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【Rd.3 CHN】徹底分析①:フェラーリ&メルセデスAMG敗北の理由はSCのタイミングではなかった

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 中国GPは予選でフェラーリが速さを見せたが、決勝ではセーフティカーの影響を受けレッドブルが大逆転優勝。メルセデスAMGは良いところが無いまま終わったように見えた。中団グループでは予選ではハースとルノーがトップに立ったが、決勝ではルノーとマクラーレンが上位入賞を果たした。

 

 実際に誰が速かったのかが分かりづらいレース展開となったが、実際の各車のパフォーマンスがどうだったのか、レースペースと戦略を詳細に分析することであぶり出してみよう。

 

 中国GP決勝のラップタイムを表にすると、以下のようになる(横軸が周回数、縦軸がラップタイムで上に行くほど速い。参考までに2017年勝者ルイス・ハミルトンのタイム推移も併記している)。

 

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 31〜35周目にはトロロッソの同士討ちによるデブリ散乱でセーフティカーが導入されている。全体的にペースは右肩上がりになっておらず、タイヤのデグラデーションが小さくなかったことを物語っている。純粋なペースでは速かったフェラーリとメルセデスAMGが1ストップ作戦を採り硬めのコンパウンドでペースを抑えながら走ったため、予選では昨年のポールタイムより0.6秒ほど速くなっていたにもかかわらず決勝では昨年のハミルトンよりも全体ペースが遅いという現象も起きている。

 

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 優勝したダニエル・リカルド(紺色・太線)を基準に各マシンとのタイム差をグラフ化したのがこちら。レースの展開と各車の位置関係がグラフィカルに把握できる(横軸が周回数、縦軸がタイム差で下に行くほど遅れが大きくなる)。

 

 ただしリカルドはレース中盤までトップを走っておらず、純粋なペースでも2強チームとはやや差があったため、こちらのグラフでは各マシンの位置関係の推移はやや読みづらい。

 

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 そこで各ラップでのトップ走行車とのタイム差をグラフ化したのがこちら。中国GPのようなレース展開では、こちらのグラフの方がレースの全体像を把握するのには適していると言える。

 

 

SC導入時点で決まったメルセデスAMG&フェラーリの敗北

敗因は導入のタイミングではなく、1ストップ作戦

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 ソフトタイヤを履いた第1スティントでは、首位セバスチャン・フェッテル(赤色・太線)が2番手バルテリ・ボッタス(緑色・細線)と3位マックス・フェルスタッペン(紺色・細線)を引き離していったように見えたが、少なくともボッタスはタイヤを労るために2〜3秒のギャップを維持していただけだった。

 

 その先にあった狙いはアンダーカットで、メルセデスAMGは1度しかないピットストップが最大のキーポイントであることは分かっていた。そして18周目にルイス・ハミルトン(緑色・太線)、19周目とフェラーリより先にピットに飛び込み、見事にアンダーカットを果たした。

 

 逆にフェラーリは18周目にハミルトンがピットインしたのを見ていながらその前を走っていたキミ・ライコネン(赤色・細線)だけでなく首位フェッテルまですぐにピットインさせなかったのが不思議だ。

 

 メルセデスAMGによればボッタスのピットストップは1.83秒で、フェッテルはそれよりも0.7秒遅く、さらにピットレーン通過時間全体では0.9秒遅かった。加えてピットインした20周目にはタイヤのデグラデーションが進んでボッタスのインラップより0.4秒遅かった。逆にボッタスはアウトラップがハミルトンより1秒も速かった。

 

 ピットイン直前には3.5秒のギャップがあったにもかかわらず、わずか1周差でアンダーカットが成功したのはこうした積み重ねがあったからだ。

 

 ボッタスはその後のタイヤのデグラデーションも大きくはなく、問題なくミディアムで最後まで走り切った。逆にフェッテルはデグラデーションに苦しんでペースが落ちてしまった。つまりセーフティカー出動がなければボッタスは余裕を持って中国GPを制していたことになる。

 

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 レースコントロールからセーフティカー出動のサインが出されたのはボッタスがピット入口にあるSCライン1を10m過ぎたところだったといい、もしあと数秒早くセーフティカーが入っていればボッタスはピットに飛び込んで新品タイヤに交換することができていた。

 

 ただし、この状況になった際にメルセデスAMGがそれを選択したかどうかは微妙だ。というのも30周目の時点でボッタスの後方には2位フェッテル、3位フェルスタッペン、4位ハミルトン、5位リカルドがおり、彼らがピットインしなければ5位まで落ちていた可能性がある。レッドブル勢も閏トラソフトからミディアムに繋ぎ、最後まで走り切る戦略に出ていたからだ。

 

 そしてボッタスに残された新品タイヤはウルトラソフト1セットのみで、残り26周に対して実質的な選択肢は中古のソフトのみ。

 

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 メルセデスAMGは上海での追い抜きが難しいと考えており、これで前の4台を抜けるという自信は持っていなかった。ハミルトンがピットインするチャンスがあったにもかかわらずステイアウトを選んだのはそのためだ。つまりセーフティカーがもっと早く入っていたとしても、ボッタスもまた5位まで後退するリスクを選ぶよりも、12周古いだけのミディアムタイヤのまま首位でコース上に留まることを選んだはずだ。どのチームもリアルタイムで「セーフティカーウインドウ」を想定しており、今セーフティカーが導入されたらピットインするかどうかは常に計算して自動的に判断を弾きだしている。ハミルトンの動きを見れば、その答えが「ステイアウト」だったことは明らかだ。

 

 もちろん全車がピットインしてくれればボッタスはそのまま首位でコースに戻ることになったわけだが、先に手の内を見せなければならない首位ボッタスの動きを見て後続勢がステイアウトの判断をした可能性も充分にある。だからこそボッタスは不用意に動くことができなかったのだ。

 

 セーフティカーが入ったこと自体は不運でありそれによってボッタスが優勝を逃したことは紛れもない事実だが、セーフティカーがピット入口を過ぎた直後に導入されるというタイミングの悪さが勝敗を分けたわけではない。31周目というレース中盤にセーフティカーが入った時点で、後方に遮るもののなかったレッドブルには大きなアドバンテージが転がり込み、1ストップ作戦のボッタスは負けるべくして負けたのだ。

 

 それはフェラーリとしても同じことで、フェッテルもピットインできたとしても2位を捨ててまでタイヤ交換に踏み切ったかどうかは分からない。

 

 実際のところ、フェルスタッペンに無茶な追い越しをかけられていなければボッタスの後ろで3位表彰台を守り切ることも可能だったはずで、選手権をリードするフェッテルにとっては充分と言える結果だったのだから。

 

(text by 米家 峰起 / photo by MercedesAMG, Ferrari, Pirelli / data by F1LIFE)

 

 

 

 

 

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