RACE【レース】

 

 

 FIA F2の第8ラウンド、ハンガリーではレース1でプレマのニック・デ・フリース、レース2ではDAMSのアレックス・アルボンが優勝した。レース1はウエットからドライへとコンディションが変わっていく難しいレースで、ウエットの前半はカーリン勢が速さを見せたが路面が乾いてからはで・フリースが猛烈な追い上げを見せた。レース2では激しい暑さのためレース終盤に多くのマシンが激しいデグラデーションに見舞われてペースを落とす中でアルボンのタイヤマネージメントが光った。

 

 ハンガリーラウンドを前に全車のエンジンがベンチテストに掛けられた上で公平にシャッフルされ、ストール問題が多発していたクラッチも対策品が各チームに供給されただけに、ここでの各マシンの実力と勢力図の変化はシーズン後半戦を占う意味でも重要だ。

 

 各チーム・各車の実力はどうだったのか、両レースの全車ペースとタイムギャップをグラフ化し分析してみよう。

 

 

 レース1のラップタイムを表にすると、このようになる(横軸が周回数、縦軸がラップタイムで上に行くほど速い)。

 

 

 各マシンとのタイム差をグラフ化したのがこちら。レースの展開と各車の位置関係がグラフィカルに把握できる。横軸が周回数、縦軸がタイム差で下に行くほど遅れが大きくなる。

 

 

レース1:ウエットとドライで明確に分かれた優劣

ドライ寄りのプレマがウエット寄りのカーリンを下す

 

 豪雨に見舞われたF1の予選後に行なわれたFIA F2のレース1は、ウエットコンディションのままでセーフティカー先導の3周走行の後にスタンディングスタート。前半はウエットコンディションにウエットタイヤのままでの走行で、12周目の牧野任祐を皮切りにドライタイヤへ交換するマシンが出始め、15周目あたりから路面は乾き始めて24周目以降はほぼラインドライの状態となっている。そのためグラフ①では前半と後半ではっきりとラップタイムの分布が異なっている。

 

 前半のウエットコンディションで速かったのはランド・ノリス(紺色・細線)で、これはグラフ②の首位セルジオ・セッテ・カマラ(紺色・太線)やデ・フリース(赤色・細線)とのギャップ推移を見てもはっきりと表われている。

 

 ノリスだけはかなりウエット寄りに振った特殊なセッティングを施しており、ドライタイヤに換えてからのレース後半は逆にペースが遅く、デ・フリースとのギャップは一気に縮まっている。セッテ・カマラは第2スティントの前半はそれほど速くはないが、後半はノリスが急激にペースを落としたのに対してセッテ・カマラはそれほど落とさず走行している。

 

 プレマはドライ寄りのセッティングだったようで、レース後半には2台ともに速さを見せている。ロシアンタイムはかなりドライ寄りで、ウエットでは2台とも下位のタイムだがドライではまずまずのペース。しかし終盤はデグラデーションが進んでしまい、決して優れたセッティングとは言えなかった。

 

 

 レース終盤に2位ノリスの背後まで迫ったアントニオ・フオッコはウエットでもドライでも安定したペースを保っており、全車の中で最もバランスの取れたセッティングだったと言える。最終ラップにセッテ・カマラに追突されて4位フィニッシュとなったが、セッテ・カマラに10秒加算ペナルティが科されたため最終結果は3位。実質的にはノリスも抜いて2位になれた力があった。

 

 予選で速さを見せたARTのジャック・エイトキンはウエットでのペースが振るわず、順位を落とした。ドライではまずまずのペースだったもののレース終盤にセッテ・カマラやフオッコに着いていくほどの速さはなかった。ジョージ・ラッセルはマシントラブルでリタイアしてしまったため本来のペースは分からないが、予選でエイトキンは2位、ラッセルは4位と歴史的にハンガロリンクを得意としているARTとしては決して良くはない成績。ここまで圧倒的な速さで選手権をリードしてきたラッセルの速さが本物だったのかどうか、やや疑問符が付く結果となった。

 

 

 最後尾スタートの牧野任祐(青色・細線)は失う物が無い状況の中で12周目にピットインを敢行。ドライタイヤでプッシュして3台のアンダーカットに成功した。レース終盤にはややペース低下も見られたが、これは前のアルテム・マルケロフがそれ以上に大きなデグラデーションに苦しむのに付き合わされたため。それ以上に苦しんだ2台を抜いて9位フィニッシュとなったが、ロシアンタイムは2台ともにウエットコンディションでの遅さが目立った。

 

 福住仁嶺(ピンク色・細線)はウエットコンディションでまずまずのペースで走行したが、ピットインのタイミングで後手に回ってポジションを落とした。ドライに換えてからも前走車たちに着いていったが、ステアリングが曲がっていたことで本来の走りができなかった上にレース終盤にデグラデーションが進み、入賞圏ギリギリの10位までポジションを落としてのフィニッシュとなった。エンジンシャッフルの効果か相対的な競争力は確実に上がっていたが、チームの総合力が足りず上位入賞しきれない結果になった。

