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【ロシアGP】ロータス小松礼雄「ウチのスタート、ものすごく悪いんです」
苦戦が続いているロータスだが、どんな悩みを抱えているのか、どんな対処法を講じているのか。ロマン・グロージャンとコンビを組む小松礼雄エンジニアに、ここ数戦の状況を聞いた。スタートが得意だったはずのロータスが発進加速に苦労しているのが、今年の不調を象徴することなのだという。
ーー今回もフリー走行でロマン・グロージャンが無線で騒いでましたね。「マシンが問題だ」、小松さんが『オーバーなの? アンダーなの?』、「オーバーだ」、『じゃあ直すから入ってこい』、「いや、もう1周走る」、『いったいどうしたいんだ!?』って、漫才みたいでしたよ(苦笑)。
「いや、ロマンが無線でワーワー言っていたのは、タイヤがウォームアップしていなくてクルマの挙動が思っていたのと違ったから興奮していただけなんです。タイヤがウォームアップしてからはきちんと機能していたから自分の勘違いだって分かって、後でピットに帰ってきてから謝っていましたよ(苦笑)。だって、どのチームも7タイムドラップ(計測周回)してもまだ温まらないくらいでしょ? 今回はタイヤが硬すぎて大変ですよ」
ーーここロシアではパワーユニットの差が出ていますか?
「いや、そうとも言えないですね。パワーユニットで(メルセデスAMGに対して)1秒、あとの2秒は車体でしょ(苦笑)。現状で空力的に最も優れているのはレッドブルだと思っています。その彼らがメルセデスAMGに対して苦戦しているのはパワーユニットの差です。でも僕らはクルマが悪すぎるから」
ーー今年のクルマが苦しい理由は分かってきているんですか? 鈴鹿のFP-1ではフロントタイヤの後方に気流センサーを付けて何やら測定をしていましたよね。
「あれは、今年の問題が大きすぎるんでやってるんです。このクルマがどういう特性だからダメなのかっていうのは分かってるけど、それをどうやって直せば良いのかっていうメカニズムがまだつかめていない。それを測るためにああいうのを付けて走ったんです。あのフロントウイングはシンガポールから使っていて、一応ウチの中ではベストな状態なんですけど、それでもまだまだ悪いところはいっぱいあるから、それを理解するためにいろいろやったんです。インストレーションラップでいろいろやってたら、キミ(・ライコネン)にクラッシュされかかりましたけどね(苦笑)」
ーーえ、そんなことがあったんですか!?
「いろんなステアリングアングルをつけた状態で(気流を)測定するために、いろんなコーナーをコンスタントスピード(一定速度走行)で曲がっていたから。150km/hとかでセクター1のコーナーとかで走ってましたからね」
ーー普通はコンスタントスピードテストは直線でやるものだと思っていました。
「それはリファレンスを取るためのダウンフォースバランスチェックのための測定ですね。それは200km/hとかでやるんですよ。でも本当にダウンフォースが欲しいのはコーナリング中ですからね。性能追求のための測定はコーナーでやらないと。そういう意味では鈴鹿はいろんなコーナーがあって最適だったわけです。クルマの良いところ悪いところがすごく良く出るサーキットだから、問題点を突きつけてもらうという意味ではすごく良かったですけどね。まだまだ先は長いですね」
ーーこのクルマの問題点は?
「なんというか、プレディクタブルじゃないんです(挙動の予想がつきにくい)。なぜかというと、リアのダウンフォースがないんです。だから滑ってオーバーヒートしてタレてしまうし、ソチのようなこういうストップ&ゴーのサーキットではトラクションがなくて苦しいし低速のミッドコーナーのグリップも全くないし、鈴鹿のような空力で曲がっていくようなサーキットではリアが不安定なオーバーステアになって苦しい。特に鈴鹿なんて、コーナーごとにどのタイヤが限界になるかというのが違ってくるから、すごく難しいんです。だから実際にすごく苦労しましたよね。ドライバーも大変だと思いますよ。そんな中でロマンはよく我慢して走ってくれていると思います」
ーーリアに問題があるんですか。
「いっつも後ろの方にいるからみんな見てないでしょうけど(苦笑)、今年のウチのクルマのスタートっていっつも悪いんですよ。去年までは良かったのに。なぜ悪いかっていうと、リアのグリップがないからなんです。スタートだけっていうのは、ある意味一番簡単な状況じゃないですか? ゼロからまっすぐ荷重をかけて進むだけですから。それでもダメなんだから、そこに横Gがかかるような状況なら、なおさらダメなわけです。スタートの悪さっていうのは、今年のウチの悪いところを象徴する現象なんですよ」
ーー来年はメルセデスAMGのパワーユニットを搭載するという発表がありましたけど、チーム内では何か説明は?
「そうらしいですね。いや、説明は特にないですね」
ーーメルセデスAMGの代金と引き替えにスージー・ウォルフが乗るなんてことになったら、パストール・マルドナドはもちろん残留でしょうから、小松さんがスージーと組むことになりますよ(笑)
「そしたら僕は他のチームに行きます(苦笑)。でもまぁ、シルバーストンのテストでもホッケンハイムのFP-1でも、結構ちゃんと走ってましたよね。チームメイトとそんなに差がない走りをしていたし、ウチよりも速かった(苦笑)。ロマンに『オマエ、オンナより遅いぞ』って言ったのを覚えてますもん(笑)」
(text by 米家 峰起 / photo by Lotus)
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