RACE【レース】

 

 アゼルバイジャンGPで初めてF1の現場を訪れ取材した『F1LIFE』の新人UTSUこと正木聖(まさき・たかし)が、トロロッソ・ホンダのアレクサンダー・アルボンに密着取材を行ないました。そのレポートをお届けします。初々しさも含めてのレポートなので、なるべく手直しせずにご覧頂きますので、温かく見守ったうえで叱咤激励をいただければ幸いです。

 

*  *  *

 

 レース週末を前にした木曜日はサーキットでの走行がないため、ドライバーたちはリラックスした表情をしている。午前中にトラックウォークをした後は、メディアに対して囲み取材といわれる会見で前回のレースやプライベートな質問に対して答えていく。その中でアルボンは、現在のトロロッソ・ホンダの立ち位置について問われると次のように語った。

 

「トロロッソは中団勢の真ん中にいるかな。僕らは良いセッティングを見つけて、ドライバーによるミスを減らすことが大切だね。中団勢のドライバー全員に言えることではあるけど、特に僕たちはここまでの3戦ともQ3に入るべきだったと思っているよ。予選で前に出れば混戦の中団勢の中にあってもレースが楽になるからね。チャンピオンシップポイントを見ると下の方に沈んでいるけど、僕らはこんな位置にいるべきではないと思う。ここまでの3戦は安定した結果ではあるけど、もっと高い位置にいるべきだね」

 

 

 まだF1で3戦しかレースをしていないアルボンが自分のポテンシャルを考察し「Q3に行く価値がある」と訴えている表情には自信が見られる。その一方で、自分の理想が簡単に実現しないF1の難しさを感じている様子でもあった。

 

 フリー走行では様々なドライビングスタイルを試し、マシンとサーキットの相性を把握するように努める必要がある。これも経験の浅いルーキーならではの試練だが、若手が多く輩出してきたトロロッソはその点に関して寛容で協力的だというのはプラスだ。

 

「FP1とFP2ではまだ苦しんでいるよ。もう少し早く本来のペースを掴んで走れるようにならなければならないと思う。そのためにアプローチの方法を少し変えて、まずはプレディクタブルな(予想がしやすい)挙動の状態のクルマで走って金曜の早い段階で(自分自身の)ペースを掴めるようにしたんだ。そうすれば土曜・日曜に向けてもっとアグレッシブなセットアップにしていくことができるからね」

 

「まずはクルマを走らせる自信を掴むために、スタビリティのあるマシンにセットアップした状態で走る。特にメルボルンや上海は僕にとって初めて走るサーキットだったしね。金曜日にクルマがナーバスだと僕がクルマを理解するのに優しくないから、僕の経験を重ねるためというのが最も重要なんだ。気持ち良く走るマシンなら早くリズムを掴むことができ、自信を深めることができる。そうすると色んなことがスムーズに進むからね。これはチームとも話していることだし、トロロッソはルーキーが自信をつけるために何を必要としているかも知っているから良いことだよ」

 

 自分が今苦しんでいることに対して試行錯誤で取り込んでいる状態であることを明かし、若手を扱う経験が豊富なトロロッソというチームで成長できることに対して信頼を寄せている様子が見られた。

 

 

 金曜日はFP1でマンホールが外れ、コース全域のマンホールを総点検するためにFP1は12分間で終了。FP2も90分のセッションの予定だったが、ランス・ストロールのクラッシュとダニール・クビアトのクラッシュで2度の赤旗が出され、合計20分間の走行時間が失われた。このようなセッションでアルボンはFP2で全20台中最多の33周を走行、8番手タイムを記録しQ3進出へ希望を見せるセッションをこなした。

 

「良い日だったよ。走りたかった時間よりは短くなったけど、走り始めからクルマの感触は良かった。走るときにはマージンを取るように気をつけたよ。僕らには強力な速さがあると思っていたから、行き過ぎないように気をつけていたよ。クラッシュはしたくなかったからね」

 

「(FP2では)マンホールは最初の数周は気にしたよ。コースの真ん中は通らないようにして安全に行った。マンホールがどこにあるかは木曜日に一応確かめたよ。ダニエル(・リカルド)がメルボルンで事故を起こしたからね。あれはマンホールじゃなくて溝だったっけ? じゃあ今度は溝のフタを確認しにもう1周しないとね(笑)」

 

