると思っていました。タイムから見ても凡ミスが無ければ絶対に抜かれないと思っていました」

 

 またクビアトも次のように語っている。

 

「僕はミスしないことだけを考えて、タイミングを見計らって正確なコールをするようにしたんだ。これが今日のレースでうまくできたことだね。今日は外から見ていて楽しかったと思うよ、みんなラッキーだね。もちろんこの表彰台はガールフレンドのケリーと娘に捧げるよ」

 

 上位勢が次々に目の前から消えていく展開であったとはいえ、チームとクビアト自身の適切な判断と、タイヤマネジメント、最後の数周でパワーを出せるようにしたホンダ側のサポート、すべての力が結集して実った結果が今回の3位表彰台をもたらしたと言えるだろう。今回のクビアトの表彰台は、ホンダ勢にとっても土曜日産まれたばかりの子どもに対する最高のプレゼントになっただろう。

 

 

(text by Takashi MASAKI / photo by Pirelli)

 

 

  • コメント ( 4 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. Shin-ichi

    Youtube で F1LIFE channel を見ている者です。

    今回のドイツGPはそう言えばUTSUさんのレポートを無料で見れるんだったな。
    と言うのを思い出してこの記事を拝見した次第です。

    記事の前半は(テレビ中継も見ていたので)まぁ決勝レースのおさらい記事なのかな?
    と流して読んでいたのですが、「終盤4回目のセーフティカーが入ったことが~」
    からの下りは当時の現場の空気感が伝わってくるような内容で
    (またトロロッソのガレージ内の様子を知ったのはこの記事が初めてだったので)
    決勝レースを見ていた時の興奮を思い出しながらわくわくしながら読ませて頂きました。

    舞台裏の話ができると言うのは現地で取材した人間の強みだと思います。
    そう言うような、現地で取材したUSTUさんだからこそ出来る話が
    これからも聞けると期待しております。

    ところで、
    「徹底分析!」と銘打った割には記事的にはドキュメンタリー寄りの内容で
    グラフによる解説とかはありませんでしたね。。

    頑張ってください。応援してます。

    • UTSU

      「拝見いただく」とは恐縮です。ありがとうございます。
      まだ現場の臨場感を文字に起こす難しさを感じつつ書いていますが、それなりに雰囲気を楽しんでいただけたとのことで良かったです。

      今回ばかりは取材した方たちがとても興奮されていたので、出来る限りその言葉をそのまま使う形で書いてみました。

      さらにグラフを混じえた徹底分析についてはUTSU分析の方に載せていますので、そちらと合わせてご覧いただければと思います。

コメントするためには、 ログイン してください。