 

 

レース2:多くのマシンが20周過ぎから大きなデグラデーション

アルボンが驚異のタイヤマネージメント、福住にも光明

 

 日曜午前に行なわれたレース2は、リバースポールのアルテム・マルケロフ(青色・太線)と2番グリッドのセッテ・カマラ(紺色・太線)が揃って出遅れ、3番グリッドのルカ・ギオット(黄色・太線)がトップに浮上してレースをリード。その背後にはダムスのアレックス・アルボン(水色・太線)が続いた。

 

 ここでコース上でのオーバーテイクが難しいと判断したアルボンは、首位ギオットに対して2〜2.5秒のギャップを開けて走行を続け、タイヤマネージメントに専念することを選んだ。そしてひたすらギオットのタイヤがタレてくるのを待ち、20周目を過ぎたところからギオットのペースが落ちてきたとみるや一気に間合いを詰めて楽々とオーバーテイク。自身は最後までペースを維持して完璧なタイヤマネージメントで優勝をもぎ取った。

 

 

 

 グラフ①を見てもグラフ②を見ても20周目あたりから多くのマシンが急激にペースを落としており、酷暑のハンガロリンクでは激しいデグラデーションが進んでいたことが分かる。特に大きなデグラデーションに見舞われたのがマルケロフ(青色・太線)とアルジュン・マイニ(緑色・太線)で、マルケロフにフタをされるようにデ・フリース(赤色・細線)やロベルト・メリ(オレンジ色・太線)もペースを落としている。メリはなんとか踏みとどまったものの、デ・フリースはタレが大きく最後は福住仁嶺(ピンク色・細線)にも交わされてしまった。

 

 ARTのエイトキン(黒色・太線)も7周目にペースが落ち始め、最後はマルケロフをかわしたもののペースが落ちて福住に交わされているなど、ARTとしては満足のいくレースではなかった。ラッセルも集団の中から抜け出す速さはなかった。

 

 その中でカーリン勢は最後まで上手くタイヤを保たせており、このレース2ではアルボンとカーリン勢だけが上々のタイヤマネージメントを果たしている。

 

 

 福住はレース終盤に好ペースを保ってポジションを上げて6位まで浮上したように見えたが、ペース自体は福住も低下しており、周りがそれ以上に落ちただけだということが分かる。それでもアルボンと同じようにマイニ攻略が難しいと判断してタイヤマネージメント優先に切り替えてレース終盤のチャンスを待ったことがこの好走に繋がり、他車を抜き去る余力を残せたことは福住にとって非常に大きな手応えになったことは間違いない。

 

 一方で牧野(青色・細線)はマルケロフよりはマシだったがこちらもペース低下が激しく、ショーン・ゲラエル(赤色・太線)を抜く力もなかった。昨年はタイヤマネージメントに優れていたロシアンタイムだったが、今年は一発でもロングランでも目立った速さが発揮できるときとそうでないときの波が激しく、ハンガリーでは完全に外してしまった。エンジンシャッフルの効果は感じられたとはいうものの、はっきりとした戦力の分析は難しいほど土日ともに荒れたレースになってしまった。

 

 全体を見渡せば、エンジンシャッフルの後で見えたのはARTの勢いが削がれたことと、ラッセルに対して大きく後れを取っていたエイトキンが同等以上の速さを見せてきたこと。プレマ、カーリン、ダムスの速さは変わらないが、タイヤマネージメントではアルボンとカーリン勢が秀でていたこと。そして苦戦が続いてきた福住には光明が見えてきたことも分かった。おおむねエンジンのパワー差は均一化が進んだと判断して良さそうだ。

 

 次のスパ・フランコルシャンではストレートが長くエンジンパワーの影響が大きいだけに、これはポジティブなことだ。あとは各チームのセッティングを煮詰めるチーム力とタイヤマネージメント力が勝負の鍵になる。

 

(text by 米家 峰起 / photo by FIA F2 / data by F1LIFE)

 

 

 

 

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Comment

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  • コメント (2)
    • ManGok
    • 2018年 8月 03日

    F2に関しての、ここまで詳細な分析記事は日本ではここでしか読めませんね
    可夢偉選手の時代にも感じていましたが、時折見られるF2(GP2)の不可解なパフォーマンス差は、やはり政治的な力が介入しているのでしょうか
    今回のエンジンシャッフルによって、選手とチームの本来の実力が見られるようになることを期待しています

    • MINEOKI YONEYA
      • MINEOKI YONEYA
      • 2018年 8月 04日

      メルセデスAMGもフェラーリもルノーも専属の育成プログラム担当者がいますからね。フェラーリは去年までトロロッソのレースエンジニアをしていたマルコ・マタッサが今年からFDA担当として毎回来ています。その点、ホンダは完全に立ち後れているというか何もしていませんから、勝てるわけがありません。同じスタートラインに立ってすらいませんね……。ドライバーたちが可哀想です。

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