【オーストリアGP】レッドブルリンクの縁石改修、徹底解説
オーストリアGPの舞台となるレッドブルリンクは、今季の開催に先立って全面的に再舗装されるとともに、縁石にも改良が加えられた。これは高速コースゆえにトラックリミットを超えてコース外を使用してタイムをゲインしないように工夫したもの。これによりドライビングにも変化が見られることになりそうだが、その詳細をチェックしていこう。
なお、新舗装は見た目に色が黒く、μも高そう。F1の前に開催されたDTMではラップタイムが前年比で2.5秒速くなり、グリップ感の向上は確認されているようです。こちらがピットレーン出口のところで確認できる新舗装と急舗装の比較。色の黒い方が新舗装です。
【ターン1】
強い上り坂を上がった先にあるターン1は、入口アウト側に高さ25mmのネガティブ縁石(進行方向に対して角度の緩い段差がある縁石のこと)が加わり、エイペックスには“アブダビ型”と呼ばれる高さ100mmのインカット防止縁石(黄色)が加わりました(ターン2のエイペックスにも追加)。
出口アウト側にはやはりハミ出し防止のために高さ50mmの“ソーセージ”(黄色)が設置されています。スパ・フランコルシャンのターン1と同じようにこれはターン1出口のランオフエリアの先まで続いており、ランオフエリアに飛び出したマシンは先まで合流できないようにしているわけです。
【ターン5】
インフィールドのターン5出口には、FIAがかねてから研究開発を進めてきて昨年メキシコのエルマノス・ロドリゲス・サーキットの改修の際にも採用された“3段式”の縁石を採用。
まず1段目に通常の高さ25mmのネガティブ縁石(赤白)があり、その外に高さ50mmの2段目縁石(赤色)、そしてその外側にコンクリート(緑色)がそれ以上に高く伸びているというもの。
マシンが飛び上がるのを防ぐために縁石は高くできなくなっていますが、こうすることで段階的に縁石を高くし、マシンは飛び上がらないがイン/アウトカットをしてタイムをゲインしづらいようなデザインとしているわけです。
そしてレッドブルリンクの場合は高速コーナーが続くゆえに、この3段目の緑色コンクリート部分にさらに高さ50mmのソーセージ(黄色)を追加。進行方向に対して横向きにいくつも設置し、ここまでハミ出せば大きくタイムロスするようにデザインしています。しかし踏んだ際にマシンが跳ね上がるのではないかという懸念の声があり、実際の走行後に調整が加えられる可能性はあるでしょう。
ターン5出口の場合、序盤の部分に計10個、そしてターン6の入口にかかる縁石最後の部分にも3つが設置されています。
この黄色のソーセージはボルト止めされています。
【ターン6〜7】
ターン6の出口からターン7のエイペックスにも同様に3段式縁石と黄色のソーセージ。基本的にはこの3段目の縁石まではみ出さないよう走行すべしということです。
ターン7の出口は黄色ソーセージのない3段式縁石です。
ランオフエリアの芝生は脚が長く、ハミ出すと大きくグリップを失うことになりそうです。雨の後にはしっかりと水を含んでおり、その点にも注意しなければならないでしょう。
【ターン8】
最もトリッキーだと思われるのがターン8。まず入口アウト側が改修され、ターン1と同様に高さ25mmのネガティブ縁石が設置され、アウト側に大きく振ってターンインすることはできなくなっています。
50mm手前の看板の位置からはピットエントリーの白線が始まり、ピットインするマシンはこの白線よりも内側からターン8にアプローチし、白線をカットしないようにターン8をクリアしなければなりません。
ターン8出口のランオフエリアはターマック(舗装)ですが、ここにも3段式縁石+黄色ソーセージという構成を導入。
ソーセージは僅かに斜めに角度を付けて設置されており、コーナーを走行しハミ出してくるマシンに対して限りなく垂直に近い角度で対峙するかたちになっています(ターン5も6も同様)。
【ターン9】
最終のターン9にもエイペックス内側のコンクリートの網状になった箇所には、高さ100mmの“アブダビ型”のインカット防止縁石が設置されています。カットすればマシンが跳ねて大きくタイムロスするため、ここには触らないように走行しなければなりません。
ターン9の出口アウト側も3段式縁石とターマックのランオフエリア。ただしここは黄色ソーセージは設置されていません。
(text and photo by 米家 峰起)
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