 マンホールの事故があった件に対しては慎重に対応したことを明かしつつも、最後はジョークでまとめるなどフリー走行で得たフィーリングの良さを感じさせた。

 

 またこの日(4月26日)は僚友ダニール・クビアトの誕生日だったが、何かお祝いしたのかとの問いに「しなかったよ、彼の誕生日を知らなかったからね。Facebookで彼と友達で、その通知を見てさっき気付いたんだ(笑)。多分チームがケーキを用意しているはずだから、早く戻って僕の名前をそこに書いておいてもらうよ。それを持っていこうかな、『僕からのケーキだよ』ってね(笑)」と語り、場を和ませた。コクピットの外ではF1ドライバーらしからぬこの素朴さと明るさが、筆者を含め周囲の人々を惹きつけ彼のファンにさせているように感じられた。

 

 そんな冗談を交えつつも、予選に向けてはQ3進出の抱負を語り、目標を見失うことなく突き進もうとする姿勢を見せた。

 

「Q3に入るチャンスはあるよ。それが大きな目標だからね。簡単なチャレンジではないけど、自分たちのやるべきことに集中してやれる限りのことをやるだけだよ」

 

 土曜日になりパドックにはフェラーリ会長のジョン・エルカーンなどVIPゲストが多く見られるようになり、F1でしか見られない華やかな光景が広がった。

 

 しかしドライバーたちはその華々しさの中でもいつも通り淡々とそれぞれの予選に向けての準備を進め、アルボンも予選開始15分前になると控室からガレージへと移動していく。その姿は囲みの場などで見せるようなどこの街角にもいそうな青年のそれではなく、一流のF1ドライバーのオーラを放ち、簡単に近寄ることができない緊張感を漂わせていた。

 

 その予選でアルボンは目標のQ3進出に向けて戦ったが、10位まで0.113秒差の12位で予選を終えた。

 

「タフな予選だったよ。FP3からクルマの調子が良くてペースが良かったからQ3に入れると思っていたんだ。それなのにQ2はダメなラップになってしまった。いくつかの場所では攻めきれず、またある場所では攻めすぎてしまって難しかったよ。リズムが掴めなかったというよりはタイヤがトリッキーになったことが大きいかな。(路面温度が下がったことに対しては)思っていたよりも苦しんだね。路面が全体的に汚くて、路面温度が下がるとさらにグリップを失うからタイヤを適切なウィンドウに入れておくのが難しかったんだ」

 

 

 この日は2度の赤旗中断によりセッションが大幅に遅延し、路面温度が予選開始から終了までに9度も下がるコンディションだった。木曜日に路面を確認した時には土埃を多く被っており、アルボンが語るようにグリップを得るには難しい路面という印象があった。

 

 しかし決勝に向けては週末全体のペースの良さをポジティブな要素と捉え、気持ちを切り替えてレースに臨もうとする姿勢を見せた。

 

「ポイント争いはできるよ。前回のレースや今日のF2のレースで見たようにバクーのレースはカオスになりやすいから、順位を得ることもあれば危険な目に合うこともあるからね。スタートでどれだけ上げられるかだね。今週末のペースは良いし明日に集中するよ」

 

 

 日曜日も雲ひとつない快晴で、最高のレース日和になった。

 

 トロロッソのドライバーたちの1日は、サーキット内にあるファンゾーンで行なわれるサイン会の対応から始まった。それを終えてパドックに帰ってくる2人はリラックスした様子で笑顔も見え、クビアトが6位と好位置につけたようにクルマのペースとセットアップ自体には問題がなく自信を持っていることが伝わってきた。

 

 レースではキミ・ライコネンの予選失格により11位からスタートしたアルボンはターン1でアウト側に膨らみすぎて右リアをウォールにヒットさせてしまい、12位に順位を落とした。その後は第1スティントでリカルドのペースに付き合わされ、第2スティントではニコ・ヒュルケンベルグやアントニオ・ジョビナッツィとバトルを演じるもスタートで失った順位を取り返すことができず11位に終わった。

 

 クルマの仕上がりは満足できるレベルにあり、レースペースは決して悪くなかったとアルボンはサバサバした表情で笑顔も交えながら言う。入賞こそ逃したが、自身のレースを楽しむことはできたようだ。

 

「スタートの蹴り出しは良かったよ。ターン1で壁に当たったけどね。僕は(ランス・)ストロールに対してポジションを失ったのかな。それでも序盤のペースは良くてオーバーテイクのチャンスを伺っていたんだけど、ストロールを抜けなかったね。彼が先にピットに入ったから僕はスティントを伸ばしたけど、ピットストップに長い時間がかかってしまって彼の後ろでピットアウトすることになってしまった。周りと比べればペースは良かったし、実際に11位まで順位を上げることができた。いくつか良いバトルもあったしね。まぁ、あまりテレビには映らなかったと思うけどね(笑)」

 

 

 4日間を通して彼の表情を見てきて印象深かったのは、暗い表情を見せないということだ。物事をポジティブに考えて、たとえミスがあっても落ち込まずに気持ちを切り替えようという姿勢。予選でも決勝でも、そんな彼のスタンスを見て取ることができた。その明るさと前向きさが、F1デビューからここまでの順調なステップアップに繋がっているような気がした。

 

 今回のレースではポイントを逃したが、今回のクビアトの予選6位という結果は今後のレースに向けて好材料だ。アルボンは持ち前の明るい表情とポジティブさでこれからも前進し続けてくれるだろう。そんなふうに感じられた。

 

(text by 正木 聖 / photo by 正木 聖, Red Bull)

 

 

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Comment

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  • コメント (8)
    • w0fu1sg6
    • 2019年 5月 01日

    よねやん。書かして、出さしたな、、、そのまんま・・。
    やさしいなーよねやん。
    うーん、小松さんレベルでいいんじゃねえかなあ・・・
    切りまくって、なおそこにいるフランツに聞いたらどうかしら?
    なんちゃって。。。

      • w0fu1sg6
      • 2019年 5月 01日

      記事を2時間ぐらいかけて何度も何度も読みました。
      この言葉に、ピーターフォックスの写真を入れるのは、gateレベルではないかしら?

    • 1990
    • 2019年 5月 01日

    ある程度のウツさんのバックグラウンドがないと、こちらとしても評価がしづらい(笑)。

    • girime
    • 2019年 5月 01日

    評価はほかの方々に任せるとしてw、UTSUのニックネームの由来が知りたいです。

    一応、感想だけ言うと、インタビューをベースにした読み物としては可もなく
    不可もなくという感じで、「密着レポート」というタイトルに対しては
    薄い感じを受けました。

    • adhoc
    • 2019年 5月 02日

    擁護でも批判でもなく、レビューありきで読まれるというのがそもそも辛い気がします。
    そもそも、書き手としての立ち位置がよくわからない部分はありますが、この記事単体で読み物として成立させるスタンスで書かれているように感じますし、そうだとすると、それはある程度成功しているようにも見えます。
    ただし、F1 LIFE他のコンテンツで既知の情報があり、更に、お金払ってこのサイトを購読されているような方々からすると、(粗探し前提で読むという意味もあり)冗長に感じざるを得ないのではないでしょうか?
    そういう意味で、個人的には、F1 LIFE外のNumber Webの記事のつもりで読むとスッキリしました。

    • hogeman
    • 2019年 5月 02日

    米家さんが取材していないチームを取材したらどうでしょうか。

    • kanoi
    • 2019年 5月 03日

    「密着レポート」の記事タイトルから
    アルボンの人となりが分かる記事を期待しましたが、
    あまりそれが伝わってこなかったです。

    青山のデモランの記事でも感じたことですが、
    見たままをそのまま書いているだけのように見えてしまいます。
    被写体に対するカメラの距離が常に一定に感じ、
    記事全体が平坦な印象を受けました。

    その原因は、アルボンの表情について書かれた文章が
    記事後半に集中しているせいではないでしょうか。
    人物について描くなら
    発言で繋ぐだけだと時間が流れるだけで印象に残りにくいです。

    厳し目のコメントを書きましたが応援してます。
    これからも頑張って下さい。

    • 零48
    • 2019年 5月 05日

    私はF1カジュアルユーザーなので、これくらいのボリュームで良かったです。とりあえずアルボン密着のオープニングという事で、次回も期待しております。1回で終わりじゃないですよね?(笑)

    ※まだその後のダメ出し動画?は見てません。いつも読むのが遅くてコメントが誰かに届いているのかも良く分かりませんが、若い人が育って、これからも生のF1情報が日本に流れることを願っております。アロハおじさんの後継者は誰なのかも気になる。

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